技術

1.ARRO-DYNANMICS

AERO−DYNAMICS(エアロダイナミックス)
空気抵抗と車の性能
空気抵抗
空気抵抗の構成
圧力抵抗
摩擦抵抗
誘導抵抗
揚力の発生メカニズム
揚力の低減とダウンホースの獲得
ランドエフェクト
風洞実験

空気の流れや力は,車の性能にいろいろな影響お与える,空気は時に有害であり、ときに有益な働きおする、エアロダイナミクスを車の諸性能との関係で考えてみる。 車に働く空気の力 車に実際に働いている空気は一つだが,力を解析するためには、その力を次のように分解してみる、力は3つのモーメントに分けることができる,まず車の重心を原点とする3つの軸をかんがえる、前後方向をX,横方向をY,上下方向をZ軸とする、次に各軸まわりのモーメントを定める、X軸まわりのモーメントを,Mr、Y軸のまわりをMp、Z軸のまわりをMy、とする。

Mrはローリングモーメント
Mpはピッチングモーメント
Myはヨーイングモーメント
となる。

 空気抵抗Dは走行を阻害するもので,高速での加速性能や燃費,最高速に影響する,空気抵抗は,馬力に換算することができる、たとえば180km/hで100kgの空気抵抗が発生している場合だと、66.7馬力が出力ロスとなる。 揚力Lは車を持ち上げようとする力で,揚力が発生するとタイヤの接地荷重が減り、グリップ力が低下する, 一方逆揚力はその逆で、タイヤのグリップ力を増加させる, 揚力も,逆揚力も、それが発生すると誘導抵抗が生じるので,動力性能面では,揚力も逆揚力もゼロがのぞましい, ピッチングモーメントMpは,揚力の中心が重心とずれることで発生するので間接的に安定性に影響してくる。


クルマのエアロダイナミクスは、性能との関係でとらえられ研究され工学では空気抵抗が発生した結果どうなるかと、それお低減する技術が問題となるため、より空力的にすぐれた車をデザインするには、エアロダイナミクスの基礎的な研究が必要である。
 

最高速、高速加速,高速性能, 風切り音、ベンチレーション,冷却性能、 等に関係する、燃費性能では,空気抵抗が車速の二乗に比例して大きくなるため,特に高速時に問題となる、しかしエンジンのフリクションロスの低減や,転がり抵抗の低減によって,近年,空気抵抗が問題となる車速は低下してきている,最高速付近ではエンジンの出力のほとんどが,空気抵抗に打ち勝つためにつかわれているといわれ, 同様に高速での加速を阻害するものとして,空気抵抗の占める割合は大きい。

 空気抵抗の分類の仕方にはいろいろあるが、大別すると圧力抵抗、摩擦抵抗、誘導抵抗、に分けることができる。

 車に働く空気の力を圧力で示すことができる、圧力は場所によって異なり、正圧になったり、負圧になったりする、圧力は流れの方向に垂直に働く、したがって圧力の方向は流れの向きによって異なるわけで、車の進行方向に対して、垂直でない場合には、圧力のX軸方向の成分が出きる、この成分お前から後ろまで合計すると、圧力による空気抵抗、圧力抵抗が求められる。
 圧力による空気抵抗は風洞実験のように荷重計を用いなくても、圧力分布を調べることで求められる。 車の進行方向、X軸に対してなるべく垂直に近いような圧力分布であると、圧力抵抗は小さくなる、例えば翼形でいえば最大厚みが前線に近いものよりも、前線からなるべく離れたところで最大厚みとなる翼形のほうが圧力抵抗は小さい。
 このような翼形を、層流翼という、圧力抵抗は以上のことから、形状によって異なるため形状抵抗ともよばれる。 ところで、流れの後方には渦が生じることが多い、渦は台風でもわかるようにその中心の圧力が低い、渦ができるとその部分は負圧となり圧力抵抗を大きくする。 例えば、円柱の周りの流れを考えてみると、渦がスムーズな流れであると、圧力分布は流れの前後で対称となり、圧力抵抗はゼロとなる。
 ところが実際の流れはスムーズではなく、渦を伴ったものとなる、したがって圧力分布は前後対象とならずに圧力抵抗を生じる、渦の発生は、圧力抵抗を考える上で重要である、渦は流れが物体の表面から剥離することで生じる、それは空気に粘性があるからで、粘性があると、境界層が生まれ、境界層がある程度以上にはると、これが物体の表面から剥離し渦が生まれる。
 車の空気抵抗のほとんどが圧力抵抗であるから、空気抵抗の低減は渦をいかに少なくするかということに絞られてくる。

 固体と固体を接触させると摩擦力が働くが、空気の流れによる摩擦抵抗は、これと様子が異なる、摩擦抵抗は空気の粘性で生まれる。航空機のように表面積が大きく、その割に圧力抵抗の小さいものでは、摩擦抵抗は問題となるが、車のように表面積が小さく圧力抵抗の小さいものでは、摩擦抵抗はさほど問題にならない。

