平成25214

広島県知事

湯崎 英彦 様

 

府中北市民病院の機能回復・維持(常勤医師数6名以上、85床、一般救急入院、手術、市の直営、医療機器維持等)と府中市、広島県との協議を求める要望書

  

                     地域医療を守る会

                      会長 松井 義武

                      広島県府中市上下町深江940番地1

                       電話0847624575

広島県への要望趣旨

 

府中北市民病院は歴史的、地理的・文化的に旧甲奴郡、神石郡中山間医療過疎地域唯一の救急中核病院です。当該地域住民の命綱として長年医師不足・医療不足の中、先人達の汗と涙の必死の努力で引き継がれ発展して地域住民の命と健康を保証してきました。しかし平成16年に合併した府中市は自治体運営において赤字を計上する自治体病院を重荷と感じ、平成17年の「地方健全化法」も相まって府中北市民病院の赤字と医師不足をことさらに府中市民に喧伝し、平成19年に総務省が発表した公立病院改革ガイドラインに則り府中市地域医療再生計画を地域住民との協議と合意が全くないままに策定しました(資料-1、2)。その後府中市地域医療再生協議会が開催されましたが地域住民と議論しない「名ばかり協議会」に終始しました(資料-3)。そして絶対的多数の与党議員が占める府中市市議会で決議しそれを広島県が認可して平成244月から地方独立行政法人府中市病院機構として発足させました。

府中北市民病院は縮小され非公務員型の病院になり職員のモチベーションも低下して離職者も出現し黒字化が不可能となっています。地方独立行政法人化後黒字経営にならない場合は病院のさらなる縮小か、診療所化、民間移譲が待っています。しかしその場合平成2111月に公表された当計画のたたき台である府中地域医療提供体制計画の共同体構想と平成24年夏の地域医療コンソーシアム府中の中で社会医療法人陽正会寺岡記念病院が中心的役割を担う病院として位置付けられています(資料-4)。すなわち府中市地域医療再生計画の役割分担で民間の寺岡記念病院がもっとも高度な救急、専門的医療を担うことが決定していることからより日常的な診療、救急入院、手術なしと位置づけられている府中北市民病院が寺岡記念病院に民間移譲されるか指定管理の下におかれることが大いに予測できます。また神石高原町立病院は平成21年度に広島県立病院から寺岡記念病院の指定管理下の病院になっていますが、民間のため黒字経営を第一とし不採算部門は切り捨てざるを得ず、正看護師も大幅に減らされ代わりに準看護師を採用し、医師不足のため外科系の常勤医師が不在となり中山間医療不足地域のニーズに合致しない病院になっています。

しかし中山間医療不足地域は病気やけがになりやすくしかも急変しやすい高齢者の多い地域でさらに交通過疎・交通弱者地域、降雪地域でもあります(資料-5)。当該地域は広域で東京23区の面積に匹敵する診療圏域600平方キロメートルに中に診療所がわずか6施設しかなく、医師密度は0.028/Km²、人口1万人当たりの医師数8.3人の超医療不足地域です(資料-678)。30分で救急搬入できる身近な所に肺炎、腹痛、骨折、脳梗塞といった普通の病気や怪我で救急入院ができ一般的な手術が出来る中核病院、府中北市民病院が地域住民の命と健康を保証するために必須となります(資料-9)。府中北市民病院は国からの地方交付税と特別交付税が全額繰り入れられれば十分独立採算が出来ることが実証されている旧甲奴郡、神石郡中山間医療不足地域の唯一の救急中核病院で実績もあります。平成2111月に当計画が公表されてから当該地域住民は、幸福の原点である命と健康の保障がなくなり、地域が寂れやがては地域・故郷の崩壊につながる危険性が高いため、府中市と広島県に対し再三の改善に向けて協議のお願いをしてまいりましたが未だに実現されていません(資料-10)。そのため受忍限度を超えた地域住民は裁判までしなければならないほど窮地に追いやられています。

