SeeDのお仕事 後編


【新羅特設体育館】ルーファウス
 まったく…あれでソルジャーなのか?奴等…
 相手チームにいいようにゴールされて。
「イリーナ、あいつを呼んで来い」
「はい、わかりました」
 早々に奴を起用するとは…計算外だな。
 俺は髪をかきあげる。
 前半は我新羅チームのリードで終わると予測していたのだが…
「全く、あいつの一人プレイになっているじゃないか」
 ザックスは腕がいいが自己中心的なプレイが多い。
 クラウドは少し自信が無さそうな動きになっている。
 アレスは最初から自分のペースだが、ゴール下でしか活躍できない。
 ティファは……彼女が今のところ皆を引っ張っているな。
 レノ…全く、素早いが決定打に欠ける。
「クラウドを下げる…か…」
 これ以上奴等にでかい顔をされては迷惑だ。
「クラウドを!?社長、それよりもアレスの方が…ザックスとセフィロスが言い争ったときにそれを止められるのはクラウドだけだと…」
「ツォンはそう思うのか?」
「はい、でないとプレイがバラバラになります。一瞬の隙をつかれたら更に点差は広がる恐れが…」
「ふぅん、なるほどね」
 イリーナが戻ってくる。
「イリーナ、選手交代だ…アレスを戻せ」
「は、はい。わかりました」
 イリーナが交代を告げるとブザーが鳴る。
「選手交代です!白9番アレス選手に代わり、白23番セフィロス選手!」
 会場にいる新羅側の応援席から歓声があがる。
 今まで聞いた事もないような凄さだ。
「セフィロス…いいな?」
「ふん」
 セフィロスは顔色も変えずにコートへと入っていった。
「まだあいつを使う状況じゃねぇだろ」
 タバコをふかしながら椅子にもたれかかっている…監督って名ばかりの男だ。
 実際は俺が選手に指示を出している。
「……」
「けっ、新羅の社長は自己中でいけねぇや」
「何か言ったか!?シド」
「…なんでもねぇこって」


【新羅特設体育館】ザックス
 あっちぃ〜〜〜〜〜。
 なんだか久し振りにこんなに動いてるな〜。
 あいつらの力も相当なものだな…ま、俺がいるんだ。これからが勝負さ。
ブーーーーーーー
「選手交代です!白9番アレス選手に代わり、白23番セフィロス選手!」
 あ?セフィロス!?
「あのおっさんが出てくるのかよ…早ぇな…大体そんなに点差開いてねぇだろ?」
 俺は汗をぬぐう。
「ザックス…」
「ん?どした?クラウド」
「さっきからいつものプレイができてないよ、それに肩に力が入りすぎてる」
「そうか?」
 おれは自分の肩をもんでみる。
「いつものプレイができてないのは…エアリスちゃんが俺のプレイを見に来てくれてっからだろうな♪」
 俺が冗談ぽく言うと、クラウドは少し拗ねた顔をする。
「お?妬いてんの?クラウド!か〜〜〜っ、可愛いねぇ」
「だ、誰が!!」
 ほんのり赤くなるクラウド。
「いやぁ嬉しいぜ〜〜俺はそんな事ねぇからよ♪クラウド一筋だぜ」
「馬鹿かっ!!誰がお前なんかに!!」
 からかい甲斐のあるやつ〜〜、面白ぇ〜〜。
ゴスッ
 頭上に痛みを覚える。
「てっ」
 気がつくとおっさんが俺の背後に立って、俺にゲンコをかましてた。
「何すんだよ、おっさん」
「試合中に何やってんだ、お前等」
 ちっ、うっせぇな…歳だからフルタイム出場できないクセに…
「言っておくが俺がスタメンで出ないのは、俺様がこのチームの最終武器だからだ」
「セフィロス…これから…だよね?」
 すがるような目で訴えるクラウド。
 何だよ、俺のときと全然態度が違うじゃねぇか。
「あぁ、俺が来たんだ。間違いない」
 自信満々のおっさんの台詞。
 このおっさんの自信にチームの雰囲気が影響されてきた。
「ザックス!何を考えているの?行くわよ」
 もうすぐ前半が終わる…ここで離される訳にゃいかねぇよな。
「よっしゃ、行くか!!」
 俺の言葉に笑顔で答えるティファ。かっわいいよな〜〜〜、クラウドの幼なじみってんだからな〜〜〜羨ましいヤツ。


