SeeDのお仕事 前編
【バラムガーデン・スコールの部屋】スコール
『コンコン』
ドアをノックする音。
「う……ん…」
いつもの通りのけだるい朝。
何時だ??
そう思いながら時計を見る。朝の5時30分前…
んだよ…誰だ?一体こんな時間から…
眠い目をこすりつつドアに向かう。
思わずアクビが出る。俺はドアの開閉ボタンを開けた。
ボタンを押すとロックが解除し、ドアが開く。
「誰だ…こんな時間に…!!?あ、が…学園長……」
「おはよう、スコール君」
「おはようございます」
くまのパジャマを着ながらする敬礼は何ともカッコウがつかない、我ながら嫌になるが、リノアがこの間ティンバーで買ってきた買い物に難癖をつけるほど俺は無粋じゃない。
しかし…またこの早い時間に……
はっ!!!!!!
まさかまたこの間のような事は…!!??(*SeeDスコールの受難(@劉星さんのサイトにて絶賛公開中☆)より)
「ど、どうしたんですか?こんな朝早くに…」
「あぁ、今朝急に依頼が入ったんですよ」
学園長はそう言って俺に一枚の用紙を差し出す。
SeeD派遣依頼書だ。
俺は内容を確認する。
「な、これは……」
「時間は8時からです。最低でもメンバー6人の男子を集めて7時には正門に集合してください。いいですね?」
「6人ですか…いや、しかしこれは…」
「ここはガーデンの生徒達の就職先として長く付き合いたい企業のひとつなんですよ、スコール君…わかりますね?」
「はぁ…」
しょうがない…
俺は諦めて依頼書を綺麗にたたむ。
「わかりました、7時までに6人集めます」
学園長は俺の返事を聞くと安心したかのように戻っていった。
「参ったな…」
あと1時間か…
溜息をつく。
軽く身支度をして部屋を出た。
俺の足の向かう先はゼルの部屋だった。
【バラムガーデン・ゼルの部屋】スコール
「おい、起きろ」
どかっ
「う”」
寝ているゼルの上に座る。
「仕事だ、早くしろ。7時までに正門集合。遅れた奴にはメシ抜きだぞ」
「……なんだよ仕事って…うぁ〜〜〜、まだ6時前じゃねぇか…」
と、言いつつもゼルは起き上がり身支度を整えだした。
いつも立っている前髪がふにゃりと下りている。
ま、当然といえば当然だ。
俺は派遣依頼書をゼルの前につきつけると、
「そういう事でお前はサイファーと雷神を連れて来い、俺はアーヴァインを起こしてくる」
「んなっ!?サイファーと雷神!?マジかよ、あいつ等が入ったらどうなるか…」
「しょうがないだろ、他に使えそうなメンバーがいるのか?」
既に前髪を立てたゼルの目はすっかり覚めているみたいだ。
「しょうがねぇな…7時に正門前だな、じゃあ俺行くぜ」
と、言うなりその場から軽快に走り去っていった。
【バラムガーデン・正門】スコール
アーヴァインを起こし、もう一人のメンバーを起こすともう7時近くになっていたので、正門へと急ぎ足で向かう。
既にシド学園長とキスティスが正門前で俺たちを待っていた。
「おはよう、スコール」
「あぁ、どうしたんだ?今回はあんたの出番はないだろ?」
「あら、そんな事ないわよ。大体メンバーの想像はつくけど…6人もいる個性派を誰がまとめるかっていうと…ね?私しかいないでしょ?」
キスティスはそう言うとくすりと笑う。
確かに…
サイファーにゼルなどをまとめる事は俺には不可能だ。
あいつら2人いるだけで話がややこしくなる。考えたくない事だ。
「おはよう〜キスティ〜、今朝も変わらず綺麗だね〜〜」
「あら、ありがとう。今日は頑張ってね、期待しているわよアーヴァイン」
送れてきたゼルが走ってくる。
「はぁ…はぁ……悪ィ。サイファーのバカが全然起きなくてよ」
と、言うゼルの後にサイファーが雷神にせかされながら歩いて来た。
「これで全員そろったな…」
「じゃあ行くわよ、みんなラグナロクに乗って」
キスティスの指示で皆は動く…なるほど、あながち冗談でもなさそうだ。
ラグナロクの中では一人ひとりに今回の仕事用の制服が支給された。
「はい、これにちゃんと着替えて…それで各ポジションは……」
