See You
どうしたんだろ…いつもなら僕が声をかけるとすぐに『アーヴァイン、元気〜!!』とか、
『ねぇ〜今度一緒にどっかいこ〜よ〜』っていつもの笑顔で駆け寄ってくるのに。それがここ最近、
僕が声をかけても『あっ…ごめん。ちょっと用事があるの…』と言われたり、一昨日なんか食堂で目があって微笑みかけたら、
何の反応もなく目をそらされちゃうし。なんか彼女に悪いことしたかな〜?さすがにつきあい始めて2年、倦怠期ってやつに
なったのかな?でも、スコールとリノアは僕らより長いけど相変わらず仲良いよな…?やっぱり僕になんか問題あるのかな?
『SeeDのアーヴァイン・キニアス、至急学園長室まで来てください。』
あれ?何の用事だろ学園長室って…まあいいや、行ってみたらわかるでしょう。エレベーターに乗り込んで3Fの学園長室に向かう。
彼女の変化を気にしながら…
「なんであいつ、あんなに明るぅ振る舞えるんやろ……」
もう少ししたら私らお別れなんやで。二十歳になったらシードではおれへん。そしたらガーデンから出ていかなあかんのやで。
私はトラビア帰らなあかんし、あいつはたぶんガルバディアに帰るんやろ……そしたらもう滅多に会えへんやん。これまでみたいに
休みの日に一緒に街に買い物いったり、学園祭でバンドとかもできへんのやで…。なのにあいつ、どうしてあんなに……。
「ガーデン卒業?!」
「そうよ、あなたもう二十歳でしょ。今年の3月1日をもってガーデンから出て行かなきゃいけないの」
そっか、そういや僕もう二十歳になってたんだ。キスティに言われて思い出したよ。
「あなたまだ手続きの書類出してないでしょう」
「あれ?他のみんなもう出してるの?」
「ええ、スコールはここで教師、リノアはスコールのガーデン卒業と同時にスコールと結婚して、学園長夫妻と一緒にガーデンの
経営サポート、ゼルはバラムの軍隊に入隊、私はこのままここでガーデンの教師」
へ〜、みんなちゃんと身の振り方考えてんだ〜…あれ?
「あれ?セフィは?」
「え〜っと…セルフィは…あら?彼女も書類が出てないわ。でも確か、セルフィにはトラビアガーデンで
教師になる話があったはずよ」
「えっ、セフィ、トラビアいっちゃうの?」
まじかよ、そしたらバラムとトラビアで遠距離恋愛じゃん。
「たぶんそうじゃない?そういえば、あなたにもガルバディアガーデンから教師になって欲しいって要請が来てるわよ」
「僕に?!」
「そうよ、卒業したらすぐにでもガルバディアガーデンに教師として迎えたいって」
ちょっと待ってよ〜、もし僕がガルバディアガーデンに行っちゃったら、バラムとトラビアなんて距離じゃないぜ〜。
あっ?!そうか、もしかしてそれでセフィは…
「なあ、キスティ、セフィに僕の話した?」
「え?ええ。セルフィが『アーヴァインはどうするか知ってる?』って聞いてくるから、『アーヴァインにはガルバディア
ガーデンから教師になって欲しいって話が来てるから、たぶんガルバディアに帰るんじゃない?』って言ったけど。いけなかったかしら?」
あちゃ〜、やっぱそれが原因だよ。まいったなぁ…僕もセフィと離れるのショックだけど、セフィは僕よりショックでかかっただろうな。
なにせ、僕だけじゃなくてみんなとも離ればなれになるわけだだし。それにもともと、大勢で騒いでるのが好きな性格だから…。
そうだ、こうしちゃいられないよ。
「じゃあ、あとで書いて出しておくから今日はこれでねっ!!」
「ちょ、ちょっとアーヴァイン。まだ、話は全部終わってないわよ」
僕はキスティの呼び止めを振り切ってさっさとエレベーターに乗り込むと1Fの寮に向かう。もちろん、行き先はセフィの部屋。
セフィ、部屋にいるかなぁ……
…ん?なんややかましいなぁ…ありゃ?私泣きながら寝てもうてたんかな?
「…るか〜い、セフィ」
?!アーヴァイン?私の部屋までくるやなんて、なんの用事やろ…
「いるの〜?セフィ〜?」
「い、いるよぉ」
「ちょっと開けてよ。話がしたいんだ」
えっ、まずいでぇ〜。泣きながら寝てもうたから目ぇ真っ赤やのにぃ。こんなんアーヴァインに見せられへん。
「ちょ、ちょっと待ってて部屋の中片づけるから〜」
と、とにかく、目薬さして、アイスノンで冷やせば……よっしゃ、これぐらいなら大丈夫やろ。あとは笑顔…オッケー。深呼吸を一つしてドアを開ける。
「私になんか用事〜」
平常心や平常心。動揺してるの悟られたらあかんで。
「いや、最近セフィが元気なさそうだったからさ…」
「そう?私いつもどうり元気だよぉ〜」
「でもさあ、いつもみたいに僕が話しかけても素っ気なかったじゃん」
「ああ、あれはちょっと考え事してたんだよ〜」
よっしゃ、なんとかばれてないみたいやでぇ…この調子や。
「考え事ってガーデン卒業後の身の振り方のことかい?」
「えっ?!」
「さっき、キスティに学園長室に呼び出されて聞いたよ。セフィがトラビアに行くかもしれないって」
「そ、それがどないした言う…」
しもたぁ、トラビア弁がでてもうた…
「やっぱり、セフィ興奮したり動揺するとトラビア弁になるもんね。ん?!もしかしてさっきも泣いてたのかい?」
「な、泣いてなんかあらへんで」
「じゃあ、そこにある目薬とアイスノンはなんだい?」
あかん、もうばればれやんか……
「僕がガルバディアガーデンに誘われているのも聞いたんだろ」
「………」
「僕やみんなと離れるのがつらくて落ち込んでたんだろ」
「だ、だって、トラビアに行ってしもたらもう滅多に会えへんのやでっ!!」
「確かにそうだよね。トラビアとガルバディアじゃ、かなり離れてるからね」
な、なんやアーヴァイン、ひょーじょーひとつ変えんと真面目な顔して。もしかして、もう私のことなんとも思うてないんか?
