クリスマスプレゼント
今日はクリスマスイブ。ここバラムの街もクリスマス一色。どこからともなく聞こえてくるクリスマスソング、
商店街の店先には呼び込みのサンタクロース、ショーウインドにはクリスマスツリー、そして、街を歩く人々はみな幸せそうな笑顔。
そんななかでただ1人、浮かない顔をしてホテルのバーのカウンターでたたずむ青年、スコール・レオンハート。
「遅い…・」
スコールは腕時計を見ながらそう呟くとポケットから携帯電話を取り出してリダイヤルボタンを押す。5・6回呼び出し音がしたあと
聞こえてきたのは留守番電話サービスの案内だった。
「リノアのやつ…自分で呼び出しといてなにやってるんだ?」
諦めて電話を切る。と、後ろに人の気配を感じたスコールはとっさに身構えて振り返った。
「誰だ?」
そこに立っていたのは季節柄、このところ街でよく見かけるサンタクロース。ただ、帽子を目深にかぶっていて顔がわからない。
「スコール・レオンハートさんですね…クリスマスプレゼントです」
そういうと、そのサンタは一通の便箋を取りだしてスコールに手渡し、さっさとバーから出ていった。
「クリスマスプレゼントだと?」
不思議に思いながらも便箋を開けるとメモが一枚入っていた。それはワープロで打たれた漢字にカタカナ交じりの文章。
「ん?キョーハク状?スコール・レオンハート様。キ・ミ・ノ・彼女・ハ・預・カ・ッ・タ。彼女・ハ・キ・ミ・ノ・登場・ヲ・
待・チ・ワ・ビ・テ・イ・ル・ゾ……君の彼女は預かった。彼女は君の登場を待ちわびているぞ?!」
その瞬間、スコールの脳裏をよぎったのはどこかに連れ去られてロープで縛られているリノアの姿。
「くそっ!!どこのどいつだ!!ん?」
手紙を丸めて捨てようとしたスコールはそれに続きがあるのに気付いた。
「ヒント…庭ノ主二会ッテ一番欲シイ物ヲ手ニ入レロ…庭の主だと…庭…庭?!ガーデンか?!」
言うが早いかスコールはすでにバーを飛び出してバラムガーデンに向かって駆けだしていった。
「おや?スコール君どうしたんです?」
「あれ?いいんちょ〜だ〜」
「おやおや、君もパーティーに参加しに来たのか〜い?」
スコールが学園長室に駆け込んだ時、そこでは学園長夫妻とアーヴァイン、セルフィ、キスティス、ゼルの4人が
クリスマスパーティーの真っ最中だった。
「そうそう、スコール君、君にもクリスマスプレゼントをあげましょう。どれでもいいですよ。好きな物を持っていってください」
そう言うと学園長は両手いっぱいのプレゼントの包みをスコールの目の前に持ってきた。
「……どれでも…」
「そうです。どれでもいいですよ」
最新式のデジタルカメラ、カードゲームのレアカード、有給休暇一か月分を確約した書類。どれも、スコールが喉から手が出るほど欲しいものばかり。
スコールがプレゼントに手を伸ばそうとしたそのとき、さっきのキョーハク状とリノアの顔が思い浮かんだ。
「……一番欲しい物を手に入れろ」
「ん?どうしました?気に入りませんか?」
「いえ……それより学園長。リノアが何処にいるか知りませんか?」
一瞬、学園長の表情が固まる。が、すぐにいつもの笑顔に戻ると
「は?リ、リノアさんですか…今日は見てませんが…」
素っ気なく答えるがその言葉には明らかに動揺が見え隠れしている。何か知っている……そう直感で判断したスコールは学園長に詰め寄った。
「俺はパーティーに来たんじゃないしプレゼントをもらいに来たんでもない。それより、リノアの居場所知ってるんなら隠さずに教えてください」
「……よく言いましたね。リノアさんはここにいますよ」
学園長が取りだしたのは小さなメモ用紙。スコールはそれを受け取るとさっさと学園長室から出ていってしまった。
「ふぅ〜、あとはお二人のご自由にですか…」
「学園長ご苦労様です」
学園長にワインの入ったグラスを差し出すキスティス。
「ふふふっ、どんなに頼まれても二度とこんなことはしませんからね」
「わかってますよ〜。ね、セフィ」