「うわっ、なんでオレが7!?ま、いいか…ラッキーセブンって奴だな、うん」
「おいキスティス!何で俺が5番なんだよ、4番じゃねぇのか!?」
サイファーが怒り出す。
俺に渡されたのは…4…だ。
「スコール…お前が4番だとぉ!?よくわかったぜ、帰るか雷神!」
雷神は嬉しそうにユニフォームを眺めている。
「もう、しょうがないわね…はい、サイファーこれならいいでしょ?44番」
「ちっ…」
そう、ユニフォームの番号が教えているように、俺達の今回の仕事とはバスケットの試合なのだ。
しかし…いくらSeeDとはいえバスケットの試合とは……
相手にもよるが、怪我なんてさせないといいが…(奴等が)
一抹の不安が俺の背中をよぎる。
【新羅ビル・体育館】スコール
ラグナロクを降りると黒づくめの服の男が俺たちを迎えてくれた。
「おはようございます、本日はようこそいらっしゃいました」
「いいえ、こちらこそ……」
キスティスと男は今日の事についてしばらく会話を交わす。
「……では、皆様御案内します。こちらへどうぞ」
ビルとは違った方向にしばらく歩いていく。
すると、目の前に巨大な体育館が現れた。
「でけぇ…」
「うわ…ぁ」
思わず皆から漏れる溜息と声。
それほど圧倒的な大きさだった。
「どうぞ、中へお入りください」
中に入ると言葉も出なかった。
綺麗に整えられた体育館。
中央の天井には客席から見えるように設置されたエキシビジョン。
そしてコートの外には既に設置済みのカメラが7台、無人のコート内をうつしていた。
「なんだこりゃ」
「ふん、俺たちがわざわざ来たんだ。これくらいの事してもらわねぇとな」
サイファーのその自信は一体どこから来るんだ…(--;
「見てよ、カメラが…7台もあるよ〜」
「金がかかってそうだもんよ」
俺たち…もしかしてとんでもない所に来たのか??
「SeeDの皆さん、試合開始は10時からです。それまでは各自自由に練習などをしてくださって結構です。あちら側がバラムチームのチーム名は…」
「あぁ、オレ考えて来たぜ!」
ゼルがチームネームを?
ゼルはそういうと、ポケットからメモ用紙のようなものを取り出して、黒服の男に見せた。
「バラム イフリーツ!てんだ。んで、これがロゴ!」
みんな気になるらしくそれを覗き込んでる。
俺は特に関心が無かったので見なかった。
「へぇ〜、器用だね〜〜。ゼルはこういう事にかけては天才的だね〜」
「こういう事ってのは余計だよ」
「ごめんごめん〜〜、でもなかなかいいじゃん」
「あら、可愛いじゃない。これGFのイフリートね」
「あぁ、そうだぜ」
俺は着替えると、ボールを持ちドリブルを始める。
とにかく短時間でこの感覚を覚えないとな…
手にすっぽりと収まっているボールを見て、サイファーもボールを持って近づいてきた。
「へっ、自分が4番だからっていい気になるなよ。お前にゃ負けねぇからな」
チームメイトだろうが…
「俺はこの試合でお前よりも絶対にシュートを決めて見せる!!」
勝手にやってくれ…
「俺のPF(パワーフォワード)ぶりをまざまざと見せ付けてやるぜ!!!」
「サイファー…」
「あん?」
「スコール行っちゃったもんよ…」
俺はサイファーの言う事には耳も貸さずにシュート練習を始めた。
ザシュ
とりあえず感覚はそれほど失ってないみたいだな。
調子もいいみたいだ。
「入るね〜、スコール…」
アーヴァインの声がしたがお構いなしにシュートに没頭する。
「じゃあ皆も体を慣らして…」
「では、私はこれで…あ、そうそう…本日の試合は全世界に中継されますので…テレビ放送再開第1回目のイベントとなりますし、生中継ですので宜しくお願いしますね」
「はぁ!?」
思わず出た声。
しかし俺の声が聞こえなかったのか、黒服長髪の男はにっこり笑うと去っていった。
「おい、スコール!全世界に生中継って何だよ!?」
ゼルが緊張した面持ちでたずねて来る。
俺が知るか…そんな事。
「知るか、俺は練習試合だって聞いたんだ」
