野呂山の走り屋

 

1998/11/26

M:この間久々に頃野呂山を走りに行ったんですよ。平成4年の日産シルビア2.0Lでね。
知っての通りMax100KMしか出ない代物ですよ。

N:うん、でも野呂山のコースはカーブの連続だからスビードは関係無いだろう。要は、コースの熟知と運転テクニックだから。

M:ところがですね、少ないとはいえストレートがいくらかある。この頃の若い奴は、凄い車に乗ってますからね。僕もここ何年も乗りに行ってなかったもので最初はびびりましたよ。だって10、20代でも1週間に3回は乗りに行かないと腕が鈍ると感じてましたから。最初はね、後ろから来る奴のコース取りを見てね、や、ここでこんなに膨れるなんて次のカーブはそんなにきつかったか、しまったと。昔は、どうせ付いてこれやしないのだから俺の後ろをちょろちょろするな!と思ったものですがね。

N:で、まさか負けはしなかったろう?

M:まあ、そうですが。

N:それで、どんな面白い事があった。

M:走り屋の本能て言うのか、つい熱くなちゃうんですね。けっこう走れる奴が追って来んですよ。いい走りをする奴を見ると燃える。向こうは、ギンギンにチューンしたらしい化け物みたいな奴でしたからね。でも、どうせ負けるのならみっともない負け方はしたくない。ストレートで抜かれるのを覚悟でカーブでできるだけ差をつけようと必死でしたよ。そのうちどんどん離れていって、ちらちらヘッドライトの明かりが見えるくらいになった。ところが、最後のストレートですよ。これで終わったな、と思ったんですが、向こうもかなり熱くなったみたいで無理にアクセルふかすものだから車がコントロールを失ってあっちこっちしてるんですよ。冷静にアクセルワークすれば余裕で勝てるものを、結局ラッキーで勝ってしまいましたよ。

それで、上の駐車場でコーヒ飲みながら一休みしてたらやっとやって来ましてね。「おじさん、この車足は何付けてんの。あ、やっぱりコニーのショックアブソーバーだ。俺も付けてんだ。こいつは利くからね。」何て言うんですよ。俺は、「そんな物付けて無いよ。」って、ほら、Nさんの車にコニーを付けた時、シールなんて駄作くて要らないって貼らなかったじゃないですか、それを貼りつけていたんですが、物を見てもわからないくせにそれを見つけたんでしょうね。

「そんなもの付けてない。試しにトランクを押してみな。」「ほんとだ、この車ふわふわじゃんか。」

そこから散々説教されちゃいました。「おじさん、野呂山を走るのにそんなノーマル車じゃ話にならないぜ!野呂山を甘く見るなよ。次はコニーのショクアブソーバーくらい付けて来なよ!!」
「やっぱりそうかなぁ。」「そうだよ。ダサすぎるよ!俺なんか、ギンギンチューンしてんだぜ!!」
それからあれやこれやとチューン用の知識を並べあげられましてね。黙って聞いていたんですが、最後にぽつと言ってやりましたよ。
「そうだよなぁ。でも、お前はどうして俺を抜けなかったのかなぁ??」

奴、すっかり黙ちゃいましたよ。

N:はははははっ!そりゃ、愉快だ。

M:でも、俺、おじさんですから。まぁ、仕方ないですね。俺だって10、20代の頃には30過ぎたら皆おじさんに見えましたから。そう考えると俺が出会った頃のNさんは、もう40代だったでしょう、あらためてNさんの凄さを感じますね。若い俺たちについて来るどころか、たいがいの奴はかなわなかったからな。

N:お前は、そうじゃなかったろう。

M:とんでもない、こんなおじんに負けてたまるかって必死でしたよ。

N:まあ、本格的なモータレースもしてたからな。

M:そうそう、この頃の奴は、怖いですよ。走るルールってのを知らない。F1が300kM近いスピードで走れるのは暗黙のルールがあるからですからね。INのけつをちょっとでも取られたらもうコースを譲るしかないって、レースの常識ですから。競っていてもドライバー同士で信頼感がある。この前野呂山を走ってこのルールを無視してやたら突っ込んでくる奴が多いんで驚きました、おちおち仕掛けられやしませんよ。こっちがINを取っているのに突っ込んできたら俺は山側で助かる見込みはあっても相手は、バランスを失って崖からまっさかさまですからね。

N:俺だったらそれでも突っ込むね。人間には誰にも恐怖感がある。それを身を持って教えないとわからないのさ。こっちが強気で行けばびびってついてこなくなるよ。

M:そうですかね、俺は恐ろしいなぁ。とにかく、今度、久しぶりいしょに野呂山走りにいきましょう。

N:そうしよう。


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