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{言語}◯ 近松門左衛門(杉森氏・長門萩の人なり)の文。
代々甲冑の家に生れながら、武林を離れ、三槐九卿(筆者注解・三槐九卿とは、近衛家 二条家 鷹司家などの「三摂家」と、三条家、西園寺家、久我家、徳大寺家、花山院家、大炊御門家、菊亭家 広幡家、醍醐家などの「九清華家」をさしている。毛利家は、家康の命令により 大膳太夫に任命されて これら三摂家と九清華家の公卿たちを賄う台所役につけられていた。)につかへ、咫尺し奉りて、寸爵なく、市井に漂ひて商売しらず、隠に隠にてあらず、賢に似て賢ならず、物識に似て、何もしらず。世のまがひもの。からの大和の教あるみちみち、伎能雑芸滑稽の類まで、知らぬ 事なげに、口にまかせ筆に走らせ、一生囀り暮らし、今はの際にいふべく思ふべき真の一大事は、一言半言もなき倒惑。心に心の恥をおほひて、七十あまりの光陰、思へばおぼつかなき我世経畢んぬ。もし辞世はと問ふ人あらば、それぞ辞世さるほどに扨もその後に残る桜の花し匂はば
享保九年中冬上旬
入寂名阿耨院穆矣日一具足居士
不俣終焉期像自記春秋七十二歳□□
残れとは思ふもおろか埋火の消ぬ間あだなる朽木書して
先の年、浪花ありて、銅吹屋熊野屋にて見しことありしが、これと同文なりや。近ごろ 浪花の梅園主人のために、近松の碑文を書きし事ありしが、近松は長門萩の生れにて、兄は名誉の医師なり。門左衛門 近松寺といふに遊学して、其の寺の僧、罪有りて寺門の側にて、刑せられしを見て、自ら戒めのために近松門左衛門と、称せしとぞ。ある時兄の医師、近松がよしなき浄瑠璃本を作ることを戒めし時、足下には、和語の薬名の書などをつくりて一文一劃の誤りあらば、人の性命にかかる大事のことなり。われらが作る所は、狂言綺語にして、人の害にならずと 言ひしかば、兄もその理に服し、さあらば中直りのために、伴いて大和廻りせんとて、連れたちてめぐり、世間に伝ふる寺子供の手本の、龍田詣でといふものを書きし、と盧橘菴の物語なり。近松の碑文には、その事はもらせしなり。
{補}近松の法名。穆矣旦具足居士とする者あり、その法名あやまれり。摂津大阪谷町法妙寺中に、平安堂の墓あり、おのれ其墓碑の石摺りにしたるを蔵す。それにも元旦を日一の二字につくれり。思うに近松は法華宗なれば、さもあるべし。且操年代記に十一月二十二日とするも誤れり。墓碑の裏欠けてわずかに残る所に如此あり。
近松戯文評(膸農子著)
◯「曽根崎心中」徳兵衛、おはつ
上 巻、徳兵衛縁の下に忍び居、おはつ足にて喉を摩づる所は妙々、可断腸。
下 巻、此世のなごり夜も名ごり。死にに行く身をたとふれば、ぁだしケ原の道の霜、一足づつに消えて行く。夢のゆめこそあはれなれ。あれ数えてか、暁の七つのときが六つなりて、のこるひとつがこんじょうの、かねのひびきの聞きをさめ。寂滅為楽とひびく也。
徂来先生言、近松が妙処、此中にあり。外はこれにて推しはかるべしと、宇佐美恵助(名は恵、字は子迪)の話也。
摩訶十夜にいう。
曽根崎心中の道行の中に、何々として何々と死に行く身の道の霜、一足ごとに消えてゆく、というところまで作りしが、言葉つきて心足らず、ぃかにいかにと案じほけたる。其頃、伊勢の涼菟壤に来合はれけるを悦び、いかがして取り続けんや、御助言し給へと投げかけたり、菟夐聞きながら、外の咄して酒飲み、物言ひて笑い遊ぶ。門左衛門ひたすらにすすめて頼めるにぞ、菟何やかや雑談しながら、夢のゆめこそはかなけれとなりともやり給へと云ひしに、近松おおいに悦び、ゃがて作り入れしとなり、まことに詞情の尽きたらんに、いと佳く転じたる文体、すらすらとして行跡のいかようにも取りつけやすき、元彼決前生後の文法。涼菟は奇異の作者。
明和二乙酉年八月板
右は古素堂五十周忌追善之俳書、右小石川紅束自書
◯ 躯山姥 (五百番之内全編)頼光の逡巡引退避を以て文をなす。
第一段。惜しむらくは敵を討つこと早し。
第二段。姫の奥にはいるところ、散しの妙を得たり。不如此則山姥となることあたはず 第三段。美女御前以怯割愛。読髷中書而始識、其志。一哀深於一哀。
第四段。山姥必ず奥を見まいぞといふ。是安達原の怪胎也。
第五段。無味
◯「百合若大臣野守鏡」後世義太夫本の名に似たり。
第一段。第二段。さして評すべき事なし。
第三段 有馬湯処、此老本色。子窺父刀使人感泣。別符殆死於浴室。忽如脱兎奇々怪々。第四段、島中事妙々。鷹化為女妙一層。母子の情態、宛然如嗜。俊寛島物語及道満。大内鑑子別等、不能出於此範囲中、
第五段、偽盲女余波可笑。
◯「淀鯉出世滝徳」(小言そんそんたる者)
上 巻 名 言
ここぞうき世のだての大木戸、あけぬは銀のとがしの関、それつらつらおもんみれば
狂 文
大じん客衆の秋の月は、小判の雲にひかり、小伝よびましや長へんじ。おどろかすべきよはもなし。
滑 稽
新町橋のはしのうえ、橋弁慶が長刀のさや落年樽ごとくにて、うろうろとして立たりしが。
下 巻 妓東殺客藤五郎之条下
「ヤアこりゃ、なんで殺さう刃物がない。帯をといてしめ殺そうか。いやゆるりとする間はあるまい、煙草でふすべ殺そうか。酔うてさきへ此方が死なう。
評 伝
痴態 妙々
以上、
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