 前面投影面積は、車を前から見たときの面積で、前後方向の断面を取り出した断面積ではない、実際にはボディーの設計図から求めたり遠方から望遠カメラで撮影した写真を引き伸ばし、これをプラニメーターを使って測定して前面投影面積は求められる。 上の式を使って空気抵抗について考えてみると、まず注意っしなければならないのは、空気抵抗は速度の2乗に比例して大きくなる、ということで空気抵抗が高速になるほど問題になるということは、このことで説明できる。空気密度と速度を一定とすると、空気抵抗は、前面投影面積Sと空気抵抗係数Cdに比例する。A車とB車の空気抵抗を比較するにはSXCd値をみればよいことになる。カタログやCMではCdの小ささが宣伝されるが、空気抵抗に注目した場合にはCd値だけ小さくてもまったく意味がない。Cdが小さいことで空気抵抗が小さいとイメージさせるのは好ましい宣伝方法ではなく、正確にはSXCdの値を示すべきである。ただし前面投影面積は車体の大きさを示すものであるから、大きい車体えおもち空気抵抗の小さな車を作るにはCdの低減が有効である、また、室内の狭さには限界があるので、空気抵抗の低減はもっぱらCd値の低減となるともいえるCdが小さくても前面投影面積Sがおおきくては、空気抵抗は小さくならない。Cdは車の前面投影面積Sに対する空気の流れのスムーズさを表していると言える。

 

 車を巨視的に見ると、側面形状は航空機の翼に似た形状であるすなわち凸形で、このような形であると上面の流速は下面に比べて速くなり、流速の速度差は圧力差となり揚力が生じる。

 エアーダスポイラーやリヤースポイラーといった、空力的な付加物を装着するといった方法や、Cdの低減で述べた低減方法があるが、将来的にはシャーシ下部の空気の流れおコントロールする方法が注目される。現在ではエアダムスポイラーのように、シャーシ下部に空気を流さないというコントロールであるが、将来はむしろ積極的に流すようになる、揚力を積極的に減らすことはダウンホースを得ることにつながる。もっとも進歩したダウンホースの発生装置は、グランドエフェクトを利用したものでF1グランプリレースにおいては、1983年からグランドエフェクトの利用が禁止されている。

 

 グランドエフェクトの本来の意味は、航空機が地面の近くを飛ぶと空気抵抗が減少する現象を示すものである、この現象があるためパイロットはあらかじめそのことを予測した減速を行って着陸する、翼によって下向きの流れを作られた空気が、地面にあたることで角度が減少し、誘導抵抗が少なくなる、ゆって地面の近くを飛ぶと、空気抵抗が減少することが説明できる。 グランドエフェクトを複雑にしているのは、実際の走行では空気と路面は静止していて車が動くというごくあたりまえのことであるが、空気と路面の相対速度はゼロであるから、路面には境界層は生じない、一方、シャーシの下には境界層が生じる、シャーシ下面と路面の間の流れは、一方の壁面に境界層が生成し、一方壁にはそれがないというものになる。またシャーシ下面と路面の距離 ロードクリアランス の大小によって、境界層の流れに対する影響が変わるためロードクリアランスによって、空理機特性が大きく変化する現象も、グランドエフェクトによって生じる。ウイングカーシステムでは、次の2つの整流で支えられている。ひとつはボヂー側面のセンターウイングもう一つはシャーシ下面の流れと一般流とを隔離するサイドスカートシーリングである。いずれのばあいでもシャーシ下面に流入した空気はいったん流量が絞られ、その部分の流速が速くなり圧力は低下する、一種のベンチュリー効果が生まれる。管内に設けられたベンチュリーであると、その部分の圧力が低下するだけであるが、シャーシ下面と路面で作られたベンチュリーでは、負圧はシャーシ下面を路面に引き寄せる力として働きダウンホースを生じる、これがグランドエフェクトである。

 車の空力特性の研究には、風洞が使われる、シャーシが静止しているために、測定や観察が容易であるという大きなメリットを持つ一方で、路面をどうシュミレートし実走行と結果を一致させるかという大きな問題もある。基礎研究には模型風洞実験が使われる事が多いが、モデルの精度が大きな問題となり、実車との比較が難しいためニユーモデルの開発には実車風洞が使われる。実車風洞はかなりの大きさを必要とするため、設置は容易ではない。風洞実験では測定部の床に境界層が生じ実走行とは異なる、実際の路面をどうシュミレートするかが問題となり、VW社の報告によるとロードクリアランスが150mm以上であれば境界層の影響は無視できるということだが、ロードクリアランス小さな車の実車実研では、このことが大きな問題となるため、気流と同じ速さで動く地面版   ムービングベルトが必要になる。流れの観察は流れを実際に目で見られるように工夫して行われる、細い毛糸をボディ表面に貼って、その動きで流れを観察する方法や、気流糸法や、煙を流す方法等が用いられる、このような流れの可視化は、流れを目で確認できるために、空力特性の改善に効果の高いものである。

参考資料 文献
☆最新自動車力学
☆流れ学
☆飛行の理論流体力学
☆流体力学実験法
☆Road Vehicle Aerodaynamics
☆AIAA Second Symposium Aerodynamics and Racingcars


宮田エンジニアリング(Takayuki Miyata)



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