貴方が眠るまで


 バラムガーデン学園長室。ティンバーでの任務を終えたスコールはいつものようにシドの所へ事後報告にきた。
 「…以上で報告終わります、学園長」
 「ご苦労様でした。では、今夜はゆっくり休んでください。明日からはゼル、セルフィと共にエスタでのモンスター 殲滅の任務があります。集合時間はラグナロクに6:00です」
 「はっ、失礼します」
 敬礼をして学園長室を後にするスコール。アルティミシアを倒して以来、バラムガーデンへの任務の以来は増える一方だ。 ゼルもアーヴァインもセルフィも、みんな毎日のようにあちこちに派遣されているし、キスティスも教官とSeeDという二足の草鞋を 履いて多忙を極めている。しかし、それにも増して忙しくなったのはスコールだ。特に、エスタやガルバディアからの依頼は しょっちゅうだ。しかも、両方ともスコールを指名してくるので断り辛い。おかげで彼は2ヶ月以上休暇無しで働き続けている。 もちろん、バラムにもほとんど帰ってこれない。今日はたまたまティンバーの任務が予定より早く終わって、運良くバラムに帰って これたのだ。

 自分の部屋に戻ってシャワーを浴びて服を着替えると、すぐにベッドに横になった。こうしてベッドで横になるのは何日ぶりだろう? このところ寝るのは決まって移動中のラグナロクのシートか列車の座席だった。そんなことを思っていると誰かが部屋のドアをノックした。
 「誰だ…」
 「わたし、リノア」
スコールはベッドから起きてドアを開けると、そこにはスコールにとってこの世で最も大切な少女の笑顔。
 「おかえり、スコール」
 「ただいま、リノア」
スコールも笑顔で答えると、そのままリノアを部屋の中に入れる。
 「ちょっと、お話ししたらすぐ帰るから」
 「別にいいよ、リノアが居たいだけ居たらいい……」
 そういうと、スコールは部屋の隅のコーヒーメーカーでコーヒーを入れ始める。リノアはベッドに腰掛けると、スコールが いなかったの間の話を始める。魔女についてイデアから教えてもらったこと、ラグナロクでセルフィと一緒にエスタのラグナの ところに遊びにいったこと、ゼルの家に遊びに行って晩ご飯をごちそうになったこと、シュウとカードで勝負して勝ったこと、 アンジェロとバラム港まで散歩にいったこと…リノアの話すたわいもない日々の出来事を、スコールはときどき相づちをうつように 頷きながら笑顔で聞きつづける。リノアが話疲れて会話が止まったところに、スコールが入れ立てのコーヒーを持ってきてリノアの横に座った。 リノアはコーヒーを一口飲むとさらに話を続ける。
 「でね、昨日はそのあとね……」
スコールは相変わらずリノアの話を黙って聞いている。
 「それで……だったの。スコールどう思う」
 「そうだな俺は……だと思う」
 「そうでしょー、やっぱりねー。それなのにね……」
こんな会話がどれくらい続いただろう。ふと、リノアがスコールの方に寄りかかってきた。 
 「どうした?リノア」
 「ちょっと眠たくなっちゃった」
 「じゃあ、横になってろ」
 「うん」
ベッドに横になったリノアにスコールは布団を掛けてやると、自分はベッドのそばに椅子を持ってきてそれに座ると、リノアの頭を優しく 撫でてやる。
 「明日もお仕事?」
 「ああ、朝いちでエスタだ」
 「じゃあ、もう少ししたらまた別々だね…。今度会えるのはいつになりそう?」
 「わからない…たぶん、また一ヶ月ぐらいは会えないかもしれない…」
 「そっか…」
 「それより、リノア寝ないのか?」
 「ううん、また一ヶ月も会えないんだったら寝てなんかいられないよ…あっ、でも任務があるならスコールこそ眠らなきゃ…」
リノアがベッドから起きあがろうとするとそれをスコールが止めた。 
 「いや、いいよ。リノアが寝るまで、俺は起きてるから」
 「だめだよー、それじゃ明日の任務つらいよぉ」
 「いいんだ、せっかくこうして二人きりの時間があるんだ、寝てたらもったいないっていったのはリノアだろ。それに、寝るんだったらリノアが先に寝なよ」
そういって、スコールはもう一度やさしくリノアの頭を撫でてやる。 
 「どうして?」
 「リノアの寝顔が見てみたい…」
リノアは少し驚いたような顔で頬を赤くして少し黙っていたが、すぐにいつもの笑顔にもどった。
 「もうっ、スコールったら…そうだ、起きてるんならなんかお話ししよう」
 「何の話がいい?」
 「夢の話」
 「夢?」
 「そう、例えば…スコール子供のころ何になりたかったの?」
 「さあ…あんまりよく覚えてないけど、お姉ちゃんを守るために強くなりたいって思ってた……」
 「ふーん、私はね、お母さんみたいな歌手になりたいって思ってたんだよ。じゃあ、ガーデンに入った頃は?」
 「一人前のシードになることだったと思う」
 「たぶん、私はそのころはティンバーを独立させることだったかな」
 「そのころにはもう”森のフクロウ”に入ってたのか?」
 「ううん。そのころはまだ家出したばっかりでティンバーの街を一人であてもなくさまよってた」
 「たいへんだったんだな……」
 「うん、でも今は仲間がいるもん、それにスコールも…」
 「じゃあ、リノアの今の夢は?」
 「今の夢はね、スコールと……」 
リノアはそこまで言うとリノアは黙ってしまった。
 「どうしたんだ?」
 「やっぱなんか言うのちょっと恥ずかしいな…スコールが言ってくれたら私も言う。スコールの今の夢は?」
 「俺か?俺の夢は……」
 「俺の夢は?」
 「俺の夢はリノアといっしょにいてお前を守ってやることかな…」
 「スコール……」
 「さあ、俺の夢は言ったぞ。リノアの夢を教えてくれよ」
 「いいよ、じゃあ耳かして」
スコールは言われたとうりリノアの口元に耳を近づける。