「にしては…設備とかカメラとか凄いよね〜」
それは俺も気になっていた。
「上等じゃねぇか」
サイファーが笑いながら言ってきた。
「依頼内容はバスケの試合なんだろ?生中継だったら後で報告書を書く必要が無くなったじゃねぇか。それに要は勝ちゃあいいんだ」
「そう簡単に勝てるかな?」
サイファーの台詞に挑戦しているような声が体育館内に響く。
「あ?」
声のした方に皆が注目する。
俺達の入ってきたところ…入口に背の高い黒髪の長髪男が腕を組み、笑いながら立っていた。
トレーニングウェアに身を包み、ボストンバッグを足元に置いている。
「誰だ??お前…」
「うちのチームを舐めない方がいいぜ、それに自信過剰は自滅につながるぜ」
「何ィ!?」
「それにな、SeeDだからっていい気になるなよ。こにはSeeDの上をいくソルジャーってのもいるんだぜ」
挑発的な台詞と表情…サイファーはもう完全に頭にきてるって感じだ。
俺はそれよりもそいつの言ったソルジャーってやつの方が気になった。
「ソルジャー?もしかして…」
キスティスがぽっと呟く。
「知っているのか?」
俺の問いにキスティスは頷くと、
「えぇ、以前学園長から聞いた事があるわ。ガーデンのSeeDで優秀な人材を引き抜き、更にここで鍛え上げられた者をソルジャーと称して、SeeDで対応しきれない事態に陥った時にソルジャーを起用している…って。昔からSeeDとソルジャーって同じ舞台に上がる事は無く、常にSeeDの影の存在だったって聞いた事が…」
「ふぅん…常に影の存在ね…」
「あ、ごめんなさい」
そいつはキスティスに近づいてくると、
「いいんだ、許すよ…君綺麗だね〜、いくつ?あ、女性に歳を聞くなんて無粋な事をしちゃたね、失敬」
こいつも女好きか?
「ソルジャーね…じゃあ遠慮なくぶつかれるって訳だ」
「へ、早々簡単にやられないぜ…しかし、あの魔女を倒したSeeDさんがねぇ…こんなガキっちょだったとは」
むかっ。
「おいザックス!やめろよ!」
いつの間にいたのか、背の低い…ゼルと同じくらいかな?うわっ、ツンツン頭…あれ何で髪を固めているんだ?
「おいおい、何しているんだ?試合はまだだぞ…と」
もう一人…チンピラ風の男が体育館に入ってきた。
「ザックスが…」
「練習しているのかと思ったら何してんだ?いい加減にしないと五月蝿いのが来るぞ…と」
そう言われて、ザックスとツンツン頭は自分達のベンチに荷物を置く。
「さぁ、私たちも練習を始めるわよ」
キスティスが指示を出す。
こりゃ前途多難だな…
軽く溜息をつく。
【新羅特設体育館】キスティス
試合開始まであと30分…
観客も少しずつ入り始めた。
スコールはドリブル・シュート・パス全般に渡り素晴らしい動きを見せる。
ゼルは小さいながらもその分を十分にカバーする素早さを兼ね備えている。
アーヴァインは十分回りを見ているようで、雷神に指示を与えたりしている。
雷神は自分で動くよりも指示させたことを完全にこなしていた。
サイファーは普段通り。かなり自己中心的な行動が目立つ。
ボールを持ったら一人で突っ走ってダンクしちゃうタイプね。
しかし…みんなバスケットをするのは久し振りなのに……カンが良いというか…
「まっみむめも〜♪お疲れ様、キスティス!」
声をかけられて振り返ると、セルフィとリノアがこちらに手をふっている。
「あら、早かったのね」
「うん、スコールどう?カッコいい??」
「はいコレ。差し入れやで」
セルフィは私に荷物を差し出す。
「あら、これは…」
「レモンの砂糖漬けとセルフィ特製のスポーツドリンクやで」
「美味しそうね、ありがとう。これでみんな頑張れるわ」
するとリノアが私にお願いのポーズをとって、
「ねぇ、ここで見ていてもいい?いいよね??」
「しょうがないわね…はい、チームジャケット」
「わぁ!ありがと!!キスティス大好き〜〜」
そう言って私に抱きつくリノア。
「はいはい、好きなのはスコールでしょ」
「凄い!バラム イフリーツ!?いつ作ったん?」
