Liquor charm


 一人きりの夜の方が好きだったはずなのに、気がつくとリノアの感触を探している。こんなふうになったのはいつからだろう? 報告書を作成していたノートパソコンのキーボードを叩く手を止めて、缶ビールを煽りながら思い出してみる…と、あっけないほど 簡単にその答えを思い出せた。目の前のノートパソコンのディスプレイが放つ蒼白い光、それはあの夜、俺の部屋を包み込んでいた 淡い月明かりと似ていた…

 あの日は、朝からずっとリノアと一緒だった。街でのショッピング、ホテルのレストランでの 高級ディナー…ガーデンに帰ってきたときには日付がすでに変わっていた。
 「今日はありがと、一日中付き合わせちゃってごめんね。」
 「気にするな…」
ガーデンの廊下を歩きながらたわいもない会話を続ける…俺はリノアを部屋まで送り届けようと、 ガーデンの女子寮に足を向けようとした。
 「?!どこ行くのスコール?」
 「どこって……あんたを部屋まで送んなきゃいけないだろ。」
 「…ねぇ、今からスコールの部屋に行っちゃダメ?」

 その数分後、俺は自分の部屋にリノアと一緒にいた…というよりリノアに無理矢理押し掛けられたというべきだった。 しかし、すでにそんなことはもうどうでもよかった。乱れたシーツの中でリノアと絡み合う俺に、そんなことを考えること はできなかった……

 コンコンと、誰かがドアをノックする音が俺を現実に引き戻した。
 「誰だ…?」
こんな時間に俺の部屋に尋ねてくる人物は一人しかない…そうわかっていてもつい、SeeDとして身に付いているいつもの癖で来訪者を 確認しようとしてしまう。
 「あたし…リノア。」
予想どおりの答え。俺もいつもどうりの答えを返す。
 「鍵は開いている…。」
そっとドアが開く。と、部屋に入ってきたリノアの姿に俺は目を奪われた。胸の開いた赤のイブニングドレス…去年の クリスマスにリノアにせがまれてプレゼントに買ってやったやつだ。
 「ねえ?どうこれ?似合うかな…?」
 「…ああ…」
そう答える事しかできなかった。いつもなら外で太陽の下にいる方がリノアには似合っている。 けど、今日のリノアの姿は夜の暗闇に似合いすぎていた。
 「……用事はそれだけか?消灯時間過ぎてるんだ。見つからないように部屋に帰れよ。」
心にもないことを口にしている自分がおかしくて、机の脇に置いている資料を見るフリをしてリノアに気付かれないように口元をゆるめた。 と、ドアが閉まる音がした。おとなしくかえったのか…そう思ってドアの方を振り向いた俺の目の前にあったのはリノアの顔だった。
 「ねぇ…今日もハグハグ…いいでしょ?ね…」
 「…悪いけど、こいつがある……」
と、ノートパソコンのディスプレイの方に目をやる。
 「いいじゃん、そんなの…明日の朝あたしも手伝ってあげるから…」
 「……だめだ。あんたじゃ手に負えない…」
 「ウソ…それただの仕事の経費の決算書じゃない…それくらいならあたしにもできるわよ。」
俺の下手なウソは簡単に見透かされた。リノアが時々ガーデンの授業に参加していろいろ勉強しているのを考えれば、 それは当然の結果だ。それさえ思いつかないほど俺はもう…リノアのペースにはまっていた。
 「ね…だから…いいでしょ?お願い……」
黒曜石のような瞳を上目使いにして俺をじっと見つめる。もう、俺にリノアの願いを拒むことはできなかった…

 「スコールぅ……」
俺の腕の中で眠りについたリノア。窓の外を見ると東の空はうっすら白んできている。もうすぐ夜が明ける。結局、 報告書は仕上がっていない。机の上のノートパソコンのディスプレイが虚しく蒼白い光を発してる。
 「さて…しかたないやるか……」
リノアの頭の下から腕枕をしている腕を抜いて代わりに枕をそっと入れてパソコンに向かう。早朝の静寂に包まれた部屋の中で、 俺がキーボードを叩く音だけが静かに響いていた。
 「…・スコール……どこ?」
不意にリノアの声が聞こえた。目を覚ましたのか?と思って振り向いたが、まだ眠ったままだった。けど、その閉じられた瞳には うっすらと涙がにじんでいた。
 「一人にしないで…」
涙声で呟く寝言…どうすればいいかわからなくて、とにかく涙を拭ってやろうとその瞼に口づけをして、 俺はまたパソコンの画面に向かった。

 「ふわぁあ、よく寝たぁ…あっ、スコール、おハロー!!」
 「…リノア、時計見ろ。もう昼だぞ。」
 「あり?ホントだ。あっ、報告書どうなったの?」
 「俺が一人で仕上げてさっき出してきたよ。」
 「ごめんね…昨日、無理言っちゃって…ほんとにごめんね。」
 「わかってるよ…で、昨日は何飲んでたんだ?」
 「え〜とねぇ…赤ワイン。」
 「やっぱり…あんた酒飲むといつもだもんな…。」
 「ホントゴメンね〜、このお詫びはいつかするからさ…」
 「じゃあ、今から俺、少し寝るから2時間たったら起こせ。いいな…」
 「わかった〜。じゃあおやすみ〜」
リノアの眠っていたベッドに今度は俺が横になる。しかし、疲れた…やっぱり酒を飲んで仕事するのはやめよう…。 仕事のペースも上がるが、それ以上にリノアと…。それにどういうわけか、そういうときに限ってなぜかリノアが来るんだよな… それもリノアも何故か酔ったまま…。まあいい…今は眠ろう……

 「…さてと…」
スコールが眠ったのを確認したリノアはおもむろに壁に飾ってある一枚の小さな絵を裏返す。と、そこにあるのは小さな盗聴器。
 「そろそろ場所変えようかなぁ…・ま、いっか、見つかったときで…。」


END


 ども、Kallです。ちょっと大人な(ある意味で・爆)雰囲気なスコリノです。キリ番3000ヒットゲットしたあや☆さんのリクエスト
■すっっごくかわいい甘えるリノアが見たい!
■そんなリノアにメロメロなスコール(爆)
■しかも、らぶらぶハグハグぎゅ〜☆…な、2人♪
ということで書かせて頂いたらこうなりました。どうでしょう?リクエスト満たせてますか?そうそう、今回は久方ぶりのオリジナルでモチーフCD無しです。 だからといって、僕の経験談とか言うのでもないですよ(笑)