 「私の夢はねスコールと…して幸せな…を作ること」

小さな声でそう言うとリノアは布団を頭からかぶって寝てしまった。スコールはしばらくリノアの言葉に驚いて呆然としていた。 ふと我に返って部屋の時計を見る。すでに時計の針は5時15分を指していた。スコールはリノアを起こさないように、そっと顔の ところの布団だけをめくると、彼女の寝顔にキスをしてから、物音をたてないように静かに部屋を後にして、そのままガーデンの グラウンドに止めてあるラグナロクに向かった。
 「現在時刻5:30、少し早かったか…」
そう思いつつスコールはラグナロクの中に乗り込み、メインコンピューターの電源を入れて今日以降の任務の確認をする。エスタでのモンスター殲滅にガルバディアでの大統領代行カーウェイ氏の護衛、ティンバーでのレジスタンスの合同演習のアドバイザー、ルナティックパンドラの第7次事後調査…
 「このぶんだと、またしばらくバラムには帰ってこれそうもないな…」
コンピューターの画面を見ながらスコールはそうつぶやいた。同時にスコールはある決意をしていた。今度帰ってきたときは学園長に言って無理にでも休みをもらおう、そしてリノアの夢を叶えるために………

 予定時刻の6:00過ぎ、やっと一緒に任務に向かうゼルとセルフィがラグナロクに乗り込んできた。
 「わ〜、いいんちょ〜、はっや〜い」
 「さすが、我らが班長ってか。ん?なーんだ、こいつ寝てるぞ」
 「えっ?どれどれ、ホントだ〜。どうする、起こす?」
 「別にいいんじゃねえの?ゆっくり寝かしといてやれよ」
 「そ〜だね。よ〜し、ではエスタに向けてしゅっぱ〜つ」
ラグナロクが轟音と共にガーデンを離陸する。その音で目覚めたガーデンの寮生の部屋の窓がほぼ一斉に開く。しかし、スコールだけは離陸にも気付かず寝息を立てて気持ちよさそうに眠ったままだ。
 そして、もう一人スコールと同じように眠ったままの人物がいた。その人物は恋人の部屋のベッドで眠っている一人の少女。
少女は夢を見ていた。その日、仕事で遠くに行っていた恋人が久しぶりに帰ってくる。帰ってくるなり彼は少女に指輪を渡してこう言う「お前の夢を叶えよう」泣きながら恋人に抱きつく少女。その少女を無言で抱きしめる彼。そして、二人は幸せな生活をに手に入れる。まるで絵に描いたように幸せな夢。 2ヶ月後、この夢は現実になる……そのことを、彼女はまだ知らない。


END


 うっきゃーあーーーー(大声だしてストレス解消)ふうっ、すっきりしたっ。どーも、Kallです。
今回もスコリノ作品。というより、思いつくアイディアが全部スコリノ…(やばいぞ俺)。他にもいろいろ書きたいんだけどねぇ…アーセル、ゼルセル、アーキス、ラグレ…(ノーマルカップリング推奨サイトのハズが節操ねえな>俺)。でも、なかなかいい元ネタがない、といってもFF8に無いんじゃなくて俺が毎度モチーフにしている自分のもってるCDに。誰かいい元ネタになる曲、もしくはリクエストがあればメールください。あと、文章に対する批評も、できるだけ今後の参考にします。ところで、今回のモチーフはわかりました?なに?今回は簡単だった?そうです、みなさんのご想像どおり○○○○Qの曲です(○の中はカタカナですが、けっして○の中は”オバ”や”メロリン”や”ゲッター”ではありません。)