「でも、セフィもわかってたろ、いつかはみんな離ればなれになってしまうって」
「せやけど…せやけど、私、嫌や!!もっとみんなと一緒にいたい、もっとみんなでいろんなことしたい!!
もっとアーヴァインと一緒に……」
涙が止まらへん…みんなと、アーヴァインと離れるなんて嫌や……。流れる涙をこらえようと目を瞑った瞬間、いきなりアーヴァインに抱きしめられた。
「…でもね、セフィ。離ればなれになっても僕やみんなの気持ちが消える訳じゃない。それがあれば離れていてもみんな仲間だし、
僕だって……ね?!」
「アーヴァイン……」
「なんだい?」
「しばらく、このままにしてんか……」
それから、卒業までの間、僕らは残りのわずかな時間を惜しむかのようにいろいろな思い出を作った。
先週もイデアの家の花畑にみんなでピクニックにいった。そのときの写真が現像されて今僕の手の中にある。
いくつかの写真のなかにはいつものセフィの笑顔……。
「僕だってずっとセフィと一緒にいたいんだよ…でも…」
カレンダーに目をやる。明日の日付には赤い丸印。
「でも、明日にはもう……」
これ以上写真を見てるのがつらい。けど、目を閉じるとこれまでのセフィとの数え切れない記憶が彼女の面影を運んでくる。
自然に涙がこぼれてくる。拭っても拭っても…。でも、明日泣くよりはいいかもしれない。セフィにさよならを言うときに、
あふれる涙は見せたくない。今のうちに泣いておこう……
「…では、みなさんの一層のご活躍を祈ってます」
最後の学園長の話。今日、僕らはガーデンを巣立つ。明日から始まる迷路を前にして、また仲間やセフィとのシーンを
思い出してしまった。やばい、昨日あんだけ泣いておいたのに……。そっと式を抜け出して自分の部屋に戻る。と、開けっ放していた窓
から春の風が入ってきている。机の上に置いていた僕のアルバムが風でめくれている……。そうだ、セフィにも……。僕は、アルバムの
写真のネガと財布をポケットにねじ込むと急いでバラムの街の写真屋に急いだ。
「ほな、みんな元気でな」
ついにこのときが来たんやな。トラビアが一番遠いから一足先に私はバラム駅でみんなに見送られて…あれ?アーヴァインは…
「リノア、アーヴァインは……」
「あれ?式の間はいたのに…探してこようか?」
「あっ、べつにええねん。これ乗り過ごしたら今日中にトラビア帰れへんし…」
それに、今、アーヴァインにあったらみんなの前で泣いてしまいそうや。せっかく式の間我慢しといたのに…
「それじゃ…ほんまにお別れやな…」
「毎日メール書くからね」
「ありがと、リノア。私も返事書くよ」
『列車が発車します。危険ですから白線の内側までお下がりください。』
もう列車が出る時間や。みんな、バイバイ…
「ちょーっとまったぁー」
ふぅ…何とか間に合った。
「セルフィ、これ」
僕はセルフィに一冊のアルバムを渡す。
「寂しいときとかさ、これ見て元気出してよ。そのうち、きっとトラビアまで遊びに行くから」
「ありがと、大事にする…」
「See You Agein,Selphie.」
「See You Agein,Irvine.」
END
ちーっす。
Kallでおじゃる(爆)。どうですか?初のアーヴァイン×セルフィ。卒業を境に遠距離恋愛になっちゃう二人。
ちょっと気が早いネタ(笑)?そのうえどうもオチてないような気も…ところで、話は変わるけどKallは卒業式に
はろくな思い出がない。小学校の時は友人と女の子が何人泣くか賭をしてみごとにはずして金を払い、中学の時はその
当時好きな子に告白しようとしてタイミングを逃して失敗、高校の時は卒業式の直後カラオケに行った帰りに交通事故に
あって自転車を廃車に…だからこういう卒業式って書いててうらやましかったりも^^;ちなみに今回のモチーフ曲は
またまた解散した漢字で書ける某ロックバンド。すでにそのバンドの曲だけでこれまで3作品。ずいぶんお世話に
なってるなぁ…ってことで次回作も期待してちょ。そんじゃねー。
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