Last Card


 「こんなことになるとはな…」
 辺り一面見渡す限りの砂の世界、その中にぽつんとそびえ立っている異様な形の建物は、今は使われていない かつてのガルバディアの支配の象徴だった砂漠収容所だ。
あと目に入る物と言えば砂漠の所々に見える緑のサボテンと下草、そして真上より少し西に傾いた太陽以外は何もない。
 「この砂漠を通るのが一番近道なんだが、それにしても…」
あまりに暑い…そう言いかけたところでスコールは独り言を止めた。 どうせ”暑い”と口にしたところでこの状況をどうすることもできない…いかにも一流の 傭兵として訓練されたSeeDの彼らしい考え方だ。ところで、何故スコールがこのような 砂漠収容所のある辺境の地を彷徨っているのか?
 その発端は今をさかのぼること十数時間前のことだった。


 深夜、自室で眠っていたスコールは枕元に置いていた携帯の着信音で起こされた。 電話の相手はシュウ。すぐにガーデンの会議室まで来て欲しいとのことだった。
 「こんな時間に…なにかあったのか?」
手早く身支度を整え、ガンブレードを片手にスコールが会議室のドアをくぐったのは、それから数分後のことだった。
 「ええ、エスタのラグナ大統領からあなた宛に緊急通信よ」
 「ラグナから?」
 「今、モニターに転送するわ」
モニターのパネルをシュウが操作すると、いきなりアップで目の前の画面にラグナの顔が映った。
 「よっ!こんばんみ〜!!久しぶりだな〜スコールぅ♪元気してっかぁ?そうそう、リノアちゃん 泣かせたりしてね〜だろな〜、をい?」
 「あのな……緊急通信なんだろ。早く要件を言え」
深夜に緊急通信を入れるのだから相当の事件…と思いきやラグナのあまりの緊張感のなさにスコールも少し怒り気味で聞き返す。
 「な、なんだよ〜、つまんね〜な〜…ま、いっか。あのな、モンスター退治の依頼なんだけどよ…」
 「モンスター退治?おい、ちょっと待て。エスタには何度もSeeDを派遣して”月の涙”で増えた強力な モンスターはほとんど退治したはずだ。それに兵士の訓練だって十分にやってある。それでも、まだ手に負えないっていうのか?」
本当にそうであるなら確かに大事件だ。が、このスコールの質問に帰ってきたラグナの答えでその可能性は消えた。
 「あっ、いや違うんだよ…うちじゃなくてさ、ウィンヒルなんだよ」
 「ウィンヒル?」
詳しい話をラグナに聞いてみると、昨日たまたまオフだったラグナは、ちょうどエスタで メンテナンス中だったラグナロクのテスト飛行として、ウィンヒルまで出かけたらしい。そこで、普段とは違う 村全体の空気の違和感に気付き、村人から事情を聞きだしところ、最近モンスターが頻繁に出没して困っているという… そんな話をするラグナの顔は、いつの間にかさっきまでの雑談の時とは違って真剣そのものになっていた。
 「しかし、それならウィンヒルの村から直に依頼が来てるんじゃないのか?」
ラグナに返辞をしながらシュウに視線で合図を送る。
 「いや、そっちで調べてもいいがたぶんそれはないと思うぜ。モンスターが出てる、つっても被害は 村の畑が荒らされてるとか、物干し竿をひっくり返されたとかってぐらいだって言ってたからよ」
ほぼ同時に依頼のファイルを検索していたシュウからも”該当ファイルなし”の返辞が帰ってきた。
 「…話はわかった。で、こっちはどうすればいい?」
 「すまないが、明日一番でウィンヒルに向かってなんとかしてくれないか?そのためにラグナロクは今 そっちに急ぎで届けさせてる」
 「了解。じゃあ、報酬はいつものようにガーデンの口座に振り込んでおけよ」
 「わ〜かってるって。んじゃ、頼んだぜ〜」

 通信から二時間後、ラグナの話どうりエスタからラグナロクが届けられ、スコールはそれに乗り込むと すぐにウィンヒルへ向かった。東の空が白み始めるころにはウィンヒルに到着し、すぐに住民からの聞き込み、 モンスター出現現場の調査…そして、太陽が真上に来る前にはすでにウィンヒル近隣に居た目ぼしい大型の モンスターの姿はほとんど無くなった。
