FILE5:ソバ

 

来生 「この『観察記録』もついに5回目だ。今回も頼むぞ、村下君」
村下 「はぁ...そうですね」
来生 「どうしたんだ村下君?元気がないぞ」
村下 「だって、今回も失敗するかも知れないし...」
来生 「そうか...だが失敗を恐れていては、研究者失格だぞ」
村下 「それはそうですけど...」
来生 「そんな村下君の為に今回も私が取っておきの観察素材を用意したぞ」
村下 「え?今回は何なんですか?」
来生 「『ソバ』だ」
村下 「.........え?今何ておっしゃいました?」
来生 「『ソバ』は『ソバ』だよ村下君。私の好物の『山かけ蕎麦』でお馴染みの蕎麦の原料だ」
村下 「ええ〜っ!?何でまたそんな物を...」
来生 「ここは1つ全く違う系統の植物を育ててみるのも、気分転換になっていいと思うがね」
村下 「う〜ん...分かりました、挑戦してみます」

 

 

9月17日
来生 「さて、これが今回使用する『緑化用ソバ』の種だが...」[写真1A]
村下 「なるほど、これが枕の中とかに入っている『そば殻』の元の形なんですね」
来生 「まあそうなのだが...では、早速準備しようか。今回は少し大きめのプランターを使用した方がいいな」
村下 「これでいいですか?」
来生 「おお、上出来だ村下君。それではいつもの様に...」
村下 「鉢底土を敷いて土入れですね」
来生 「ふむ、さすがに5回目だけあって手際が良くなったな村下君」
村下 「...で、種蒔きですね。どんな風にすればいいですか?」
来生 「説明書きによるとスジ蒔きでもバラ蒔きでもいいみたいだな」
村下 「じゃあ、バラ蒔きにします...これでどうですか?」[写真1B]
来生 「うむ、いいだろう。では土を被せ、水撒きして待つ事にしよう」
村下 「今回はうまくいきますように...」

 

 

9月22日
来生 「さて『ソバ』の方はどんな具合だね村下君?」
村下 「早速芽が出ましたよ、博士。でも、これって何となく...」  
来生 「何だね、村下君?気になる事でもあるのかね」
村下 「いえ、何か一番最初にやった『ハツカダイコン』に似ているような気が...」
来生 「そうだな...しかし『ハツカダイコン』はアブラナ科、『ソバ』はタデ科の植物なので似ているのは最初だけだよ」
村下 「そうなんですか...知りませんでした」
来生 「それよりも、ちょっと今回も密集しすぎなので間引きした方がいいな」
村下 「分かりました。次までにやっておきます」

 

 

10月1日
来生 「あれから1週間あまり経ったが...村下君、様子はどうだね?」
村下 「あっ、博士。見て下さい、もうこんなに成長しました。驚きです(汗)」[写真3] 
来生 「ふふふ、この『緑化用そば』は成長が早いからな。その名のとおり緑化利用としても使われているそうだぞ」
村下 「へえ〜そうなんですか。この分なら今回は『液肥』とかは使わなくてすみそうですね」
来生 「うむ、案外来週あたりは花が咲くかもしれないぞ」
村下 「え〜?まさかそんな事はないでしょう」
来生 「それはどうかな?まあ見ていたまえ」
村下 「本当ですか?...怪しいなぁ(汗)」

 

 

10月8日
村下 「さて、今日も『ソバ』に水をやらなくちゃ...って、ああっ!?こ、これは?」
来生 「ずいぶん騒がしいな...どうしたんだね村下君」
村下 「これを見てください博士。もしかして、これは『ソバ』の花の蕾じゃないんですか?」[写真4A・B]
来生 「うむ、まさしくこれは『ソバ』の花の蕾だな。先週予告した花とまではいかなかったが、なかなかの成長ぶりだな」
村下 「う〜ん、これほど成長が早いとは思いませんでした(汗)」
来生 「今回は短い期間で育てられる物を選んだのだが、我ながらいい選択だったな」
村下 「...またそうやって、すぐ自画自賛するんだから博士は...(呆れ)」
来生 「ふふふ、まあいいじゃないか。これなら来週と言わず、2、3日後には花が咲きそうだな」
村下 「楽しみですね」