【新羅特設体育館】ティファ
 セフィロスの加入はとっても心強かった。
 あたしは男達を相手に色々とフェイントを駆使して点数を稼いだけど、あの大男二人にリバウンドを取られては、さすがにこれ以上対抗しきれなかった。
 ジャンプ力だけではどうも限界があるなぁ…
 そっと汗をぬぐう。
「行くぞ…いいな」
 速攻でボールを出し、敵陣へと攻め込む。
 7番(ゼル)が声を出して向かってきた。
「これ以上簡単に!」
 そんな彼をフェイクにかける事は簡単だった。
 少し右を見る…セフィロスの姿が見える…
 そこであたしは左にいたレノへとボールを渡す。
「んがっ☆」
 甘い!さっきから似たような事でやられているのに気がつかないのかしら??
 レノは素早いドリブルで左側から敵陣へと入ろうと試みるが、相手4番のディフェンスに右往左往する。
「しょうがないぞ……と」
 レノはその場からシュートの体制を取った…瞬間に逆サイドにいるクラウドへとパスしていた。
 クラウドはそのままセフィロスへと素早いパス。
 もう、さっきから消極的なんだから、クラウドってば。
 実力は十分あるのに…
 パスをもらったセフィロスはそのままドリブルしてシュートに…しかし、その前に立ち塞がるふたつの壁。
 そこで空中に飛んでいるいる間にセフィロスはザックスにすっとバックビハインドパスをする。
「なっ!!!!!」
「後ろにも目ぇ付いてるんかいな!?」
 相手チームのベンチから声が聞こえる。
 そしてザックスはいとも簡単にダンクを決めた。
 まるでパスが来るのを知っていたかのように…
 仲が良いのか悪いのか…も、いつもの事だけどもこの二人凄いわね。
「おっしゃあ!まず2点!!!!」
 心地よい元気なザックスの声が響く。
「落ち着いて返すもんよ、まだ大丈夫だもんよ」
 相手チームの壁の一人、もんよ君がチームを元気付ける。
 そして、もんよ君のパスが7番(ゼル)へ渡される瞬間に、セフィロスが間に入ってパスをカット。
 あっという間にダンクでゴールを決めた。
「セフィロス!!!」
「これで4点……」
「おっさん…」
 ザックスが呆れる。
「時間が無いぞ、審判が時計を見た。いいか、取られた分取り戻す」
 そう言うセフィロスに焦りの表情は全く無い。
 なんて神経……


【新羅特設体育館】サイファー
 (怒!)(怒!)(怒!)
 あんの野郎!いい根性してるじゃねぇか!!
 あそこまで前に出てきやがって!!完全に俺たちをナメてやがる!!
 しかも前半ももう終わるっていうのに『取られた分取り戻す』だとぉぉぉぉぉ!!!?!?!?!!!!!
 点差はあと7点。
 もう少ししか時間も無いはずだ…それなのに…野郎。

 ド派手な頭の兄ちゃんの3ポイントが外れ、リバウンドを取りに俺はジャンプした。
 そこにヤツ、セフィロスってのもジャンプする。
 しかしボールは簡単にセフィロスの手の中に収まる。
 畜生!そう簡単に何度もやられるか!!

 俺はできるだけセフィロスのマークに付き、常にフェイントを予想してヤツの動きに集中した。
 やはりドリブルと見せかけて…か、俺様にそれはもう通用しねぇ!
 俺の手がボールを捉える。
 ヤツのパスを奪った。
「!」
「へ、悪いな」
 俺はすぐにペイントゾーンの外にいる奴にパスをする。(*ペイントゾーン:ゴール下の台形の形の場所)
「んなっ!!!」
 俺のパスした相手は…なんとも不本意な事に……スコールだった。
「きゃぁぁぁぁぁあああああ!!すこーるぅぅぅぅぅ(>▽<)」
 おんな共の黄色い歓声が耳につく。
 スコールはドリブルし、速攻で敵陣へと突っ込む。
 あんの野郎!一人だけ目立とうとしやがって!!
 しかし一人だけスコールへとマークがついていた。
 あいつは……ザックスか!?
 スコールはゴール近くまで行くと、ジャンプしてシュート体制にはいる。
「ダメだ!読まれて…」
 スコールのふりあげたボールの前にザックスの手がブロックとなって現れた。
「くっ」
バシッ!
「ナイスブロック!!ザックス」
 ねーちゃんがすぐさまボールを拾う。
 だから言ったのに…見え見えなんだ…馬鹿め。
「行って!セフィロス」
 何ィ!?
 セフィロスへの鋭いパスが渡り、ヤツはあっという間にチキン野朗をかわすと3ポイントシュートをいとも簡単に決めた。
ブーーーーーーーーーーーーー
 前半終了のブザーが鳴る。


