また、いつかへ
 
 
それは、13年前の遠い記憶。
「アービン、あたし、引き取られる人決まったって!」
「えぇっ?!セフィ、行っちゃうの?」
「・・・うん、ゴメンね、アービン・・・」
「イヤだよ・・・そんなの、イヤだよ・・・。セフィ、いなくなったら寂しいよ・・・」
「・・・アービン・・・強くならなくちゃダメなんだよ〜?」
「セフィ・・・」
「ねっ約束!次、会うときには、今よりもっと強くなってよう!」
「強く・・・?」
「そう、2人で強くなるの」
「また、会える・・・?」
「会えるよ、必ず」
「約束だよ?」
「うんっ約束!」
「バイバイ、セフィ・・・」
「アービン、バイバイ!」
―ねぇセフィ。
次会えるのって・・・いつ?
僕、いつまでに強くなればいいの?
今、バイバイ言っちゃったら、
ほんとは、もう・・・会えなくならない?
(約束)
約束なんか・・・。
(2人で強くなるの)
君がいなくちゃ・・・。
(次会うときは)
「次」なんて、あるの?
(今より強くなってよう!)
強くなんて―・・・。
(バイバイ)
バイバイ、セフィ・・・。
約束、守るから。きっときっと、守るから―・・・。
(会えるよ、必ず)
・・・その言葉だけを、信じて―――・・・。
       ***
「ア〜ビン!!!こっちこっち〜!!!」
「ゴメン、セフィ!」
「も〜っ。おっそいよ〜?」
今日はエスタでのパーティー。一般の人は入場禁止であるが、バラムガーデンのSeeDは、特別招待されたのだった。もちろん、スコール達も。なのでセルフィとアーヴァインは一緒に行く約束をしたのだった。もちろん、リノアやキスティスの手伝いがあってこそ、だが。
横目でセルフィを見てみる。
今日の彼女の格好は、いつもにまして可愛らしくて。
黄色で、キラキラと輝くパーティドレス。いつものブーツとは違う、そこの高いミュール。
いつも通りの外巻きも、いつもより念入りにカールしてあって。
(可愛いなぁ、セフィ・・・・)
そんな気持ちをよそに、セルフィは自分を見つめてる、その視線に気づかずアーヴァインの
服の袖を引っ張った。
「さぁ〜、いっくよ〜!ごちそ、いっぱいやで!!」
       ***
「あ、セルフィとアーヴァイン!遅かったね〜」
「ん〜〜。ちょっとね〜。・・あれ?はんちょは〜?」
「あっちで、ラグナさんとお話してる」
「おんや〜?スコールはんちょが、ラグナ様と話すなんてめずらし〜!」
「エルオーネさんにね、言われてしぶしぶね・・・」
「あははっはんちょらし〜!!・・んぐっ。これ、おいしい〜!!」
ケーキを夢中で食べながら、喜んでいるセルフィを横目に、リノアがアーヴァインをこづいた。
「調子、どう?」
「・・・リノア〜、そのドレス似合うじゃないか〜!」
「話、そらさないでよっ。・・・でも、本当にそう思う?可愛い?」
「よく似合ってるよ〜。スコールの反応はどう〜?
