平成22年2月3日

府中地域医療提供体制中間報告に対する意見  

 

 

平成21年11月に府中市は府中北市民病院とJA府中総合病院の赤字経営と医師数減少に基づく府中地区医療体制崩壊をくい止めるため、府中北市民病院とJA府中総合病院を診療所化せず病院として存続させると銘打って両病院を統合して経営形態を見直して社会医療法人の寺岡記念病院に全体の管理運営を任せるという府中地域医療提供体制の中間報告を発表し、平成22年1月21日より1月30日まで上下町の各地域でその説明会を開催した。その骨子は病院の役割分担と連携、医師の共有と活用、経営形態の見直しで、国の地域医療再生基金の75千万円を活用して1年以内に策定を計画し2年後の2012年実施を目指すというものである。しかしこの中間報告がいかに作成されたかは、府中北市民病院診療圏域住民には事前の情報も協議の場もなかったことで公平性と透明性を欠いている。そして実際の府中北市民病院1年間の赤字額は国や県からの決められた補助金がきちんと病院に入れば数千万円となり他の全国自治体病院に比べ経営的にも決して悪くないことと、府中北市民病院の診療圏域住民が現在規模での府中北市民病院存続のため6200人以上の署名を府中市に提出していることより今回の上下地域各地での説明会は今後住民と府中市行政が行っていくより良い地域医療提供体制づくり協議会のための事前の説明会と位置づけられるべきものである。すなわち公平性と透明性に担保された府中地域医療提供体制計画が決まるためには診療圏域(府中市、三次市、庄原市、神石高原町、世羅町)住民代表、学識経験者代表、婦人部会代表、過疎地域医療経験豊富な地元医師複数人、府中北市民病院院長らが参加出来る検討委員会が絶対に必要である。地元住民を交えた十分な議論を尽くすことなく当該地域医療体制が決定されることは、昭和18年に上下町の長年の努力が実って無医地域にやっと入院施設のある公的病院が出来、その病院を守ってきた当該地域住民の生命を脅かす許されない行為と考えられる。

地域住民の生命が保証されるセーフティーネット(病院、警察、消防等)に地域格差が絶対にあってはならない。あれば命に関わる重大な問題であり早急に是正されなければならない。すなわち中山間過疎少子高齢無医地域の当該地域住民が住み慣れた地域で安心して健康に一生涯生活でき、国を形成している地域社会として存続するためには、府中北市民病院診療圏域は都市部の府中総合病院や寺岡記念病院と違って他の近隣の都市部の病院(府中市、三次市、庄原市、福山市、尾道市等)まで地理的に40分以上かかりさらに交通の便も悪いことより、救急入院や急患手術が出来る機能・規模を有する地域中核病院としての現在の規模での府中北市民病院が必要となる。また無医地域住民の命と健康を守ってくれている地域中核自治体病院の数少ない貴重な医師を医師が充足している都市部地域の病院に決して派遣させる様な不公平があってはならないのである。住民を守るべき行政が人の命に関わる責任を回避してはならないし、格差を是正すべき行政機関がセーフティーネットの地域格差を生んではならない。行政は医師を無医地域に派遣してくれるよう県や大学に働きかけたり地域医療への地方交付税を国に請求すべきである。広島大学や岡山大学医学部も地域枠を設け地域に残る医師に奨学金を出していることでわかるようにセーフティーネットとして無医地域中核病院の重要性を十分認識しており無医地域の医師を引き上げるということは考えられない。現在日本全国の地域とあらゆる分野で問題となっている「格差」をなくすこと、「命を大切にすること」が国の命題となっていることからわかるように、命に関わるセーフティーネットの格差を無くしていくのが行政の真の姿であり逆に格差の元凶を造るようなことがあっては絶対にならないのである。これから府中市は府中北市民病院診療圏域の自治体(府中市、三次市、庄原市、神石高原町、世羅郡)及び広島県とも協議し、当該地域住民との透明で公平な協議の場を一日も早く開催し真に地域住民のためになる地域医療提供体制を構築しなければならない。

                      平成22年2月3日

            府中市上下町 黒木整形外科リハビリテーションクリニック

                          院長 黒木 秀尚