【新羅特設会場】ゼル
「か〜〜〜〜、暑いあつい」
 オレは思い切り水分の補給をした。
 ん、なかなかウメえな!このドリンク。
「んまいっ!生き返るぜ」
「せやろ?セルフィ様が作った特製ドリンクや、後半戦もこの調子で頑張り〜」
「あ…あれ??セフィ…この輪切りのレモン…くっついちゃってるよ〜〜(^^ゞ」
 アーヴァインがびろびろにくっついたレモンをすっぱ美味そうに食べていた。
「あっ、ごめんなさいっっ(>_<)あたしがそれを切ったの…」
「そうなんだ〜〜、まぁいいよ、僕レモン好きだし〜」
 にこにこと笑顔で答えるアーヴァイン。あ〜ぁ、ムリしちゃって。
 と、その時だった。オレ達のスタンドの最前列で立ち上がり、新羅側に対して笑っている男がいた。
「くっくっくっく……ルーファウス新羅!貴様がこの私を海洋探査人工島に配属を変えるからこんなSeeDという輩にいいようにやられるのだ!!」
 何故かマイクを持って演説しだしている。
 姿は医者??いや…科学者なのか?なんだか妖しいいでたちだ。
「何だ?あの野郎……」
 SeeDという輩と言われて少し頭にきているオレら。
 新羅側のメンツがバラム側へやってくる。
 もちろんあの怪しげな男のいるスタンド席に向かって…だ。
 オレたちも気になって傍まで行った。
「悪いな、あいつ最近までオレ達の医務だったんだ、メンタルトレーニングって奴を色々とね…」
 ザックスが話し出す。
「あれ?でも…」
「あぁ、シドはあいつ…宝条が抜けた後入った。そしたらチームがまとまりを見せてよ、なんだか前に比べて評判も成績もいいから宝条は何かっていうと嫌味を言いにワザワザ来るんだ」
「すいません…」
 クラウドが謝る。
「いや、そんな事は…」
 色々と事情があんだな。
「私の作った薬を使えば今以上のチームになっただろうに…」
「馬〜〜〜〜鹿、お前の作った変な薬のせいで化け物になんてなりたかね〜んだよ!」
 ザックスがあおる。中指立ててるし…おいおい…
「な…何ぃ〜〜〜??ザックス…貴様!!!」
「へん、悔しかったら証明してみせなっ!!」
 アッカンベーをして更にあおるザックス。
 宝条の手がプルプルと震えていた。
「ふっ、では…証明してみせよう!」
 そう言うと手近にいた生徒におもむろに注射する。
「なっ!!??」
「何しやがんだ!!!テメエ!」
「宝条!!!!」
「何て事…」
 注射を受けた生徒は突然苦しみだし、異形の魔物へと変化をとげた。
「くっくっく、どうだ??素晴らしいだろう?彼もSeeDやソルジャー以上の力を得てなかなかご満悦のようだ。どうかね?こいつと戦ってみるかね?ひゃ〜〜っはっはっはっは!」
 あの野郎!!許さねぇぇぇぇ!!!!
 俺たちはおのずと自分達の武器を持ち構えた。
 カッコウはバスケのユニフォームのまんまだが、気にしちゃいねぇ。
 しかし相手が悪い。よりによってバラムの生徒だ…何とかしてあいつを救う方法はないのか?
「スコール…一体どうしたら」
「やむをえん、あの生徒が俺達の敵になると言うのなら…殺るしか方法は無い」
「んなアホな!だってバラムの生徒なんやで?」
 セルフィがヌンチャク片手にスコールの胸倉をつかむ。
「スコール!あんたな、それでも委員長やった男かいな!?少しでも活路をみいだそうとしないん?」
「こいつはこの程度だ!」
 ドンと前に出た男…サイファーの馬鹿だ。
「サイファー!あんたに策があるんやね?」
 サイファーは珍しくニヤリと笑うと、
「奴は俺様のリストによると…」
 でた(−−;; リスト…
「あいつの名前はイツモ・ナクゾウ。万年落ちこぼれクラスの体力無し、学力低しの極めてガーデンに似つかわしくないキャラだ!俺のリストでもあいつは橋にも棒にもかからないほっとけ組だぞ……いいんじゃねぇか?殺っても…」
スパコーン!!
 いつの間に持ってたのか、セルフィがハリセンを持って立っている。
 どうやらそのハリセンでサイファーの後頭部を叩いたようだ。
 サイファーの後頭部から煙が……ぷぷぷっ。
 前のめりで無様に倒れているサイファーにはかまわずに、俺たちの策としては…
 恐らく宝条自身があの薬の解毒方法を知っている。
 となると、生徒@モンスターにはしばらくおとなしくしてもらうようにスリプルか気絶でもさせておく必要がある。
「んじゃあまずは…あの生徒からだな」
「おい、そっちの4番!俺たちは宝条を締め上げる」
 スコールはザックスにそう言われるとうなずき、ガンブレードを構えた。