無事任務は完了…スコールはすぐにガーデンに帰還しようとラグナロクに乗り込んだのだが…
 「?」
ラグナロクの起動プログラムが動かない。それどころか艦内のその他のシステムも一部ダウンしていて ドアが開かない場所まである。
 「どういことだ?」
とにかく原因を…と出来る限りで調べるがいっこうに要領を得ない。第一、調べるにしてもここでは 満足な工具や機材もない。結局、そのままではどうにもならず、なんとか生きていた通信システムで スコールはガーデンに連絡を入れ、ラグナロクの回収をエスタに依頼させると共に、自分は大陸横断鉄道で帰ることを伝えた。
 「え〜?スコールあんたそれマジで言うてんのか〜?」
少しノイズの混じった通信画面のむこうでセルフィが呆れた声をあげる。
 「そうだ。ここから海岸沿いにすすんで収容所のある砂漠を突っ切れば駅がある」
 「そやかて、かなり距離あるで?ほんま大丈夫か?」
 「ああ、早ければ明日の昼にはバラムに帰る。じゃあな、急ぐからもう切るぞ」
通信を終えたスコールはウィンヒルで必要最低限の水や食料を買い込むとすぐに村を後にした…


 「やっと着いたか」
 さらに歩くこと小一時間、砂漠の陽炎の中に駅の建物とホームが見えた。 この暑さから早くのがれようと残り数百メートルの距離を一気に走りきって、駅の建物のなかに駆け込む。 直射日光が当たらないせいか一歩足を踏み入れた瞬間、少しだが暑さが和らぐ。
 「次の列車は…」
そう思ってまず構内に張られている時刻表を見た。一時間後…まあ待てない時間じゃない。 スコールは切符を買おうと自動券売機の前に立つとズボンのポケットから財布をとりだす。 さらにその中からカードを取り出して機械に入れようとしてその手が止まった。
 「ちっ…」
カードの残高がたりないとか、券売機でカードが使えないというのではない…しかし、 彼には今そのカードを使うわけにはいかなかった。かといって、現金はウィンヒルで水や 食料を買い込んだときに使ってしまった。
 「どうする…このままでは…」
その時、外で列車の音がした。時刻表ではあと一時間有るはず…そう思ってスコールは ホームに出てみる。と、ホームに滑り込んできたのは貨物列車だった。
 「そうか、その手があるな…」
すぐにスコールは駅の構内から外に出ると、駅のまわりに危険防止と進入禁止として張り 巡らされているフェンスを手荷物と共に乗り越えた。
 「本来ならこういうのは気にくわないが…」
少し負い目を感じながらもまずは目の前の列車のコンテナのドアに手をかける。
 「だめか…次だ」
その後ろの車両、さらにその後ろの車両に今度は反対側のドア…しかしどれもちゃんと鍵がかかっている。
 「少々手荒になるが…」
そう思って強硬手段に出ようとガンブレードの柄に手を書けたときだった。
 「こっちだ!!」
声のした方を振り向くと数両前の車両のコンテナに乗り込もうとしている男の姿があった。 スコールも急いでその車両に駆け出す。ほどなく開いているドアの所に辿り着いた。 まずはと手荷物を開いているドアから投げ込む。そして今度は自分が…とコンテナのドア の横に着いている手すりを掴もうとしたとき、その手は空を掴んだ。
 「ちっ!!」
列車が動き始めた。急いで走り始めたが少しずつ列車のスピードは上がっている。 まずい…乗り損なうかもしれないという思いがスコールの脳裏をよぎる。
と、そのとき、列車のドアからさっきの男の物らしい手が差し出された。 スコールは考える前にその手を掴むとさらにもう一方の手で手すりを掴みコンテナの中に転がり込んだ。
 「……っ…はぁ…はぁ…あんたのおかげで助かったよ…」
 「礼はいいからさ、なんか食い物持ってねぇの?スコール」
 「あ、あんた…何故、俺の名前を…!!お前…ゼル!!」
声をかけられたときは遠目だったし、そして今さっきは列車に乗り込むことに夢中で気が付かなかったが… 今、スコールの目の前で彼が先に投げ込んだ荷物の袋をのぞき込んでいるのは紛れもなくゼルだった。
 「なんだよ。今頃驚くなよ〜。というか、俺の方が驚いたぜ。お前何でこんなとこにいるわけ?」