「あぁ、今朝ね…相手側の新羅の社長さんが作らせて持って来てくれたのよ」
赤と黒のジャケットで背後にバラム イフリーツのロゴ(ゼル案)が入っている。
なかなかのデザインだ。
「さぁて、試合に集中しますか〜」
セルフィが嬉しそうに相手チームのオーダー表を見る。
「試合…始まるね」
「そうね、もう10時だわ…」
両チームはコートの中央に集まり挨拶を交わす。
【新羅特設体育館】セルフィ
ふ〜ん…
オーダー表にはこう書いてあった。
『10番PG(ポイントガード)レノ』チンピラっつうか…がら悪いな、あの人。ゼルの相手やな。
『11番SG(シューティングガード)クラウド』あ、すっごい髪…ゼルに負けてへんわ。えっと…うちは・・・アーヴァか。ま、背の差から言って楽やね。
『4番PF(パワーフォワード)ザックス』…あの長髪の人。なんだか妙なオーラが出てるな…サイファー気ぃ抜けんで。
『7番SF(スモールフォワード)ティファ』あれ?女の人!?なんや、だったらあたしも出たかったなぁ…ま、今となっては遅いけど…スコールの相手やね。
『9番C(センター)アレス』うわっ、ごっつ背が高いやん…何やねんあの体…雷神でも負けるで、ほんま。
既に試合は始まっていて、新羅チームにボールが渡っていた。
「何であんなトコにパスすんだよ!!」
ゼルがサイファーに怒鳴る。
「うるせぇ!てめぇこそチビなんだからその分走って点数稼ぎやがれ!」
「んだとぉ!?」
「ふん、やるのか!?チキン野郎」
「君たち!!私語は謹んで!!」
な〜にしてんねん、あの二人……
4番のザックスがドリブルでバラム側に向かう。と、逆上していったゼルをパスでかわす。
一方パスを受けたレノはアーヴァの方へと突っ込む。
「これ以上は行かせないよ〜」
そう言うアーヴァの視界から一瞬消える。
逆サイド!?素早っっ!なんてスピードやねん。
しかし、その動きを読んでいたスコールが向かうが、一瞬遅くまたもやレノからザックスへとパスが向かう。
「ザックス〜〜〜〜☆☆」
黄色い歓声が体育館に響き渡る。
その声援を受けてザックスはドリブルしながらウィンクを決めた。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ってな、試合中にするか?普通…(--ゞ
でも、それで彼には少しの隙ができた。
「チャラチャラしてると…」
サイファーが彼をマークする。アイソレーション(マンツーマンディフェンスに対する戦法でオフェンス能力の高いプレイヤーを孤立化させるように残りのプレイヤーが逆サイドにどいて1対1で攻めさせる戦法)を相手が取ってくる。
かなりザックスのオフェンスには自信があるんやね。
「キスティ…あのザックスっての。要注意人物やで」
「そうね…かなり使えるみたいね」
恐らくサイファーもそうわかっていたようだ。
いつもの様に突っ込んでいかない。
と、突然ザックスはシュート体制に入る。
ここからだと3P!!入るって言うんか!?
サイファーがジャンプしてシュートを防ぐ・・・が、ザックスが投じたボールはサイファーの横を抜けていった。
しまった!!フェイク!!
「野郎!!」
サイファーの後ろにいつの間にか居たティファへとボールが渡る。
ティファはスコールに背を向けるとドリブルしながらあっという間に逆サイドをつき、するりと中へ入っていった。
「くっ…」
中に入ったティファに対して雷神がブロックをかける。
ティファはゴールをふっと見上げる…!!!フェイクや!
しかし雷神は反射的にジャンプしてブロックをしていた。
「何度もフェイクかけやがって!」
サイファーが怒りをあらわにする。あかんわ、ばらばらやん。
しかし、サイファーの怒りの言葉に一瞬ひるむティファはクラウドへとパスを出す。
受け取ったクラウドはゴールへと投げた。しかし、そのボールの軌跡は中に入らないのがわかった。
その時、突然ゴール下から巨体が現れる。アレスは大きなその手でボールを手にし、
「入ってろ!」
半ば強引にゴールへと押し込んでやった。
ザシュ!