【新羅特設体育館】アーヴァイン
 彼≠ヘとてつもなく巨大なモンスターへと変貌を遂げた。
 本当に元に戻れるのかな〜?
 僕は一抹の不安を隠せずにいた。
「何している、アーヴァイン」
 僕のわずかな迷いが照準のミスへとつながる。
 彼≠ヘ肩へ宝条を乗せると、スタンドからコートへ降りてきた。
「早い!」
「あぁ、相当しめてかからないといけないらしい…」
 バスケットで結構体力を消耗していた僕たちは、彼≠フ動きについていくのに精一杯だった。
「ふん、SeeDが何人かかろうと同じだ…私が作った最強の生物兵器には勝てん」
 宝条のメガネが怪しく光る。
 うぅ、こいつ近くでみると益々怪しい〜〜〜。
「宝条!お前は俺たちが相手だ!!」
 ザックスが馬鹿でかいブレードを持って現れた。
 あれ?いつの間に着替えたんだ??
「ザックス!着替えに行ってる場合じゃないだろ!?」
 隣でクラウドが呆れながら言う。
 着替えに行っていたのか…早いな〜〜。
「行くぞ」
 スコールがまず彼≠ヨ向かっていった。
 リノアがサポートに着く。
「光よ、彼の者を守りし盾となり外部からの力を軽減せよ!」
 リノアの声が響く、
「プロテス!!」
 スコールの前方に光輝く壁が現れる。
 スコールのガンブレードが彼≠ノマトモに当たった。
「!?」
 当たった事は当たったんだけど…
 ガンブレードは彼の体にぐにゃりと吸い込まれていく。
 反射的にスコールはガンブレードを引き抜いた。
「どうしたんだよ、スコール!」
 ゼルが隣で叫ぶ。
「な…こいつ…」
「オレが行くぜ!!」
 勢い良くゼルがかかっていく。
「止せ!」
 スコールの声が響く。
 その瞬間彼≠フ腕が信じられない事にスコールの持つガンブレードへと変化した。
 そのガンブレードもどきはゼルの顔へと勢い良よく振り上げられ…!!
《ガツッ》
 ゼルは目の前に来たガンブレードを両手で受け止める。
「な…なんだ!?こいつ…何でガンブレードを持ってんだ!?」
「スコールとサイファーだけやなかったんかいな?」
 その時、後ろから声が聞こえた。
「んだとぉ?俺様とスコール以外にガンブレードを使うだぁ?」
「サイファー…ありゃ…生きて…じゃなくって……」
 ありゃりゃ…起きてきちゃたよ〜。
 ゼルは受け止めたブレードを振り払う。その時、キスティスからの魔法が…
「今ひとたび彼の(かの)者に秘めたる力を引き出し給え…ゼル!!いくわよ!」
「おぉ!!」
「オーラ!」
 ゼルの体に金色のオーラが現れる。
 とたんにゼルは彼≠ヨ向かって鋭いパンチをお見舞いする。
「ぐっ…」
 一応効いているみたいだ。
 続いて頭突き…おぉ、効果有り。…そして〜〜??次はメテオストライクのようで、彼≠掴んだ。
 しかし、次の瞬間に彼≠フ両手がゼルを捉える。
「うをっ!な、なんだ??」
 なんだかすごくヤバイみたい〜〜。
 ゼルの体がまるで彼≠ノ吸収されるよう。
 スコールがゼルへ手を伸ばし、ゼルを彼≠ゥら引き離そうとする。
「くっ…ゼル!!」
「畜生っっ」
 やっとの事でゼルは助け出された。
 次の瞬間、僕たちはとんでもない光景を目にする。


