Lullaby
慣れないベッドで横になっていると時間の流れはいつもより遅く、夜はとても長いように感じる。
かといって、この部屋には暇をつぶすものなど何もない…。そのうえ長年使われていなかったので部屋の隅には蜘蛛の巣、
タンスや机の上にはほこりが積もっている。
「う〜ん…今日はもう仕事はパスだ、パス〜」
「…よくこんなところで寝られるな…」
隣のベッドで寝言を呟きながら熟睡しているラグナのほうに目をやる。が、すぐに『昔、ここにしばらく住んでいたらしいから
それは当たり前か』と思い直した。
「…だ、だからキロスくん、さっきから何度も言ってるだろ〜今日は…」
どうやら夢の中でも大統領の仕事に追われているようだ。それほど大統領の仕事と言うやつは忙しいのだろう。
だが、それでもラグナ、いや親父は『今日と明日だけは』と無理を言って仕事をキャンセルしてお忍びでこの村、
ウィンヒルに来ている。その理由は、明日がラグナの妻、つまり俺の母、レインの命日だからだ。そしてもちろん、
エルオーネとリノアも一緒に来た。ところが、村に着いてすぐ俺達はあるアクシデントに見舞われた。なんと村のホテルが
部屋の改装中で空き部屋が一つしかなかった。それも、ダブルベッドの部屋が。どうするか4人で話し合った結果、
エルオーネとリノアがホテルに、俺とラグナは”レインのバーの隣にある昔ラグナが間借りしていた家”にということで
決着を付けたのだが…
「…?あれは?」
部屋の中を何気なく見回していた俺は机の影の床の上に置かれている古びたラジオが見えた。ラグナを起こさないようにそっと
ベッドからおりてそれを拾い上げる。どう見てもすでに壊れていて動きそうにない。それに、電波障害が無くなったとはいえ
復旧がそれほど進んでいない電波放送がこんな田舎にまで届く訳がない。否定的な考えにとらわれつつ一応スイッチを入れてみる。
すると、かなり酷いノイズが混じっているがスピーカーから人の声らしいものが聞こえてきた。
『……は〜い……さんからのリクエストで…でした〜…』
どうやら音楽番組らしい。俺はラジオを俺とラグナのベッドの間の枕元にあるラックにラジオを置くとベッドに横になった。
『次は…ウィンヒル在住のレイ……ァールさんからのリクエストで”Eyes on me”……』
「Eyes on me?…」
次の瞬間、俺が出会ったのはノイズ混じりながらもまぎれもなくリノアの母、そしてラグナが一度、思いを寄せた女性の歌だった。
昔よく聞いたとか言うわけでもなく、懐かしいとかいうはずもないのに気がついたときに何故か、俺の目から涙がこぼれ落ちていた。
同時に不思議な安心感と何とも言えないやすらぎに包まれ俺は眠りに落ちていった……
「母さ〜ん!!」
自分の声で目が覚めた。起きあがってふと、隣のベッドのラグナを見る。こちらに背を向けているので起きているか眠っているの
かわからないが、さっきの俺の寝言に反応してないところを見るとどうやら眠っているらしい。ラジオもいつの間にか止まっていて
スピーカーからはノイズさえも聞こえて来ていない。それにしても…
「さっきのはいったい……」
不思議な夢…・いや、あれは俺の過去の想い出だ、俺がガーデンに連れて行かれる前、まだレインが、母が生きていて俺とエルお姉
ちゃんの3人で暮らしていたときの想い出だ。といっても、俺もエルお姉ちゃんもほとんど母にかまってもらえなかった…いや、
かまってもらえる程、母に余裕がなかったと言う方が正しいかもしれない。なにせ3人が毎日食べていくための稼ぎは母が営むバー
の収入しかなかったのだ。母は毎日、朝早くから仕込みや掃除をして夜遅くまで客の相手をしていた。しかし、どんなに忙しくても
疲れていても母が俺達のために毎日かかさずしてくれることが一つだけあった。
『はい、エルもスコールもいい子だからもう寝ましょうね〜。』