「なっ!?」
「あ…」
「何ィ!」
「アレス!!」
全ての観衆の視線がそのプレイに息をのんだ。
「アリウープ!?!?!?!?」
あたしは思わず立ち上がり叫んでた。
なんて…なんて奴。あの場面からアリウープなんて…
いきなりこんなシーンに出会えるなんてメッチャ幸せやわ。
「セルフィ…あなたどっちの味方なの?」
キスティに言われてはっとする。
「せやかてアリウープやで?見た?今のプレイ!!」
半ば興奮ぎみにキスティとリノアに言う。
「もう、スコールってば…いつものキレが無い!相手が女の子だから?もぅ…」
リノアはスコールの事で頭がいっぱいみたいやね。
しかし久し振りに見たな…アリウープ……
あいつが得意やったな…そういえば……
【新羅特設体育館】リノア
スコールにボールが渡る。
点差はたったの6点。試合開始の立ち上がりにかなり苦労していた。
新羅チームのアリウープ(って、言うの)が決まったとたんにスコールに火がついた。
速攻でスコールがボールほキープし、ドリブルで新羅側へと突っ込む。
すかさずザックスがスコールをマーク。彼が一番戻りが早かった。
スコールの前にザックスが立ち塞がる。
しかしスコールはザックスにくるりと背を向けると彼をあざやかにかわし、シュート体制に入っていた。
「打たせるか!」
ザックスは尚もスコールのシュートコースへ入り、ジャンプしてブロックをする。
その瞬間、ジャンプしてオーバーハンドからスコールは急遽アンダーシュートを放り投げる。
パスン
音も無くボールはゴールポストへと吸い込まれていった。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜(>▽<)すこーるぅぅぅぅぅ!!!」
会場の歓声に負けんとばかりに声が出る。
カッコいい!!かっこ良すぎる!!
傍まで書けよってはぐはぐしたい気分っっ!
「まだだ!」
ザックスはボールをレノへ渡すと素早く駆け出す。
速い。
あっという間にバラム側に到達。
「立ち上がりが早いわよ!戻って!」
「なろっ!」
「頑張れ〜〜〜」
あたしの声援も虚しく、あっという間に逆転。
んもう、あれじゃあいくらスコールが上手くても……
とたんに、ゼルからスコールへのパスが難なくカットされる。
「あぁ!?」
カットしたのはザックス。
またあの人!?もう、何て事を!!
「きゃぁぁあああ!!ザックス〜〜〜〜」
歓声が一層大きくなる。
スコールがすぐにザックスへのマークにつく。
「さっきはド派手に決めてくれてありがとよ…」
「何?」
「お前だけに出来る技じゃないんだぜ」
ザックスはスコールに何かを話した後、先程スコールがやったようにくるりと背中を向け、スコールのマークをかわす。
「あっ!」
思わず声が出る。あれって…さっきスコールがやった……
マークのない場所から勢い良くボールをゴールに叩きつける。
ダンッ!!
「そんな……」
走りもせずにダンクを決めるザックス。
まるで体にバネが入っているみたい。
「すごい…」
あの人って一体…
「さすがね…これじゃヤラレにきているようなものだわ」
「キスティス…大丈夫だよね?ね、勝てるよね?」
「そうね、これからですもの」
再びバラムの攻撃。
アーヴァインからサイファーにボールが渡り、サイファーはゴールへドリブルで進む。
マークがつく前に雷神へボールを渡す。
雷神はゴール下に入ったサイファーへと再びボールをパス。
そのままサイファーはジャンプしてゴールへ…
その時にアレスがブロックに入る。
さすがのサイファーも巨体にぶつかり、倒された。
ピピーッ!
審判のフエがなる。
「オフェンス!チャージング!!」
え?
オフェンス!?
気がつくと相手のアレスも倒れている。
もしかしてあの人…上手い。
あの2メートル近い巨体をサイファーが倒せる訳がない…としたら、わざとファールを誘った……
あの人の事、ノーマークにできない……
結局それからは入れては入れられて…なんだかどっちも気が抜けない戦いになってきた。
「あ、4点差…」
「ディフェンスやで!!アーヴァ!頑張り!」
「言われなくても…」
バラムチームの動きがやっと出てきた。
戻りが早くなったのかな?
スピードでは負けていない…と思う。
「んだらっ!!」
サイファーは相手が外したシュートを拾う。
「ナイスリバン!!」
行っけ〜〜〜〜〜!!そこでスコールよぉ!!
「行け!スナイパー野郎!!」
え?
ボールがアーヴァインに渡り、そしてゼルへと渡される。
ちょっとさっきからサイファーパスをスコールだけ避けていない?
「そういえば…サイファーからスコールのパスって無いわね…」
キスティスが呟く。
「だよね!?もう、サイファーってば…」
ゼルに渡り、マークがゼルにつくともう一度アーヴァインに送る。
アーヴァインはボールを受け取ると、その場所からシュートを…
「あ……」
「入るの!?」
ボールは大きな弧を描き、ゴールポストへと吸い込まれて行った。
サ…
「入った」
「嘘…3ポイントシュート!?」
アーヴァインのシュートが入り出したのはそれからだった。
体育館内にどよめきが起こる。
to be continued
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