【新羅特設体育館】クラウド
「宝条!あの生徒にうった薬の解毒方法を教えろ!!」
 ザックスが宝条さんにつかみかかる。
「ひひひひ……奴は既に人ではない。言っただろう?彼もああなって喜んでいるのだ、君たちも見習いたまえ…」
 自分の置かれた立場がわかっていない…許せない宝条……あんただけは…人間を人間扱いしないあんたは…
 体の奥底から力が溢れてくる。
 俺はアルテマゥエポンを取り出すと、すっと宝条の首元に剣先を当てた。
「クラウド…!!」
「あるんだろう?言え…貴様も自分の命は惜しいだろ?」
「ありゃりゃ…キレちまった」
「俺が出る間も無いな」
 セフィロスの声が聞こえてきたが関係ない。
 じりじりと宝条の首に剣先を突き立てていった。
「ザックス!!貴様こいつを止めんか!?」
「あん?止めんかだぁ?」
「いや…と…止めてくれ……」
 青ざめる宝条。
「じゃあ言えよ、あいつ…あの生徒を元に戻す方法」
「ザックス…やっていいか?」
「クラウド、ちょっと待てよ…今、言うみたいだぜ」
 宝条の口が動く。
「あ?」
「…奴を元に戻すのはひとつ。奴は薬の作用でとてつもない自信を得ている。そこをつく、即ち奴をめった打ちにすれば自信が失われ……姿は元に戻るはずだ」
「なんだそりゃ」
 徐々に俺の怒りが失われていく。
 んな簡単な事…はは、おかしすぎて溜息も出ない。
「んじゃあ…やつらに任すしかねぇって事か。今は」
「そうね、勝てる…かしら?」
「ま、見物でもしようや」
 俺は武器を収めた。


【新羅特設体育館】アーヴァイン
 今ここにはゼルが二人いる…
「あぁ!?」
 ゼルを助け出したスコールは、しばらく彼≠フ様子を見ていた。
 彼≠ヘ身をかがめた後、強烈な光をだして…そしてゼルへと「変身」してしまった。
「オレが…二人??」
 ゼルに姿を変えた彼≠ヘ不敵な笑みをすると僕たちにかかってくる。
 まずは、スコールにボディブロー。そしてゼルへラッシュパンチを。
「ぐっ…」
「ちっ…くしょう!」
 ゼルは苦しそうに顔を歪める。
 相手が相手なだけにどう対応していいのか戸惑う。
「なぁ〜〜にやってんだぁ?お前等それでもSeeDか?」
 振り返ると僕等の後ろには新羅のメンバーが立っていた。
 各々の武器を所持しながら…
「手出しは無用だ!」
 そう言いながらスコールが偽ゼルへ向かって行く。
 スコールのガンブレードが偽ゼルへと向けられる。
ガツッ
 スコールのガンブレードを蹴り上げると、右手を引くと力を溜め……あれは!?
「スコール!!ヤバい!避けろぉ!!!!」
 ゼルの声が響く。
 間違いなくあの技は・・・
「なっ……」
 俺式ファイナルヘヴン…だ…!!??
「もう、見てられないっ!」
「お…おい、待てよティファ」
 新羅チームの唯一の女性プレイヤーがスコールの助っ人に入る。