『じゃあ、ねるからいつものおうた、うたって〜「あいすうんめ〜」!!』
『ふふふっ、エル〜、「あいすうんめ〜」じゃなくて「Eyes on me」。じゃあ今から歌うからちゃんと寝るのよ〜、』
こうして、俺もエルお姉ちゃんも母の笑顔に見つめられ、そのやわらかな歌声を子守歌に眠りについていた…。
その日も、いつものように母の子守歌で眠りについた…が、真夜中にふと俺だけ目が覚めた。ちょうど部屋は今と同じように
痛いほどの静寂と暗闇に包まれていた。俺は不安にかられて母を求めてそっと部屋を抜け出した。
『かあさん?』
ところが、母の寝室にその姿はなかった。俺は半泣きになりながら家中を探し歩いた。そして、最後にたどり着いた部屋で、
やっと母の姿を見つけた。そこはラグナの、父の部屋だった。
『あらあら?どうしたのスコール?』
母は部屋に入ってきた俺に気付くと俺を抱き上げて窓から夜空を見上げた。
『あなたのお父さんはね今お仕事で遠くの方にいるの…』
その顔は相変わらず笑顔だったがどこかもの悲しくて、まるで涙を流さずに泣いているようだった。そのあと母に抱かれたまま
俺は母の部屋に連れていかれて一緒にベッドに入ってもう一度母の子守歌を聞きながら眠りについた。そして翌朝、目を覚ましたのは
俺だけだった。俺が最後の聞いた「Eyes on me」は俺のための子守唄ではなく、母の最後の歌、そして鎮魂歌になった。
俺がどんなに呼びかけようとも永遠に彼女は目覚めなかった……
「……母さん…」
『………さんからのリクエストで…でした〜…』
不意にまたラジオのスピーカーからノイズ混じりの音楽番組が流れ始めた。
『次は…ウィンヒル在住のレイ…ァールさんからのリクエストで”Eyes on me”……』
「また…」
珍しいこともあるものだ…そう思いつつも、また俺はベッドに横になって目を閉じた、俺の意識は深い眠りに落ちていった。
催眠術か不思議な魔法に魅せられたかの様に…
翌朝、俺達はレインの墓参りに来た。辺り一面を花に包まれた小高い丘の上の小さな十字架が立てられた墓石。そこが母の眠
っている所だったということを墓石に刻まれている”Raine Loire”という文字が静かに物語っていた。
ただ、俺には気がかりなことがあった。それは昨日の夢のことと、ラグナに聞いたあの『この村にはまだ電波が届くアンテナがない。』
という話。そうなると、俺が聞いたあの「Eyes on me」はいったい……
「おい、スコールまだ気にしてるのか?」
「あ、いや……」
口ではそう言う物のどうも気になる。どうやら顔にもそれが出ているらしい。ラグナだけじゃなくエルオーネと
リノアも俺の方を心配そうに見る。
「ま、寝ぼけてたんだって夢だよ。夢」
「そうだな……」
「そうよ、はいスコール、お花。あなたがお墓に供えてあげて」
そう言ってリノアが俺に花束を俺に手渡す。それを俺がそっと墓石のところに供えたとき、天使の微笑みにも似たやわらかな風の中に
微かに聞こえた…夢の中で聞いた母の、レインの声で「you’re not dreamer.(夢じゃないわよ)」と。
母の鎮魂歌だったあの曲は、再び俺の子守歌になった。
END
いかん!!駄文だ(爆死)!!元曲(Janne Da Arcの「Vanish」って曲)がかなりいいのに、駄文
にしてしまった(核爆死)!!ほんとどうしようもねぇ(超絶核爆死)!!…ども、Kallです。久しぶりに手の施しようのない
駄文を書き上げてしまいました。あぁ〜…できればみなさん読まないで!!ってこれ読んでるって事は全文読んじゃ
った後ですね(苦笑)。はぁ…次回作で今回の駄文のお詫びを十二分にしたいと思いますのでみなさん、見捨てないで〜…
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