METEOR STREAM    〜Misunderstanding〜
                  
                  1                  
 まだ寒さが残る季節に彼は独り、廊下のポスターと睨めっこをしていた。
【冬季学園祭開催決定!! 日時 3月1日 AM10:00〜PM10:00
             バラムガーデン初の冬季学園祭!!みんな、来てね☆】
(…そういうイベント開催するときはSeedの任務予定を考えて欲しいものだな…)
丁度その日任務の入っていたスコールは困った表情で頭を掻いた。
(リノア…怒るだろうな…。この前のデートの誘いも任務が入ってて断ったし…)
リノアがこのイベントにスコールを誘うのは目に見えていた。
(一体どうすれば機嫌を損ねずに断れるんだ…)
リノアへのそんな断り方は存在しないに等しかった。
「あ、スコール!!」
聞き覚えのあるその声にスコールは慌てふためいた。
「ど…どうした?リノア」
(ああ、なんでこんな丁度よくリノアが来るんだ)
「うん、あのね…」
(ああ、くそっ!!理由なんか一欠片も思いつかない)
「冬季学園祭なんだけど、一緒に行かない?」
(やっぱり…そうか)
覚悟はしていたものの、言い出されると答えにくいものだ。
「この前デート出来なかったし、ね?」
リノアの目はスコールに向かって『行くよね!!?』と脅し半分で訴えかけていた。
「あ…その…」
(…どうしろって言うんだ)
スコールの額からは冷や汗が流れていた。
「す…すまない!!その日は任務が入ってて……」
スコールは両手を合わせて『勘弁してくれ』と拝んでいた。
「……た?」
「え?」
リノアの僅かな声を聞き取れず、スコールは首を傾げた。
「またなの!?また任務!!?そーやって私の事避けてるの?私より任務の方が大事なんだ。ふーん、そっか。そーですか、わかりました。もういいよーだ!!」
「おい、リノア――」
スコールの呼び掛けも虚しくリノアは一目散に走り去った。
(…やっぱり、怒ったか)
はあ、と深くため息を吐き、スコールは壁に寄りかかった。リノアの走り去る足音はもう既に聞こえ無くなっていた。
 
                  2                    
カツカツと怒りの足音を立てていたのは、黒髪の少女リノアだった。
(もう!!なんなのよスコールは!!!最近任務任務で誘っても断るばっかりだし!)
リノアの怒りはまさに頂点に達していた。
「よう、リノア」
「あ、サイファー、どうしたの?」
リノアの目の前に立っていたのはスコールをライバル視している青年サイファーだった。
「いや、ただ声を掛けただけなんだけどな…」
「ああそう」
(そんな事だったら声掛け無いでよね。学園祭に誘う…とかで声掛けるでしょ、フツー……学園祭に誘う!?…そーだ良いこと思いついちゃった〜)
「あのさ、サイファー?」
「ああ?」
不思議そうな表情でサイファーはリノアの顔を覗いた。
「冬季学園祭、一緒に行かない?私暇だし、ね?」
「え?ああ。俺は別に構わないが…スコールと行くんじゃないのか?俺はてっきり…」
「いいの!!スコールなんかもう知らないんだから!!」
「あ〜はいはい」
サイファーの呆れた表情からは『なんだ、喧嘩したのか』という言葉が伺えた。
「じゃあ3月1日、10時ちょっと前迎えに来て」
「はぁ?何で俺が迎えに行くんだ?」
(こーゆートコが駄目なのよね〜。私が言わなくても率先して迎えに来てくれなきゃ。スコールだったらなーんにも言わなくても来てくれるのに…)
「…いいよ、じゃあ10時55分頃校庭で待ち合わせね」
「ああ、わかった」
サイファーは軽く頷くとそのままリノアが来た道へと歩いていった。
(…ふーんだ。スコールなんかもう知らないもんね)
リノアはサイファーの後ろ姿を見送ると再び怒りだして部屋に戻った。
 
                 3
「ったく、スコールもリノア怒らせるなんてまだまだだな」
そんな事を呟きながらサイファーは歩いていた。無意識にふっと顔を上げ、壁を眺める。
(…スコールじゃねぇか)
サイファーの目に映ったのは少々落ち込み気味の壁に寄りかかっていた青年だった。
「よぉ」
サイファーは軽く手を挙げながらスコールに声を掛けた。
「…………なんだ?」
予想通りの無愛想な反応だった。
「いや、別に大した用じゃねーんだけどよ。一応報告してやろうと思ってな」
「…大した用じゃないなら、話し掛けるな」
くっくっくっと嘲笑いながらサイファーは続けた。
「ああ、そーだな‘リノアが冬季学園祭に誘ってくれた’なーんて言う必要無いよなあ」
「……なんだと?」
これもまた予想通りのお怒りの反応。
「なに?聞きたい?だったら教えてやってもいいけどな」
「…………」
どうやらサイファーの話し方が気に入らないらしく、スコールは無愛想に突っ立ったままだった。
「さっきリノアと廊下でばったり会ってなあ、誘われたんだよ」
スコールに顔を近づけ、サイファーは嫌みを思い切り込めて力強く呟いた。
「『暇だから、冬季学園祭一緒に行かないか』ってな」
「…………」
スコールの顔は引きつっていた。
「勿論俺はオッケーしたぜ?ちょっと用事が入っていたんだが、俺はお前と違って任務より付き合いを大事にするからな」
ふふん、と再び嘲笑い、サイファーは歩き出した。すぐ後ろでスコールがドンッと壁を叩くのを確認しながら。
(いい気味だぜ、スコールさんよ)


続く


戻る。          第二章へ