≪永遠の空の下≫




花は、咲き続けるだろう。
彼らのもとに、その幸せを包んで。


春の色をした風が舞う丘の上。
一本の桜の大木の根元に、ひとり佇む影があった。
そこから見える景色は、穏やかな空の青と鮮やかな海の蒼、緑色の草の絨毯、薄桃色の花々、そして、彼 に幸せをもたらしているひとつの光景。
桜の木の根元に立つ青年---------スコールは、青藍色の双眸に限りなく優しい光をたたえて、丘の下の その光景を見つめていた。


スコールから少し離れた丘の下。
桜の木が並んで植えられて、それぞれの枝に花が咲き誇り、美しい風景を作っている。
そしてその桜の下に、彼にとっては桜よりも美しいものがある。
花見を楽しんでいる一団の人々。
リノアとセルフィが、アンジェロとじゃれあって遊んでいる。
キスティスとエルオーネは、イデアと笑いながら何か話をしている。
ゼルと雷神が奪い合うような勢いでパンを食べている。
サイファーとキロスが、酒の飲み比べをしている。
桜をスケッチしているウォードの手元を、風神が覗き込んでいる。
ラグナとアーヴァインが、カードゲームに興じている。
学園長とカーウェイ大佐が、酒を飲みながら何事か語り合っている。
時々、笑い声が弾けて、風がそれをスコールのところまで運んできた。


スコールは不思議な気持ちだった。
そんな光景が自分にもあるということに。
大切なものや守りたいものがある自分に。
それに違和感を感じなくなった自分に。
それを幸せだと思う自分に。
そしてその幸せが自分のもとにあるということに。B すべて一年前には想像もしなかったことだ。あの頃は、自分はひとりで生きていくんだと思っていた。
けれど、スコールのもとにあるそれは、他人との関わりを一切拒絶しながらも、実は彼が何より求めてい たものかもしれなかった。
彼の胸に、優しい春の陽が染みていくようだった。


「スコールー!」
スコールのそんな幸せの中から、彼の一番愛しい存在が愛犬と共に丘を駆け上がってきた。
スコールの前に立つと、息を整えながら笑う。
「何してるの?こんなところでひとりで。ほら、行こっ。」
スコールの腕を取って行こうとする。それに逆らわずに歩き出そうとして、スコールはふと頭上を見上げ
た。
一本の枝が、風もないのに揺れ、花の間から差し込む光が瞬いたように思えたのだ。
「・・・・・・・・・?」
だが、特に変わったところはない。
「スコール?どうしたの?」
スコールの視線を追って、リノアも頭上の枝を見上げた。
「・・・・・・いや、何でもない。」
今度こそスコールも歩き出した。リノアとアンジェロがその横を歩いて行く。
スコールは一度だけ振り返ったが、やはり何も見えなかった。


しかし、その枝の上。
本当はふたりの女性が腰掛けていた。
ひとりは、スコールによく似た青藍色の瞳の、髪の長い女性。
もうひとりは、完全に大人の顔立ちではあるが、リノアにそっくりな面差しの女性。
一度だけ振り向いたスコールの視線を受けて、二人は微笑を交し合った。
そしてそこからよく見える丘の下の光景に視線を向けた。
それは、彼女達ふたりにとっても、幸せな光景だった。




花は、咲き続けるだろう。
彼らのもとに、その幸せを包んで。
永遠の空の下---------。


END


<蛇足>
こんなものでよろしゅうございましょうか、Kallさま?ハラハラ。
これは、お祝い作品としてKallさまからリクエストを頂き書いたもののうちの一作です。
リクエストはお花見ネタで、ほのぼのした感じということだったのですが、微妙に違うかも(^^;
取り敢えずオールキャストのつもりで書いたんですが、これをオールキャストとは呼ばないでしょう。
雰囲気のある短文にしたかったのですが、なにぶん文章力が足りませんでした。
お花見ネタは実はもう一作あって、そちらはスコール×リノアです。
こんな駄作でよろしければ、もらってやってください、Kallさま。

イメージソングは、桜のお話ということで、福山雅治氏の「桜坂」です。




Kallの感想
君よずっと幸せに〜♪風にそっと歌うよ〜♪ってかぁ〜(←酔っ払いオヤヂ?)いいですね〜、平和そのものの風景。 この小説の構図でなんか一枚の絵になりそうじゃないっすか!!(誰か描いて…なんて^^;爆)花見をしている リノアたちをみて、戦いにあけくれて、孤独であり続けたころよりも、ありふれた毎日や穏やかに流れていく日々が どんなに大切かってことに改めて気付いたスコールと、そのスコールを含めて今という全てを見守っている ジュリアとレイン…
ARSLANさん、心温まる作品ありがとうございます〜m(_ _)m