 「後で話す。それよりもその荷物…俺のだぞ」
 「いいじゃね〜か〜、なんか食い物くれよ〜。俺がいなきゃ今頃お前取り残されてんぜ〜」
 「袋の奥の方になんかあるだろう…」
 「ん?おっ!!ほんとだ、んじゃ遠慮なくもらうぜ」
そう言うが早いか袋の中から次々と食べ物を取りだして、並べていく。
 「おお〜、パンにハム、クッキー…それにインスタントラーメンまであるじゃねぁか。 っしゃ、食うぞ〜。何しろ三日ぶりの食事だからなぁ〜」
 「?!…三日も何も食ってなかったのか?」
スコールが怪訝そうな顔で並べてある食べ物をほおばるゼルに問いかける。
 「まあな…んぐ…先週から…ぐ?!?ふが……んがが」
 「おい、どうした?」
 「の、喉につま…み、水ぅ…」
 「おい、大丈夫か!!」
慌ててスコールが自分の荷物の袋から水を取り出そうとする。が、さっき、ゼルが 中身をいじったせいかきちんと整頓していたはずの中身がごちゃまぜになりなかなか見つからない。
そのときスコールはコンテナの奥に誰か人の気配を感じた。同時にその方向を振り返った スコールに向けて暗闇の奥のその人影はが何かを投げた。微かな灯りと音を頼りにそれを受け取るスコール。
 「それを早く」
受け取った物を見るとそれは冷えた缶ビール。とにかく、それをすぐにゼルに渡すスコール。
 「ほら、これでなんとか…」
 「ぐ…おお、すまんスコール」
ゼルがプルタブを開けるとプシュッという音と共に飲み口からわずかに泡が吹き出たが、 それさえも一緒に一気に缶ビールを飲み干した。
 「くは〜…ふう…いや〜、死ぬかと思ったぜ〜」
 「お前、いいかげん落ち着いて食えよ。誰も取らないんだから…」
 「わかってるよ〜、だからすまんって誤ってるだろ〜。ところで、このビールどっから持ってきたんだ?」
 「そう言えば…おい、そこに隠れてるあんた、聞こえているんだろ?出てこいよ」
 「しょうがないなぁ…」
そう言って頭をかきながら奥からでてきた人物を見て今度はスコールとゼルが共に驚いた。
 「?!?アーヴァイン!!」

 「あはは、なるほどね〜、そりゃゼルらしいや〜」
缶ビールを飲みながゼルの話を聞くアーヴァインが大声をあげて笑う。
 「なんだよ。そんな笑う事ないだろ〜」
そんなアーヴァインを睨み付けるゼル。
 「でも、修行するのはいいけど食べ物とか着替えとかに気を取られて、財布持ってくるの忘れたなんて…。 しかも、途中で食べ物が足りなくなったから一旦打ち切りだなんて……」
 「そうだな…かなり、間抜けだぞ」
 「な、スコール…お前まで…」
 「ふっ、すまんすまん。で、そんなことを言ってるアーヴァインはなんでこんなところにいるんだ? 確かお前はデリングシティで仕事じゃなかったのか?」
 「いや、それがさぁ…仕事はあっさり片づいたんだけどさ、あれ買っちゃったら列車代にたりなくなっちゃってさ…」
そう言ってアーヴァインが指さす方をスコールとゼルが見ると、ブランド物のロゴマークが入った大きな紙袋が いくつも置いてある。
 「なるほど、おおかたセルフィやキスティスにせがまれた…そんなところか?」
 「まあね〜。そういうスコールはどうしてここに?」
 「そうだ、俺達に聞く前にお前だよ〜。だいたい、あの時俺が助けてやらなきゃ…」
 「おいゼル、それは食い物くれてやったからチャラだろ?俺は、緊急任務で出てきたんだが 持ち合わせが少なくてな、で、このざまだ」
 「でも、スコール、君はカードのほうの残高でかなりの余裕があるだろ?」
 「…カードはちょっと訳有りでな、使うわけにはいかないんだ」
 「ふ〜ん、訳有りねぇ…一体何に使うんだい?!もしかしてリノアちゃんへとの結婚資金?な〜んてね。あはははは…」
ガンッ…突然スコールが飲んでいた缶ビールの缶を近くにあった木箱に叩きつけた。
 「お前らには関係ない。だいたい俺が自分で得た報酬だ。どう使おうと俺の勝手だろ……」
 「なんだよ〜そんな怒るなよ〜…あっ?もしかして図星?」
 「だから関係ないと言っているだろっ!!…だいたいアーヴァイン、お前飲み過ぎだぞ。 もうすぐティンバー、通り過ぎればバラムは目と鼻の先だ。そんな酔っぱらって帰ってみろ良くて減給、 下手すればSeeDランク降格もありえるぞ」