「そらもちろん。二度とこんなんこと頼みませんよ〜。ちゃんとリノアにも言い聞かしとくさかい、安心してんか学園長。それにしても、
スコールや。普段はクールやのに、相変わらずリノアの事になるとめっちゃアツイやつやなぁ」
メモを手にしたスコールが向かったのは、さっきまでいたバラムのホテル。ホテルに入るなりまっすぐフロントに行き
ホテルの従業員に自分の名前を告げる。
「すいません…スコール・レオンハートですけど…」
「はい、スコール様ですね。お連れ様が303号室でお待ちになっております」
すぐにエレベーターに乗り込んで3階のボタンを押す。
「…何考えてんだ、リノア…」
改めて学園長からもらったメモにもう一度目をやる。メモはさっきの手紙と一緒で漢字にカタカナまじりで
『スコールヘ、一番欲シイ物ハ見ツカッタ? バラムノホテルデ名ヲナノレ☆』と書かれていた。ただし、今度は
ワープロ打ちじゃなくてリノアの字で。エレベーターを降りて303号室に向かうスコール。
「ここか…」
ドアを軽くノックする。返辞は…ない。ドアノブに手を掛ける。と、ドアに鍵がかかっていなかったのか
なんの抵抗もなくドアが開いた。
「おい…いるのかリノア?」
スコールが開いたドアの隙間から部屋の中をそっとのぞき込むと…
「メリークリスマス!!」
というリノアの声と同時にパンッというクラッカーの音。
「……」
そこにいたのはシード就任パーティーの時に来ていた白のワンピース姿で、髪の毛をリボンで束ねたリノア。
「こっち来てスコール」
リノアに手を引かれて部屋の奥へ進んでいく。どうやらこの部屋はこのホテルのスイートルームらしい。窓からは
バラムの夜景が一望できる。テーブルの上には豪華な料理、そして大きなダブルベッドが一つ。
「みてみて〜、お酒と〜、料理と……クリスマスプレゼント」
リノアはそっとスコールの手を自分の頬に当てる。
「リノア…」
「リボン…ほどいて」
スコールがリノアの髪の毛を束ねているリボンをほどく。同時に唇に軽いキス。
「ねぇ、びっくりした?」
「ん?」
「キョーハク状」
「ああ…」
「だって、スコールの気持ち確かめたかったんだもん。スコールまだ私にはっきり『好き』
って言ってくれてなかったから…ごめんね」
髪を掻き上げて耳にかけながら、潤んだ瞳でスコールを見つめるリノア。その仕草とリノアの目を
見ているうちに、スコールの欲望を押さえていた理性は吹き飛んでいた。
「リノア…好きだっ、俺はお前のことが好きだぁ〜!!」
そのまま、リノアをベッドに押し倒すスコール。そして……
翌朝、ベッドには寄り添うスコールとリノアの姿。リノアはスコールに腕枕をしてもらって幸せそうだ。
「そういえば俺、あんたにプレゼントしてないけど、あんた何が欲しい?」
「ん?あたしね〜コドモが欲しいなぁ☆」
「?!」
スコールの顔から血の気が引いていく。
「それでね、早く授業参観とかしてみたいんだ〜、それで『○○ちゃんのお母さん若くてキレー』とか言われて
みたいの〜、キャッ☆」
「………」
「な〜に、暗い顔してるのよ〜。大丈夫。私とスコールの子なら絶対可愛〜よ〜☆ん?スコール?」
このときスコールはふと思った。『俺はもしかしてとんでもない少女を愛してしまったのかもしれない』と……。
END
どうも、Kallでーっす。いかがでしょう?スコリノ第7作目。クリスマスイヴのラブラブで(死語)
ハグハグなお二人を書いた…というよりリノアの仕掛けた『”クリスマスプレゼントはあたし”大作戦』
(なんだそれは…fromスコール)を書いたんですが…コメディものになっちゃった。ところで、リノアの
”コドモが欲しい”発言。このあとのスコールの運命やいかに?(笑)(もちろん、ハグハグぎゅ〜で可愛〜い
コドモを授かるの☆fromリノア)。Kallは書きません(どうしてもというご意見があれば書くかも?)
が誰かこの続き書いてくれる人いませんか?(本気で募集中!!ただし裏にはしないでください^^;)
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