平成244月以降(実際は府中市が看護師募集を禁止したため平成2311月から40床に縮小されている)救急入院が出来ない、診てもらえない、早期退院勧告(従来平均3週間の入院が病床数不足のため15日に短縮)、一般的な外科手術が受けられない、遠方の病院への通院による肉体的・経済的な負担、縮小風評被害による患者離れ、職員過重労働、職員離職、病院収益減少等、重大な問題・人災が水面下で急速に発生進行しています(資料-11)。4月から11月中旬まで黒木クリニックを受診した患者の中から無作為に抽出した約360名に縮小されてからの弊害を聞き取り調査したところ、155名(43%)の人が縮小されてからの弊害を体験したり聞いたりしていました(資料-12)。実際府中北市民病院への救急車搬入件数は縮小前一般病床数52床の平成214月から平成2310月末までは月平均16.1件ありましが、40床に縮小された平成2311月からさらに35床に縮小された平成249月末までは11.8件と月平均4.3件も救急車受け入れが減少しています。4月以降府中北市民病院診療圏域の救急患者は世羅中央病院に搬送されることが多く縮小前の平成22年度は1年間で28名でありましたが、平成244月から9月末までの半年間に40名に急増しています。そのうち2名は心肺停止状態でした。また外来患者数は679名から1351名、入院延べ患者数も891名から1689名と倍増しています。市立三次中央病院でも入院延べ患者数が平成229月までの半年間と比べ平成24年度の同期間では474名も増加していました(資料-13)。これらのことから府中北市民病院が縮小されたため当該地域住民の急性期入院が出来ない状況下におかれている予想通りの実態と、医師の増員がない医師不足対策には無理があることが判明しました。平成2111月に府中市地域医療再生計画の骨子が発表されてから地域住民が予想していた命と健康の保証が破壊されるという危惧が現実のものとなったことが証明されました。すなわち当計画は府中北市民病院診療圏域の微妙なバランスの上に成り立っていた長年にわたる先人の汗と涙で築き上げてきた既存の急性期医療と地域包括ケア(「支える医療」)を破壊し、地域住民の命と健康の保証をなくす間違った地域医療再生計画であることが証明されたことになります。その根本的な原因は府中市の計画は「命の絶対平等・尊重、弱者救済、公共性、公益性、社会正義」、といった医療の基本理念に反し、地域包括医療の「地域」の定義そのものが間違っているからです。

中山間地域の医師不足は待ったなしの喫緊の課題であるので、一昨年から県、広島大学、県医師会に広島県下すべての地域中核病院の適切な常勤医師数を調査する旨要望しています。平成2412月広島県地域保健対策協議会、医療従事者対策専門委員会から医師の診療科・地域偏在の解消に向けた調査・分析及び今後の取り組みの方向性の検討結果が広島医学6512号に発表されました。しかしその調査では地方自治体を基準として調査・分析がしてあり、歴史的・地理的な診療圏域の中核病院を基準とした調査でないため地域医療の実情には必ずしもそぐわない結果になっています。早急に各診療圏域ごとの地域中核病院を基準とした同様な調査・分析を要望します。併せてその調査結果に基づく地域の医療の実情に合った広島県二次医療圏の見直しを早急にお願いします。

府中北市民病院の診療圏は、府中市、三次市(甲奴町、吉舎安田)、神石高原町、庄原市(総領町)、世羅町の5つの自治体にまたがり、府中市だけでの地域医療再生計画では不十分です。中立的立場にある広島県が当該医療圏の調査、調整、指導をし、広域で他の自治体を交えた地域住民、医療機関、行政の協議を開催して適切な地域医療再生計画になることを再度強く要望します。文章での回答を要望します。

資料-1.

資料―2.

資料―3.
 府中市地域医療再生協議会住民部会上下地区グループワーキンググループ総意による府中伊藤吉和市長への抗議書(平成23年4月22日)

資料―4.

資料―5.

資料―6.

資料―7.

資料―8.

資料―9.

資料―10.

資料―11.

資料―12.

資料―13.