 「え?も、もうそんなとこまできてるの?」
スコール言葉を聞いて新しいビールの缶のプルタブにかかっていたアーヴァインの指が止まる。
 「そうだ。もう鉄橋が見えてる。あれを渡れば一時間もせずティンバーに…?!なんだ?あの煙?」
 「どうした、スコール?なんかあったか?」
気になったゼルが立ち上がって外を見ようとスコールのいるほうに近づこうとした瞬間、
 「ぬおっ?!」
いきなりの列車の急ブレーキ、バランスをくずしたゼルが倒れた。幸い、コンテナの床には 荷物のショック吸収剤として敷き詰められていた発泡スチロールがあるおかげでケガはなかったようだ。
 「つつつ…いったいなんだってんだ、をい…」
 「わからん…が、おそらくあの煙が原因だろう」
 「あれ火事かなんかかな?スコール」
いつの間にかコンテナの入り口の側に来て外を眺めているアーヴァインが横にいるスコールに問いかける。
 「かもしれんが…それにしては少し煙の量が少なくないか…」
 「だよね〜。じゃあいったいあれは…?」
 「ててて…んじゃあ、なにか?あんなところで誰かがたき火でもしてたってか?くそっ、 もしそうだとしたら犯人見つけたらぶん殴ってやる!!」
そう言って、コンテナから飛び降りると辺りを見回すゼル。と、その様子を見ていたスコールが 何かに気付いたのか苦笑いをしながらゼルに声をかけた。
 「ふふん…そういうことか…おい、ゼル。それ以上そっちの茂みにはに行かない方が良いぞ」
 「あ?どういうこった、スコール?」
 「それ以上近づくと先にお前が殴られそうだからな、とにかく落ち着け。…ということだ、 そろそろそんなところに隠れてないでいい加減出てこいよ」
 「ちっ…余計なことしやがって…」
茂みの中から現れたのは、そこにいたのはスコールと同じ武器、ガンブレードを持ち、 白いコートに身を包んだ男の姿。
 「さ、サイファー!?じゃあ、あのたき火はてめえが…」
 「ああ、そうさ。俺もここんところ何かと多忙なんだ。至急、ガーデンに帰還したいところに 丁度この列車が通ってるのを見かけたかもんで、ちょっと止まっていただいた次第だ」
そう言いながらサイファーはさっさと荷物をコンテナに投げ込み、さらに当たり前のように自分も乗り込んできた。
 「なにが止まっていただいただ!?無理矢理止めたんじゃねぇか!!」
 「無理矢理?おい、何勘違いしてるんだ?無理矢理止めるってのはこう言うのを言うんだぜ」
と、コンテナに戻ろうとしたゼルを邪魔するようにコンテナの入り口にガンブレードを構えて立ちふさがるサイファー。
 「…てめぇ…」
それを見てとっさに身構えるゼル。
 「なんだこんなところでやる気か?」
 「それくらいにしておけ二人とも。やるならガーデンに帰ってから思う存分やってくれ」
やりとりを見ていたスコールがとっさに止めに入る。
 「そうだよ〜。それにほら火も消されちゃったみたいだし、もうすぐ列車動き出しちゃうよ」
 「ちっ、仕方ねぇ一時休戦だ。でも、覚えてろ、ガーデンに付いたらただじゃすまさねえからな」
 「おお、望むところよ」
 「はいはい、わかったから。ま、二人ともこれでも飲んで頭冷やしてよ」
そう言って、ガンブレードの手入れをしているサイファーと、そんなサイファーの様子を距離を置いて見ているゼルに、 アーヴァインがビールの缶を投げて渡す。
 「おい、アーヴァインお前、まだ…」
 「大丈夫、これノンアルコールのビールだよ〜」
得意げにスコールにも缶を投げて渡すアーヴァイン。そのもう一方の手にはすでに 口が開いたノンアルコールビールの缶があった。
 「…ったく。まあ、なんとか間に合いそうだし、到着がこれ以上遅れて もらっちゃ困るからな…今回は黙っておくか…」
缶を受け取ったスコールは携帯で時間をチェックしながら、他の3人には聞こえないようにそう呟くと ビールのプルタブを開けた。と、それが合図だったかのようにガタンと言う音と 軽い揺れと共に列車が動き始めた。4人の若者とそれぞれの思いを乗せて…


