涙の理由(わけ)


 肌にまとわりつくような蒸し暑さで目が覚めた。
 「何時だ……」
ベッドの横の時計はまだ午後4時半を回ったばかり。俺の隣ではリノアが小さな寝息を立てて眠っている。 起こさないようにそっとベッドから降りる。部屋の空気を入れ換えようと窓を開けると、入ってきたのは爽やかな風ではなく、 部屋の中よりも蒸し暑い空気。どうやら寝ている間に夕立が降ったらしい。
 「?!な…」
ふと自分の頬をぬらす涙に気付いた。雨上がりの淀んだ空気の微熱……あの夏の日の午後と同じ感触が俺に昔のことを思い出させる。 エルオーネがいなくなった日の悲劇を……

 「僕、エルオーネって女の子知らないかな?」
あの日、いつものように一人で遊んでいた俺は、不思議な服を着た男に声を掛けられた。
 「エルおねえちゃんになんのようだ!!」
子供ながらに不信に思った俺は、男を睨み付けて言い返した。
 「君、エルオーネの弟なのかい?よかった、おじちゃんはね、君たちのママのレインさんの親戚に頼まれて、エルオーネを迎えに来たんだよ」
 「レイン?」
物心つくまえに死んでいた母の記憶が俺にあるわけが無かったが、レインという名前はエルオーネがときどき口にしていたのを覚えていた。
 「そうだよ、で、エルオーネはどこだい?」
 「……たぶん、かいがんにいる」
 「海岸だね…ありがとう」
その男は俺の頭をなでると、海岸の方へ歩いていった。その日の夕方、エルオーネが帰ってこないことでイデアの家は大騒ぎになった。 みんなであたりを探したがどこにもいなかった。その夜、”きっとエルおねえちゃんはあのおじさんにつれていかれちゃったんだ。 ぼくがエルおねえちゃんのいるところをおしえなきゃよかった…”と過ぎてから気付いた自らの過ちに涙した。

 こうして、俺の前からエルオーネは姿を消した。それからしばらくの間、俺は朝目が覚めるといつも泣いていた。エルオーネが居なく なった夢を見ていたのか?それともエルオーネと一緒にいた日々の夢をみていたのか?そのときの俺にはわからなかったが、今思えば それはたぶん、俺にとって辛い方の夢を見ていたんだろう。でも、夢は起きたら忘れていたからまだよかった。現実は、もっと辛かった。 エルオーネを失い、人を信じる事が出来なくなった俺は、それ以来前にも増して他人に対し防壁を張った。誰かを分かり合うこと、 ましてや愛するなんて事からは逃げ続けていた。そう、あの日…彼女と出会うまでは……。彼女と…リノアと出会って以来、俺は変わり 続けた。心のどこかで信じることを怖がって、傷つくのが怖くて一人で強がっているしかできなかった俺にも、くじけそうなとき 思い出せるものができた……

 「ふわ〜あ、あっ、おハロー、スコール。もう起きてたんだぁ」
 「ああ、ちょっとな…」
 「あ〜、寝てる間に夕立があったんだ〜。涼しいね〜!!」
 「えっ?!」
気付かないうちに蒸し暑かった空気は涼しいそよ風に変わっていた。ん?
 「おい、リノア泣いてたのか?」
 「あり?」
俺に言われて気が付いたのか頬についた涙の後を拭う。
 「う〜ん、きっとおもしろい夢見てたからだよ」
 「夢?」
 「うん、スコールやアーヴァインやセルフィ、ゼルにキスティス、他にもサイファーや風神と雷神もいたかな? あ、あとシュウやラグナさんも…他には…う〜ん、まあ、とにかくみんなで大さわぎしてた夢。カラオケいったり ピクニックいったり…それ以上は覚えてないけど、す〜ごく楽しかったんだっ!!ほら、笑いすぎると涙出るでしょ。ねっ?」
そうか…そう言う考え方もあるな……
 「今日は夕食、どっか食べに行くか?」
 「えっ、本当?!もしかしてスコールのおごり?」
 「しっかりしてるな…」
 「へへっ、ダメ?」
 「……わかったよ。早く準備してこい」
 「やったー、すぐ準備してくるね!!」
リノアはうれしそうに自分の部屋に帰っていった。その後ろ姿を見送る俺を、窓から差し込む夕日が静かに照らしていた


END


どうもKallです。
最初の方で「何処がスコリノだてめ〜!!」と思われたかた、どうもすみません。それにしても相も変わらず駄文 (執筆時間3時間(核爆)は”やばやばや〜ん”byセルフィ流トラビア弁)ですね〜。もっと修行しよう(^ ^;。 ところで、これまでにどんなふうな変わった夢見たことがあります?Kallがこれまで見たので一番変わってるのは、 滝の上からゴム無しバンジージャンプする夢見たことがある…気分はラルクの”DIVE TO BLUE”のプロモで ビルの上から飛び降りてる人みたい(←それ、どんな気分なんだ?)。なんかわけわからんあとがきになっちまった… っつーことで、あとがきはこのへんでおしまい。