【新羅特設体育館】ザックス
 あーらら、しょうがないなぁ…ま、これも彼女の性分なのかねぇ。
 俺は溜息をつく。
 クラウドが続いてティファのサポートへついた。
 まったくあいつら……
「しょうがねぇなぁ…」
 俺が動けばあっちゅうまに解決しちまうな…髪の毛をかきあげながら近くに行く。
 ティファの技が7番モドキに次々とヒットさせる。
 相手の顔が醜く歪んでいく。
「あ〜〜らら、可愛そうに…女にヤラれちゃああいつの自信もすぐに失せそうだな〜」
「徹底的に自信…なくさせてやるか」
 隣からぼそっと声が聞こえる。
 オッサンが魔法の詠唱に入った。
 何ぃ!?もしかして召喚魔法使うつもりか!?
「ちょい待てよ!ここでんな魔法使ったら…」
「大気よ。我が命を受け、媒体となる者を凍結させん……ブリザガ!」
 オッサンの体全体から身も凍る程の冷気が漂う。
 ほっ……脅かしやがって。
 あっという間に7番モドキに氷の柱が次々と打ち込まれた。
「が…は……」
 結構効いてるみたいだな。
「おっと、後は俺たちに任せてくれ」
 俺等の前に44番のユニフォームと11番のユニフォームが立ち塞がる。
「行くぜ、スナイパー野朗。俺に当てるんじゃねぇぞ」
「僕の腕を信じてくれよ〜〜、一緒にSeeD試験を合格した仲じゃないか〜〜」
 そう言いながらも11番の男はライフルを構える。
 なかなか腕か立ちそうな感じだ…
BANG!BANG!
 7番モドキの急所をめがけて弾丸が打ち込まれる。
 ぐらりと体制を崩したところへ、44番の剣…おぉ、あいつの武器なんだかすっげぇカッコいいじゃんか。
「死にくされ!この野郎っっっ!鬼斬り!!」
 いやぁ…殺したら元もこもな……
 見事なまでの太刀裁き。
 モロに相手に当たると7番モドキはぐらりと崩れ、倒れた。
「生きてるか??」
 みんなそばに駆け寄ると様子を伺う。
「う……ん…」
 そこにはガーデン制服がボロボロになったメガネ顔の生徒が倒れていた。
「戻ってる…」
「本当に・・・戻ってやがる」
「生きてるのは当然だ!俺様が手加減してやったんだからな」
 44番は得意そうに言う。
 な〜〜んだ、やっぱり手ぇ抜いてたって訳か。
 ふーん、なかなかやるな。


【新羅特設体育館】キスティス
「イリーナ、彼を救護室へ」
「わかりました」
 黒服の男数人と新羅のマネージャーが男子生徒を連れていく。
 それからは試合どころではなく、結局前半終了のまま流れ試合となったのは言うまでもない。

〜それから1週間後〜

 学園長から呼び出しを受けた。
 私は足早に学園長室へと向かう。
「失礼します」
 軽くノックをした後、中へ入る。
 中にはすでにスコールが学園長と話をしていた。
「どうしたんですか?何か……」
「あぁ、実はこのようなものが届いたんですよ」
 そう言うとホログラフメッセージを私に差し出す学園長。
 ?
 私はそれを開き、確認する。
「あ…これ……」
『こんちゃ〜、新羅バスケ部のキャプテンザックスです』
 なんとも緊張感のないメッセージの始まりだ。
「あいつらしいな…」
 スコールがぽつっと言う。
「そうね」
 私はくすくす笑った。
『そちらの生徒は大分こっちの専門病院で回復しているみたいだぜ、でよ…この前の試合だけどよ、俺たちは全然負けたなんて思ってねぇからな』
「な…」
 スコールは嫌な予感でもしているのか、表情を曇らす。
『おい、スコール!そこで溜息なんてついてんなよ!絶対俺たちが勝ってやるからな!今度はお前たちのコートで対決だ!!!』
 はぁ〜〜〜〜っ、と溜息をつくスコール。
「どうしますか?相手の挑戦…受けますか?スコールくん」
 今のところ大きな仕事は入ってないし……スコールの返事次第ね…
「あぁ、そうそう…それとですね、エスタの大統領からこの間の試合中継の時に連絡が入りまして…」
 学園長はまたホログラフメッセージを見せた。
『よぉっ!スコール!!バスケの試合見たぜ!』
 ラグナ大統領の姿を見たとたんに力が抜けた。
 バラムチームのユニフォームを着てニコニコしてるラグナ大統領。
『絶対に次の試合はオレも行くからな〜〜〜』
 スコールもウンザリ…あら??
 スコールは少し考えているみたい。どうしたのかしら?
「いいでしょう、受けます」
「す……スコール?」
「ま、たまにはいいだろう?こんなのも…」
 そう言いながら私に微笑む。
「そうね、じゃあ準備でもする?」
「そうだな、少し練習でもしてからだな」
 学園長はそんな私たちを見て、にっこり笑うと、
「では早速後日にでも返事をしておきますね」
 私たちはうなずくと、学園長室を後にした。
 ま、こんなのもあってもいいかもね……さぁてと、忙しくなりそう。
「キスティス…」
「どうしたの?スコール」
 スコールは少し考えた後に、
「いや…よろしく頼むな、マネージャー殿」
「何よ、いきなり改まって……」
「別に……ちょっとした心境の変化…かな?」
 そう言いながらスコールは歩いていく。
 さぁて、私もセルフィにお願いしてバスケチームの強化プランでも立てようかしら?



続く……のか?(作者心の声)

SeeDのお仕事 後編 完


前編          戻る