「それがさ〜っぱり!彼女が綺麗にしてるのに、かわいいとか、よく似合うとか、言ってくれないのかなっ!スコールはっ!!」
たしかに、今日のリノアは水色のシンプルなデザインのドレス、いつもは下ろしている髪をアップにあげて、足はヒールの低い、ピンヒールとかなりおしゃれしている。ふつうにしてても十分に可愛い彼女だ。あのスコールが何とも思わないはずがない。
「きっと照れてるんだよ〜。あんまり綺麗で。」
だと良いけど、とつぶやきながら、リノアがぐぃっと顔を上げた。
「そのセリフ!まず、セルフィに言いなよね〜!!」
「はい・・・」
そっか・・・そうだよな〜。今のセルフィってけっこう鈍いし。
心の中で考えをめぐらせてみる。
まわりくどく言うより、素直に言った方が良いに違いない。
でも、言うタイミングが・・・。
「ね♪良いこと教えてあげちゃうよ?」
リノアがアーヴァインの顔をのぞきこみながらにこやかにほほえむ。
いや、にやりと笑ったいう形容の方が正しい。
「さっきね、ラグナさんに聞いたの。星がすっごい綺麗に見えるトコ。」
「うん・・・。それがどうかしたの〜?」
「わたし、後でスコールと2人で行こうと思ってたんだけどね〜。特別に、ゆずってあげちゃうよ♪」
「良いのかい?リノア〜!!」
「良いってコトよ☆ほら、ついでに告っちゃいなよ〜!」
と言いながら、リノアはクスクス笑った。
だって、いつもからかわれてるんだもん。たまにはこれくらいOKだよね?
「場所はね、ここのテラスをずぅっと行ってー、あっちのトコを・・・」
指で指しながら場所を説明すると、わかったと頷くアーヴァインの耳に一言、囁いた―・・。
           ***
「何なに〜?アービン、どこいくん〜?」
不満げに唇をとがらすセルフィに向かって、アーヴァインは声をかける。
「良いから良いから。セフィ、しっかりついてきてよ〜?」
リノアに言われたとおりの道を歩きながら、セルフィを誘導する。
そして、ぶつぶつ文句をいうセルフィに向かって、声をかけた。
「セフィ〜、もうすぐだよ〜!」
そこから歩くこと、15分。今までの細い道からいきなり明るいテラスについた。
「うっわ〜〜〜!!!キレイきれ〜い!!!」
手をあげてはしゃぐ彼女を見て、本当に良かったとアーヴァインは思った。
(ほんと、リノアに感謝だよ〜)
リノアたちが来るはずの場所をゆずってもらったのだから、ここは何かひとつでも、進展したいトコロなのだが、今のセルフィには何を言っても通じない気がした。
「ね〜、なんでこんなトコロ知ってるの〜?」
「いや・・・。ちょっとね。で、気に入ったかい〜?」
「もっちろん!ここ、すっごいキレイやんか〜!!」
「セフィ、ここはキレイなだけじゃないんだよ〜?
「どういうコト〜?」
「ほら、あっちの方向。」
「あっち・・・?あ・・・。」
セルフィが小さく、声を漏らした。
           *** 
「トラビア・・・」
「そうだよ〜!チラっとだけしか見えないけど・・・」
「ううん・・・これで・・・十分や・・・」
手を頬にあて、テラスの手すりに肘をつく。
「なんか・・・嬉しいなぁ・・・」
「よろこんでもらえて何よりだよ、セフィ〜!」
遠くの森の影にちらちら見える程度の灯り。
それでも、見て、喜んでくれるなら。
その灯りを一心に見ている彼女が可愛くて。でも、どこか儚げで―・・・。
   愛おしくて。
「セフィ・・・」
声をかけた、その瞬間、セルフィが声をあげた。
「あ〜!!!ねぇねぇ、こっちが、北だよね?ってことは・・・」
あわてたように反対方向の向きに走り出す。そして、
がっかりしているアーヴァインに向かって叫んだ。
「ねぇ!!イデアの家だよ〜!!」
「・・・本当だ・・」
「すごいすごい!なんか、これって運命的〜?」
にこにこ笑って、ほほえんで、はしゃぐ彼女。運命―・・・。
君は、あの約束を覚えているかい?
あの時の記憶が・・・頭の中によみがえってくる。
―「アービン、強くならないと、ダメなんだよ?」
 「セフィ・・・」
 「ね、約束。次会うときは今よりもっと強くなってよう!」
 「・・・強く?」
 「そう。2人で強くなるの」
 「また・・・会える?」
 「会えるよ、必ず。」
 「約束だよ?」
 「約束!」
 「バイバイ、セフィ」―――・・・。
セフィ・・・約束・・・。
僕らは、また会う約束をしてただろう?