 「へぇ〜そうだったんだ〜」
その夜、スコールが帰ってきたことを知ってさっそく部屋を訪れたリノアに、 スコールはガーデンに帰ってくるまでの一部始終を話して聞かせた。
 「しかし、実際大変だったのは列車の中より駅に着いてからだった…。 アーヴァインの持ってたブランド物の荷物は大量にあるし、サイファーとゼルは付いて早々、また喧嘩始めるし…」
 「あはは、ご苦労様です♪」
スコールの話に笑いながら入れたてのコーヒーのカップをスコールに手渡すリノア。
 「あのな、笑い事じゃなかったんだぞ…って、いまさら愚痴っても仕方ないか…。 それに、予定どおり帰って来れたから良しとしておかないとな…」
 「予定どおり?そういや不思議に思ったんだけど〜、スコール、 現金じゃなくてもカード持ってなかったっけ?そんなに急ぎならカードで切符買って帰ってくればよかったじゃん」
 「それは…」
リノアの問いに言葉を詰まらせたスコール。会話がとぎれたせいで少しずつ、 気まずい雰囲気が二人の間に漂いかけた。そのとき、誰かがスコールの部屋のドアをノックした。
 「どうぞ、空いてますよ」
部屋の主のスコールより先にリノアが返辞をする。ドアを開けて入ってきたのはキスティスだった。
 「あら?スコールも居るんじゃない。私はてっきりリノアだけかと…お邪魔なら後にするけど…」
 「別にいい…それより何か用か?」
 「ええ、あなた宛に小包が来てたから持ってきたんだけど…」
そう言ってキスティスは小さな包みをスコールとリノアの前のテーブルの上に置く。
 「小包?どうしてキスティが預かってるの?普通ならガーデンの私書箱に置いておくんじゃないの?」
 「そう、普通ならね。でもね、これ、代金引換だったのよ。だからガーデンで立て替えて置いたわ。 それにしてもお安くなかったわよ、スコール。はい、これ領収書と受け取り証明」
と、さっき置いた小包の横にそれらの書類を添えた。
 「どれどれ…・え〜っと、一、十、百、…・十万、…600万ギル!?」
領収書の数字を見て目を丸くするリノア。
 「で、この代金だけど…」
 「このカードに600万ギル丁度入ってる。これでいいだろ?」
わかっている…と言わんばかりにポケットから取りだしたカードをキスティスに差し出すスコール。
 「あら?準備いいじゃない。じゃあ、これ預かるわね。それじゃ、私は帰るわ。 これ以上いると今度はほんとに二人のお邪魔になりそうだしね」
スコールのカードを手に意味ありげな台詞と笑顔を残してスコールの部屋を出ていった。
 「?どういう意味なんだろ?」
キスティスが部屋を出ていくのを見送っていたリノアがスコールの方を振り向く。
 「…こういうことだ…」
 「えっ?」
不意にリノアの左手を取るスコール。そして、その薬指にそっと銀色に光る指輪をはめた。
 「いつの間にこれ…!もしかして、さっきの小包…」
 「ああ、そう言うことだ。それよりもリノア、俺の言いたいこと…分かるだろ…」
まだ信じられないという様子で左手の薬指に光る大粒のダイヤがあしらわれた指輪と、 まっすぐに自分を見つめるスコールの顔を交互に見比べるリノア。 その様子を見てスコールは一瞬ためらった後、すこし照れくさそうにしながらリノアに改めて告げた…
 「結婚しよう…」


END


はいはい、ど〜も、Kallでございます〜(^▽^)
劉星さんの8000ヒットキリ番リクエスト(というかこれ 、実は僕から「リクエスト思いつかないならこんなのど〜ですか?」と進めたんですが・爆) 作品でございます。それも、ここしばらく多忙で新作を執筆してなかったので久方ぶりの作品です (さらに爆)。で、この作品ですが…・序盤から中盤にかけて思いっきり男だけですので 「あ?ほのぼのもの?」なんて思った方も多いことでしょう。しか〜し、ラストはそれまでの課程、 度返しのスコリノ甘甘なんですね〜(笑) ちなみにちなみに、余談ですがスコリノ甘甘部分以外のモチーフに今回は曲としてではなく プロモビデオ@GLAYの「SPECIAL THANKS」を使ってみました♪
2005年10月23日再掲載