<The meaning of ・・・>


 とある日の出来事…
 
 リノアはバラムガーデン内にある図書室に向かっていた。
 
 (ゼルが言ってたププルンシリーズ、もう返却されてるかな?)
 
 足取りも軽く、入り口を通過した。


  「ププルンってのは妖精なんだけどよ、そいつが…」
 
 図書室には不釣り合いなほど大きな声が響いている。
 カウンターに立っているのは三つ編みをした少女。カウンター越しには金髪で顔に特徴のあるイレズミをした男子生徒…まぎれもないゼルの姿があった。
 
 (今日はやけに賑やかだと思ったら…ゼルの声だったんだ!
  う〜ん…楽しそうにお話ししてるの、ジャマするの悪いよね…)
 
 しかたなく、リノアは空いている席を探す。
 2、3歩ほど歩いたところで、見覚えのある後ろ姿が目に入った。途端に口元がほころぶ。
 足早に近づいていき、後ろからそっと声をかけた。
 
  「あの〜、相席いいですか?」
 
  「…どうぞ」
 
 机に広げた書籍から目を離さず、その男はぶっきらぼうに答えた。
 よほど集中しているのだろうか、声の主が誰なのか気づく様子はない。
 リノアは彼の横に回り、のぞき込んで言った。
 
  「おハロー、スコール!」


 その独特な挨拶に、彼はゆっくりと顔を上げる。
 
  「リノア…あんた何やってるんだ?」
 
  「あのね、ププルンシリーズを借りに来たんだけど…図書委員さんが
   何だか取り込み中みたいなの。ゼルと仲良くお話ししてるみたい」
 
  「やけにうるさいと思ったら…ゼルだったのか…」
 
 そう言って、スコールは顔をしかめた。
 
  「ほら、また眉間にシワ寄せてる!シワがとれなくなっちゃうよ?
   …ね、スコールは何やってるの?SeeDのお仕事?」
 
  「あぁ…書類を読むのに、辞書を引いてたんだ」
  「辞書?わたし、本はよく読むけど、辞書は読んだことないなぁ」
 
 (読むとか読まないとか…そういう問題じゃないだろ?辞書っていうのは…
  俺だって好きで読んでるわけじゃない…)
 
  「リノア…読んでおもしろい物じゃないぞ?」
 
 と、首を少し傾けながら、スコールは言った。
 
  「そうなの?…ふ〜ん…ちょっと見せて!」
 
 そう言うと、リノアはぶ厚い辞書を半ば強奪気味に手に取り、ページをめくる。
 
  「ねぇ!スゴイね、これ!…あ、『スコール』ってどんな意味なのかな?」
 
 (なんで俺の名前の意味なんか調べるんだ…)
 
 嬉しそうにページをめくっているリノアを見つめるスコールは、少し呆れ顔だ。
 
  「えっと…『squall』…『急激に起こる雷雨を伴う強風』だって!
   ふふっ…いきなり怒り出すスコールの性格とそっくり!」
 
 リノアの言葉に、スコールはふてくされたように顔をしかめる。
 
  「…悪かったな」
  「…悪かったな」
 
 2人の声が重なった。


  「じゃぁ、レオンハートは…」
 
  「レオンは『Lion』、ハートは『Heart』だ。スペルは違うが…
   獅子のように誇り高い心を持てるように…」
 
 スコールが即答した。
 
  「そっか。スコールのモットーだもんね!
   …あ、でも、『Heart』って色んな意味があるんだね」
 
 またページをめくりながらリノアはそう言った。
 
  「ああ。俺の『エンドオブハート』の『Heart』は『心臓』とか『急所』という意味だ。
   簡単に言うと、『息の根を止める』…ってとこだろうな。
   そう言えば、あんたも『Heartilly』だろ?『Heart』が入ってる」
 
 リノアは急に赤らめた顔を伏せ、手を後ろに組んで、地面をつま先でたたく。
 
  「リノア、どうしたんだ?」
 
  「スコールとハートつながり…ちょっとうれしいぞ〜」
 
  「何だよ、それ。」
 
  「だって、『Heart』は『心』って意味もあるでしょ?スコールと心がつながってる
   なんて、なんか嬉しいんだもん!」
 
 と、リノアは上目遣いにスコールを見つめ、満面の笑みを浮かべる。
 狼狽したスコールは、急に話をそらした。
 
  「…そう言えば、あんたの父親はフューリー・カーウェイ大佐だろ?
   なんで、あんたはハーティリーを名乗ってるんだ?」
 
 その名前を聞いた途端、リノアの表情が曇る。
 少し間を置いた後、彼女はゆっくりと喋り始めた。 


  「私は…アイツのことキライなの。だからっていうのもあるんだけど…。
   私はジュリア・ハーティリーの子供でもあるんだもん。私の中には
   ちゃんとお母さんの『心』もあるの。だから…」
 