・・・僕は・・・。
僕は君のために強くなろうと思ったんだ。
―だからガーデンに入った。
君を守るために。
対等以上に、なるために・・・。
―強く?
なれたよ。強くなったよ。
変わったんだ。僕は―・・・。
―でも、それはすべて君のため。
13年間の僕の気持ち。
13年前からの、僕の小さな、気持ち。
だから気づいて、僕の想いに。
僕は、13年前とは違う。生まれ変わったんだ、きっと―・・・。
―そう、すべては君のためで。
だから気づいて、振り向いて・・・。
ねぇ、気づいて?
―13年越しの初恋なんだよ・・・だから・・・さ・・・。
セフィ・・・。
「セフィ、覚えてる?」
「ん〜〜?何を〜?」
きっと君は覚えていない。昔のことを、みんな忘れてた君だから。
G・Fの副作用。
届かないかもしれない。振り向いてくれないかもしれない。
でも、それでも・・・。かまわない。
「小さい頃・・・さ。イデアの家で・・・した約束・・・。」
「え〜?そんなのあったっけ〜?」
・・・やっぱり・・・。
届かなくても良い。そうは思っていたけれど、こうもはっきり言われると
気落ちしてしまう。見るからに落ち込んでるアーヴァインを見て、セルフィが言った。
「あのさ〜・・・。本当に覚えてないんだ・・・。ごめんね?」
「いや・・・良いよ。G・Fのせいだろうし・・・」
「そんな・・・大事な約束だった・・・?」
悲しそうなセルフィの目。その言葉につい、
「そんなことないよ」
と言ってみたりしたけれど―・・・。
大事だったよ、僕にとっては。
その言葉、その約束のために13年間、頑張ってきたんだから・・・。
「あのさッ!」
重々しく、セルフィが口を開く。そして
「ごめんね、あたし・・・。その約束、覚えてないみたい・・・。
だから、ここで、新しい約束作らない?」
「えっ・・・?」
「うちと、アービンと2人で!ね?」
思いがけない言葉―。
君が、そう感じてくれてたのが嬉しくて・・・。
「セフィ、その約束・・・。僕が決めても、良いかい・・・?」
「ん〜?OKだよ〜!なになに〜??」
ずっと、言いたかった言葉。
「次、離れても・・・どんなに離れても・・」
あの頃のように・・・。
「必ず、会いに行くから・・・」
僕は―・・・。
「だから、その時まで、セフィは僕を忘れないでよ。」
君といれればなんだって。
それだけで僕は満たされるから。
「OK〜!じゃ、あたしからも一つ追加〜!」
輝いて見える、セフィの笑顔。
「今日見た、この星空。もう一回、一緒に見ようね!」
・・・君のためなら、なんだって―・・・。
「約束だよ、セフィ・・・」
「約束!」
―13年前と同じ星が、2人の頭上で光りを放った・・・。


END


☆★☆SHELLさんのあとがき☆★☆
今日和。前に個人でこっそり書いてたものをPCで書き直しました;;
え〜っと?え?駄文ですね。もう嫌だ・・・。
ってかアービン1人称すげぇ(笑)←もうヤケ。
よろしければ、読んでやってくださいね;;
今セルフィの方も描いてたりします(死)
スコリノ派なんですけどね・・・。なんかアーセル書きやすいです。
何ででしょう?
それでは、駄文と言い訳のみ(うわ!!)ですが失礼します〜〜〜。




Kallの感想
まずは、SHELLさん、素晴らしい作品をありがとうございました〜m(_ _)m
駄文じゃないですよ〜、いいカンジです〜^^読み終わったあと思わず、”その気持ち、わかる、わかるぞ〜><。頑張れアーヴァイン、負けるなアーヴァイン”と彼に応援のエールを送ってしましましたさ(爆)しかも、13年前の約束をずっと覚えていて守り続けるとは…まさしく、恋の力は偉大なりってところですね^^これなら、セルフィと交わした13年目の新しい約束、今度はきっと叶うはず!