平成23721

府中市市長 伊藤吉和 様

                       地域医療を守る会 会長 松井義武

                       〒729-3431 府中市上下町深江1061

 

府中市地域医療再生計画中期目標についての申入書

 

 平成2211月に府中市が公表した「府中市地域医療提供体制計画」に対して、地域医療を守る会は平成221211日に上下町でシンポジウムを開催し、府中北市民病院診療圏域住民の総意を採択決議し、「@府中北市民病院現状維持(常勤医師数6名以上、24時間365日一般救急入院、手術維持等)、A地域住民と十分な議論を尽くし合意が得られるまで計画延期、B府中北市民病院は自治体病院として経営はあくまで市の責任で直営、C府中北市民病院事業を市活性化の目玉に」すべきであると府中市に対して1216日に要望書、平成23127日には1万6785名の地域住民の署名とともに陳情書を提出したが今もって何の回答もない。地域医療再生協議会の地域住民無視の不公正な態度に対しても422日抗議書を提出しているが同様である。

しかし3月に府中市は上記のごとく再三にわたる地域住民の声を全く無視して最初の計画と基本的には何も変わっていない府中市地域医療再生計画を公表し、府中市議会で府中北市民病院独立行政法人化を議決した。さらに624日に中期目標案が発表されたが、仮称上下医療センターは病床数を64床に縮小され、医局を一つにして府中に集約するという縮小再編統合案であった。旧甲奴郡、神石郡中山間医療過疎地域人口1万5千人の診療圏域住民は、唯一の救急中核病院である府中北市民病院が不当に縮小されるため「命の格差」が発生することになり地域住民が安心して地域で生活できなくなることと、そのため早晩当該地域が衰退崩壊するセーフティーネットの格差を生む計画を府中市が決定したことに対して下記の申し入れを行う。

 

1.府中北市民病院を縮小せず、現状維持(常勤医師数6名以上、85床、24時間365日一般救急入院、手術、医療機器維持、市の直営自治体病院等)することで旧甲奴郡、神石郡中山間医療過疎地域にとって必要かつ十分な安全で質の高い急性期医療を確保すること。

 府中北市民病院は年間8万人以上の患者が利用し、平成22年度も1日平均外来患者数211人、1日平均入院患者数80人、年間救急車搬入160件以上、年間手術193件と急性期の需要が多い。「支える医療」は当該地域に支える医療の土台・基礎である急性期医療が担保されてないと、旧甲奴郡、神石郡には診療所も6施設しかない医療資源が極端に乏しい地域のため成り立たない。世羅中央病院も診療圏が広域で需要も多く、当該地域をカバーしきれないのが現状である。今まで通り市の直営として「命の格差」を発生させないこと。

2.仮称上下医療センターには従来通りの医局(常勤医師6名以上)を存続させること。

府中と上下は地域(診療圏域)が全く異なり往来に時間もかかり、医師の過重労働にもつながり医療の基本である安全で質の高い医療が出来なくなるため従来通りそれぞれの病院に医局が必要である。さらに、現在全国で問題となっている医師不足の原因である医師の都市部地域への偏在につながり問題がある。また、現在の医師の大半は大学から各病院に派遣されており、人事権は大学にあり府中市の思い通りにはならない。

 

3.仮称上下医療センターの病床数は85床(一般52、療養33)を維持すること。

府中北市民病院は85床で病床利用率は90%以上と患者が多く(平成22年度は94%)、64床にすると救急入院が出来なくなるため命の保証がなくなり、医療難民も続出する。手術も整形外科1医師で120件、外科1医師で71件と需要が多い。不採算地区病院の交付金が一部しか繰り入れられていないにもかかわらず平成21年度は1900万円の赤字で済んでおり、全額繰り出されていれば黒字経営である。今年度も昨年をやや下回る程度と予想されることからも縮小すると地域のニーズに全く合致せず需要を満たせないため、経営効率も悪化するので85床を維持すること。

 

4.公的医療の安定供給のために府中市が必要な財政措置を行うことを明記すること。

 府中北市民病院は救急医療のようにたとえ不採算であっても地域住民の命を守るために必要な医療の提供に努めてきたが、今後もこれまでと変わることなく、自治体病院としての役割を果たしていくためには、市が必要な財政的措置を行うことが不可欠である。「国基準の繰り出し」は府中北市民病院が不採算地区病院であるため特別交付金を含め、全額繰り出すことが必要である。

 

5.事業計画にかかわる委員は両地域にとって公平、公正な人物を選出すること。特に地元住民でそれぞれの地域医療に造詣の深い地元ベテラン医師を両地域から募集すること。

府中市地域医療再生計画の具体的事業計画作成、変更にかかわる委員は、地域医療再生協議会でみられた不公正な委員会にならないために、府中と上下両地域の診療圏域住民で都市部及び中山間過疎地域医療に精通した医師を評価委員として募集すること。また広島県、広島大学医学部、広島県医師会、府中地区医師会推薦の医師も委員とすること。

 

6.事業計画に対する地域住民のパブリックコメントを1カ月ぐらいの期間を設けて募集し計画に反映すること。

府中市地域医療再生計画は地域のニーズに合った地域住民にとって最良の計画でなければならないが、今まで公表されてきたものは、不透明、不公平、不明確、不公正なものである。その反省に立って今こそ府中市は府中市民の声を反映した真の地域住民のニーズに合った府中市地域医療再生計画をつくらなければならない。