 (まずいことを聞いたかな…)
 
 スコールは立ち上がって、優しく声をかけた。
 
  「…変なことを聞いて悪かった。少しスペルが違うが…『Heartily』って
   言葉には『元気がいい』…とか『誠実』っていう意味があるんだ。
   …その…リノアにぴったりの言葉だ…」
 
 彼にしては珍しく、素直な言葉が漏れる。
 
  「謝らなくてもいいよ。ありがとう、スコール!」
 
 そう言って、リノアは微笑んだ。
 
 (この笑顔にいつも癒されてるんだよな…)
 
 と、スコールは思ったが、まさかそんなことを口に出せるはずがない。 


  「名前にも色んな意味があるんだね…あ、『ゼル』とかは?」
 
  「…あいつの名前の由来はたぶん『zeal』だ」
 
  「え〜と…『熱心』『熱中』だって!ぴったりだね!じゃぁ、今度は…」
 
 楽しそうにページをめくるリノアを見て、スコールもほっとした様子で見守る。
 
  「ね、『フューリー・カーウェイ』って、『fury car-way』にすると、『狂暴道路』かな?」
 
   (狂暴道路か…)
 
 思わず吹き出し、声を殺して笑っているスコールを見つめながら、リノアはさらに言った。
 
 
  「ねぇ、スコール。やっぱり笑ってる顔が一番いいよ。楽しそうにしてるスコール見ると、
   わたしも楽しくなるの。だから、もうあんまり怒った顔とか…しないで…ね?」
 
   (そんな事言ったって…色々あるだろ?俺だって怒りたい時くらいは…
    でもイヤだなんて言ったら、あんたはまた…)
 
  「どうしたの?」
 
  「…了解」
 
 途方に暮れた様子でスコールは答えた。 


  「わかればよろしい♪他には…あ!そうだ!」
 
 リノアはスコールに背を向け、手を忙しそうに動かす。
 
  「…あった!」
 
 そう叫んで、スコールの方に振り返るリノア。
 本人は隠しているつもりでも、その表情には照れが見え見えだ。
 
 (今度は何だ?) 
 
  「問題です!『ハグハグ』はどういう意味でしょう?」
 
  「…は?」
 
 あっけに取られたスコールだったが、思考回路が断たれたようには見えない。
 
  「………」
 
 黙ってうつむき加減になり、沈黙が辺りを包む。
 やたらと響きわたっているのは、まだププルンについて語り続けているゼルの声だけだ。 


 しばらくして、2人の沈黙の壁を破ったのはリノアだった。
 
  「ブ〜!時間切れで〜す!『ハグハグ』はね…『抱きしめる』って意味なんだよ!」
 
 と、無造作に辞書を机に投げ出し、リノアはスコールに飛びついて、顔を彼の胸に埋めた。 
 
 
 わずかな沈黙の後、スコールが恥ずかしそうに口を開く。
 
  「…リノア…それはハグハグじゃないぞ。」 
 
  「え?」
 
 リノアは驚いてスコールを見上げる。
 
  「…『hug』が2回だから…これが本当の…ハグハグだ。」
 
 そう言うと、少し赤面しているスコールは、リノアの後ろに腕を回し、力を込める。
 その後、お互いの腕の力をゆるめ、リノアは少しつま先立ちになる。
 窓から射し込むやわらかな光の下、2人の唇が重なるまで、そう時間はかからなかった…


<Fin>


  <あとがき>(…という名のお詫びの文章)
 
  つ、ついに書いてしまいました…初☆スコリノ小説!
  っていうか小説じゃないですよね、これ…(汗)
  私が辞書引いてる時にふと思いついたんで書いたんですが…
  かなり強引な展開になってしまいました。(勝手な解釈ばっかだし)
  これを読んだスコリノファンの方には撲殺されそうな駄作!
  スコリノファンの方、本当にすみません…<(_ _)>
  それでは、私は地面に穴を掘って隠れますので!d(^^)
  KEIの特殊技(?)R2+L2同時押しっ!(核爆)




☆★☆
ふふふふ・・・・これぞ純粋甘甘スコリノ小説〜♪図書室で仲良く一つの辞書を眺めながらお互いの名前の由来を語り合う2人〜☆思わず読みながらPCの前でにやけてしまいました(^▽^)そして、最後は図書室でそのままハグハグ〜☆図書室だから周りにギャラリーもいたに違いないけどそんなの気にしない・・・・いや〜いわゆる恋は盲目、この2人はこうでないと!!そうそう、余談ですけどリノアパパの名前を和訳すると「凶暴道路」には爆笑でしたよ〜、いや〜この訳は例えあのスコールでも笑いたくもなりますよね〜。最後のなっちゃいましたけど、KEIさん、素晴らしい小説ありがとうございました〜m(_ _)m