平成25214

広島県への要望

 

.地域医療を守る会第3回シンポジウム決議文

平成24年12月8日府中市上下町民会館にて開催された地域医療を守る会第3回シンポジウムにて230名の参加者が住民総意で採択決議した事項を決議として広島県に提出する。広島県は府中市が府中市地域医療再生計画と地方独立行政法人府中市病院機構中期目標、中期計画に下記の決議内容(民意)を反映するように調整、指導、改善させなければならない。

 

                   決議

 

1.       府中市が平成233月に策定した府中市地域医療再生計画に基づく中期目標により、府中北市民病院は平成244月広島県が認可した地方独立行政法人府中市病院機構として統合・縮小されたため、一般病床数不足、外科常勤医師不在となり、救急入院が出来ない、診てもらえない、一般外科手術を遠方の病院で受けなければならない、早期退院勧告、患者離れ、病院収益減少等、重大な弊害が多数発生している。この事実から当計画は旧甲奴郡、神石郡中山間医療過疎地域住民の「命と健康の保障を破壊する」間違った地域医療再生計画であることが証明されたことになる。早急に下記の如く改善されなければならない。

2.       府中北市民病院は旧甲奴郡、神石郡中山間医療過疎地域唯一の救急中核病院であり人的過疎、交通過疎地域でもあるので、当該地域で地域住民が一生涯安心して健康に暮らせるために一般救急入院、手術が縮小前と同様に維持されるよう、常勤医師数6名以上、病床数85床、市の直営、医療機器設備等が維持されなければならない。

3.       府中市地域医療再生計画と地方独立行政法人府中市病院機構中期目標は当初より地域住民との協議が全くなされておらず、地域のニーズに合致していないことから早急に旧府中市と上下町それぞれの地域住民、行政、医療関係者が一堂に会してそれぞれの地域の実情に合った最善の府中市地域医療再生計画、中期目標、中期計画になるよう議論を尽くし、合意のもとに当計画は改善されなければならない。

4.       府中市地域医療再生計画、地方独立行政法人府中市病院機構に関する正しい情報を府中市全体で共有するため、現在府中市が禁止している当該地域で行っている住民自治獲得のための講演学習会の開催を旧府中市でも許可しなければならない。

5.       府中北市民病院は中山間医療過疎地域唯一の救急中核病院で、広域で急性期疾患の需要も多く、競合する他の病院もなく健全経営が可能であることから、府中市活性化の目玉として位置づけ府中市地域医療再生計画、地方独立行政法人府中市病院機構の基幹病院とすべきである。

6.       全国の中山間医療過疎地域を医療、地域崩壊から守り、日本の基盤である故郷を守るためには、中山間医療過疎地域唯一の中核病院は地域の実情に応じた十分な機能を維持しなければならない。

 

 我々は決議された上記の住民総意が実行されて府中市と地域住民の協議が実現し、間違っている府中市地域医療再生計画と地方独立行政法人府中市病院機構中期目標が改善され、府中北市民病院の機能が回復・維持し、当該地域住民が安心して暮らせる幸福の原点である命と健康が保証される医療体制が獲得・維持されて真の住民自治が実現するまでねばり強く住民運動を継続展開する。

 

                         以上、決議する。

平成24年12月8日

                  地域医療を守る会第3回シンポジウム参加賛同者 

 

.下記の事項も広島県に要望いたします。

 

1.府中市地域医療再生計画は当初より地域住民との協議が全くなされておらず、地域のニーズに合致していないことから早急に旧府中市、上下町それぞれの地域住民と、行政、医療関係者が一堂に会して議論を尽くして、それぞれの地域(診療圏)の実情に合った最善の府中市地域医療再生計画になるための協議が出来るよう県が調整、指導し、合意が得られる計画に改善されることを要望します。

2.府中北市民病院の診療圏は、府中市、三次市(甲奴町、吉舎安田)、神石高原町、庄原市(総領町)、世羅町の5つの自治体にまたがり、府中市だけでの地域医療再生計画では不十分である。中立的立場にある広島県が当該医療圏の調査、調整、指導をし、広域で他の自治体を交えた地域住民、医療機関、行政の協議を開催して適切な地域医療再生計画になることを要望します。