 

 

10月15日
来生 「さて村下君、今週こそ『ソバ』の花は咲いたかね?」
村下 「ええ、そりゃもうバッチリですよ博士。まさに『ソバ』の花満開って感じですね」[写真5A・B]
来生 「うむ、なるほど。良い感じに咲いたな。だが今回は花ではなく実の収穫が最終目的なのでまだまだ終りではないぞ」
村下 「分かってますよ。それにしても今回は楽でいいですね。ここまで順調だと恐いぐらいですよ」
来生 「ふふふ、だが油断は禁物だぞ村下君」
村下 「ギクッ...(汗)まさか何か失敗しているって言うんですか?」
来生 「いや、そうではないが...気を付けるに越した事は無いな」
村下 「ううっ...イヤな予感が...」

 

 

10月29日
村下 「博士、博士。見てください、ついに実も付きはじめましたよ」[写真6]
来生 「うむ、あれからもう2週間経ったからな。だが、まだ固くなるまで収穫してはいけないぞ村下君」  
村下 「んも〜、それくらい言われなくても分かってますよ博士。ところで前回言ってた事って何だったんですか?」
来生 「...いや、今のところ問題は無いようだからいいだろう」
村下 「え〜、思わせ振りな事言っておいてそれは無いですよ」
来生 「まあまあ、それよりもちゃんと最後まで育てる事に専念したまえ村下君」
村下 「気になるなぁ...」

 

 

11月11日
村下 「あれから2週間。もう実も固くなったし、取ってもいいですよね?博士」[写真7A]
来生 「うーむ、これは...少しマズイな」
村下 「え?ええっ、どうしてですか!?」
来生 「こちらの方を見たまえ村下君。左下の方は1つの株に対してたくさん花が咲いているが、右上の実が生っている方は2つ実が付いているだけで他は枯れてしまっているだろう」[写真7B]
村下 「あ、本当だ。まさか前に博士が言おうとしてたのは...この事ですか?」
来生 「うむ。どうやら今回は密集した株の間引きが十分でなかった為に、すべての株に栄養が行き渡らなかったようだな」
村下 「ううっ、そうだったんですか。迂闊でした(汗)」
来生 「まあ、こうして実はちゃんと生っているんだし失敗したわけではないぞ。今回は実が取れるだけ取れたら終了と言う事にしよう」
村下 「分かりました。最後まで頑張ります!!」

 

 

12月2日
来生 「さて、『ソバ』編も今回で終了だが、様子はどうだね村下君?」
村下 「う〜ん。やはり博士の言ったとおり、実が付かずに枯れてしまった株が多いです」[写真8A]
来生 「ふむ、まあいいだろう。ちゃんと固くなって収穫できる実もあるようだしな。それでは早速収穫してみようか」
村下 「分かりました...え〜と、これだけです」[写真8B]
来生 「よしよし、上出来だ村下君。まあ蒔いた種より取れた実の方が少ないというのは、ちょっと格好がつかないがな」
村下 「ううっ、すみません(汗)」
来生 「ふふふ、まあ今回はこれで終了としよう。村下君、ご苦労だったな」

来生 「ところで村下君、『ソバ』の実の中身を見た事はあるかね?」
村下 「へっ?いえ、見た事ありませんけど...」
来生 「よし、では1つ殻を割ってみるか...ほら、このようになっているのだ」[写真9]
村下 「へえ〜...初めて見ました。この中身が『ソバ粉』の元になるんですね」
来生 「うむ、本来は石臼等で引いて粉にするのだがな」
村下 「また機会があったら、今度はもっと広い場所で育てて沢山収穫したいですね」
来生 「そうだな。...それでは次回の『観察記録』でまた会おう」

 

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