3.中山間地域の医師不足は待ったなしの喫緊の課題であるので、一昨年から県、広島大学、県医師会に広島県下すべての地域中核病院の適切な常勤医師数を調査する旨要望している。平成2412月広島県地域保健対策協議会、医療従事者対策専門委員会から医師の診療科・地域偏在の解消に向けた調査・分析及び今後の取り組みの方向性の検討結果が広島医学6512号に発表された。しかしその調査では地方自治体を基準として調査・分析してあり、歴史的な地域の中核病院を基準とした調査でないため地域医療の実情には必ずしもそぐわない結果になっている。早急に地域中核病院を基準とした同様な調査・分析を要望します。

4.併せてその調査結果に基づく地域の医療の実情にあった広島県二次医療圏の見直しを早急に要望します。

5.平成42年まで日本の高齢者人口は増加し、高齢になるほど入院受療率は増加する。府中市の人口動態推計と府中北市民病院入院患者統計から平成32年度までの一般病床1日平均利用数は平成22年度の45.2床から44.2床と1床しか減少しないことと、85床は経営効率も良いことから府中北市民病院は85床、常勤医師6名以上、一般救急入院、手術、市の直営等の地域のニーズに合った機能の回復・維持を要望します。県は府中市の縮小計画をなぜ容認したのか医学的根拠を回答して下さい。

6.府中北市民病院は70床に縮小され一般病床は35床になった。縮小前の一般病床1日平均利用数は45.2床であったことから10.2床不足することになり、年間169名、10年間で約1600名もの急性期患者が入院が出来ないので縮小前の85床を要望します。70床を県が容認する医学的根拠を回答して下さい。

7.中山間地域は介護サービス資源も都市部と比較して少ない傾向にあるので安心して在宅医療が出来るために、身近な府中北市民病院に高齢者の需要が多い内科、外科、整形外科、リハビリテーション、療養病床が地域のニーズに合致した病院機能の維持を要望します。

8.旧甲奴郡、神石郡は医療不足であるので府中北市民病院の機能が縮小されると、開業医も安心して仕事が出来なくなり医院をやめる可能性があるので機能回復維持を要望します。縮小され6施設しか診療所がない超医療過疎地域にとってさらに深刻な事態が発生することに関する県の考えを回答して下さい。

9.中山間医療過疎地域は不採算地域でしかも人的過疎地域でもあることから医師、看護師など医療従事者が働きやすい環境作りが必須となることと、職員確保のためにも自治体病院として地方交付税を繰り入れ、職員の身分保障と病院の経営を安定化させることが可能な市の直営(公務員型)を要望します。

10.     広島県知事が府中市に対し、平成2439日付でだした地方独立行政法人府中市病院機構設立認可処分の取り消しを要望します。

11.     府中北市民病院は中山間医療過疎地域唯一の救急中核病院で、広域で急性期疾患の需要も多く、競合する他の病院がなく平成21年度、22年度ともに不採算地域指定病院特別交付税が全額繰り入れられていれば黒字決算で健全経営が可能であったことから、雇用対策を含めた府中市活性化の拠点として位置づけ、府中市地域医療再生計画の基幹病院とすべきであるという当該地域住民の政策提案要望に対する県の考えを回答して下さい。

12.     以上の要望内容を広島県地域保健対策協議会と協同して解決されることを要望します。

13.     「財団法人広島県地域保健医療推進機構」へ府中北市民病院への医師派遣を要請していただくことを要望します。

14.     府中市は当該地域の住民運動は一部の住民による単なる反対運動や政争活動として、府中市地域医療再生計画に関しては一切協議しようとはしません。府中市のこのような不公正な姿勢に対する県の指導を要望します。

15.     以上の要望内容を府中市地域医療再生計画、地方独立行政法人府中市病院機構中期目標、中期計画に盛り込むよう大至急調査、調整、指導をお願いします。

16.     湯崎英彦広島県知事と地域医療を守る会との面談を実現していただくこと。

 

以上の要望事項に関する県の見解を3月末日までに文書で回答して頂くことを要望します。また昨年平成24126日に提出した広島県への要望書に対する文書での回答も未だ得ていないので再度要望します。 

 

 

l  要望趣旨添付資料

・資料-1から資料-13

l  参考資料

・地域医療を守る会第3回シンポジウム抄録集

・第3回シンポジウムディスカッションの意見

・第3回シンポジウムアンケート結果