2回地域医療を守る会シンポジウムの意見    平成231217

 おかげさまで平成23年1217日の第2回地域医療を守る会シンポジウムには600名(新聞では500名としています)もの参加があり、地域住民の府中北市民病院(旧上下病院)縮小計画に対する、危機感と抗議の念が高まったものと思われました。基調講演をして下さった埼玉県済生会栗橋病院院長補佐の本田宏先生も全国各地で講演をしているが、こんなに熱気にあふれた会場は初めてだと感想を言われました。本田先生は日本の医療崩壊の背景にある医療費抑制政策や医師不足等の深層をわかりやすくユーモアを交えて参加者に説明された後、国民は行政主導の情報操作から脱却して、医療職が発信する正しい情報に基づいた正しい判断を下すことで、それぞれの社会的責任を大同団結して果たすことが医療再生のために必要最低条件であると力説されました。また府中北市民病院(旧上下病院)は診療圏域が広域で他の自治体からの患者の受診が多いので、府中市だけの病院ではないことを、府中市はしっかり認識すべきであると発言され、県が中心になって広域で地域住民、医療関係者、行政が協議の場を設けるべきと発言されました。

県立広島大学保健福祉学部教授の安武繁先生は、府中北市民病院(旧上下病院)医療圏(旧甲奴郡、神石郡)の地理的条件、交通事情を考えると、当該地域住民の一般的な入院医療の利用圏域は旧上下病院に大きく依存しており、特に高齢者の需要が大きい診療科、すなわち内科、一般外科、整形外科においては従来通りの一般外科、整形外科手術対応を含めた急性期医療、一般病床および救急入院の提供が必要であることを強調されました。また高齢者は多くの診療科にわたる疾患を抱え、介護の需要も大きく、中山間地域では介護サービス資源も都市部と比較して少ない傾向があるので、安心の在宅医療を提供するためには、身近なところで内科、外科、整形外科の一般病床を確保することが必要で、日常生活動作が回復してくるまで、リハビリテーションも含めた一般的な入院医療の提供があれば患者・住民は安心できるとも述べられました。医療圏が広域なので集約すると遠い周辺地域住民は利用できないので、上下病院は現状維持して連携と補完が大切とも述べられました。医師確保に関しては中山間地域出身者を「地域枠」の特別枠で入学を許すと地元に定着することと、旧上下病院が地域医療(総合医、家庭医)の資格を取得できるような明確なキャリアデザインを地域医療を志す若手医師に提供することが重要とも述べられました。

地元からは神石高原町で開業されている鈴木クリニック院長の鈴木強先生と公立世羅中央病院の末廣眞一先生に参加して頂きました。鈴木先生は15年前に自ら広島県でもっとも医師が少ない地域での開業を希望され広島市から当地に移住された先生で、府中北市民病院に43.8%もの多くの患者を紹介されています。中山間医療過疎地域には内科、外科、整形外科だけでなく高齢者の需要が多い泌尿器科(週1)、耳鼻科(週2)、皮膚科(週1)が現状通り必要であると述べられました。また旧上下病院が縮小されると、クリニック存続が不安となり、在宅医療も病院のバックアップがなければあまりにも診療所が少ないため不可能になるとも発言されました。末廣先生は都市部には選べる他の病院があること、そしてこの計画には医師増員の確保がないことから、旧上下病院を基幹病院とする府中市地域医療再生計画に変更すべきであると述べられました。そして当計画では旧上下病院が縮小された後、救急患者の大半を世羅中央病院が引き受けるということになっていますが、それは不可能であると発言されました。

 その後、府中市地域医療再生計画の是非、旧上下病院が縮小され病院機能が不十分になった場合地域に与える影響、旧上下病院が必要な理由とその機能、規模、医師確保と過重労働防止策、最善の府中市地域医療再生計画、今後展開すべき住民運動についてディスカッションをし、次ページの如き意見が各シンポジストの先生方からだされました。それをもとにシンポジウム決議文()を作成し参加者に諮って採択決議しました

1222日その採択決議された決議文を府中市に提出しましたが、応対したのは伊藤市長でもなければ担当課である医療政策課でもありませんでした。総務課の主管と庶務課の係長が廊下に置いた長机で対応し、「伝えておきます」との返事だけでした。600名もの参加者によるシンポジウムの採択決議文であるにもかかわらず住民総意を無視した、許せない府中市の住民の声を聞くシステムです。今までも同じようにあしらわれていたので強く抗議しましたが「暖簾に腕押し」状態です。要望書、陳情書、抗議文、申し入れ書等を府中市に提出し毎回伊藤市長と地域住民で協議することを要望していますが、一方的に当方に発言させるだけで協議をする姿勢が全くありません。これだけ協議するようわざわざ府中市まで足を運んで要望しているにもかかわらず、府中市は不遜な態度を一向に変えようとせず最初から住民の声を聞く耳をもっていないことがあらためて良く分かりました。人間として医師として地域住民としても府中市の態度は断じて許せません。

 旧上下病院は11月から産休看護師が2名いるため一般病床を8床減らされています。それに対して1029日府中市に抗議していますがその返事は「府中市は看護師を募集しない」というものでした。当計画の実施は平成24年4月からで現在は計画段階なので「命の保証」のために一刻も早く看護師を募集しなければなりません。しかも驚くべきことに、新病院の病床数は今年度の実績で決めるとのことでした。何が何でも縮小ありきです。シンポジウムでも地域住民の参加者にこのことを伝えました。医の倫理、社会正義が全くない、まさに行政主導の「仁義なき」府中市地域医療再生計画です。

●シンポジストの意見

・医療再生のためには医療者と国民が、日本の医療崩壊の背景にある深層を正しく認識し、それぞれの社会的責任を果たすことが必要最低条件。そのためには情報操作からの脱却が必要で、正しい情報による正しい判断を下すことが必要最低条件となる。

・厚生労働省では、医療の現場をほとんど知らず、世界の情報を集めもしない役人が、机上だけで作った「結論ありき」の会議を繰り返しているので、医療専門職も住民・患者も、お上から自立し正しい情報を得て、自己判断し、声を上げなければならない

・日本の医療費は先進国中で最低

・医療費の財源は見直せばある

・医師の絶対数が13万人〜20万人不足しているので早急に大幅な増員必要

・現在の医療環境再構築のため医療人そして国民が大同団結すべきである

・歴史的を振り返れば、「言論の自由」が最も必要とされるときに抑え込まれるということが見えてくる。「言論の自由」を抑え込むために作りだされた日常の中の様々な仕掛け、それらに煽られ拡大していく「恐怖」、その「恐怖」に打ち勝つ一番の方法は、現在何が起きているかを正確に知ることである。

・府中北市民病院(上下病院)医療圏(旧甲奴郡、神石郡)の地理的条件、交通事情を考えると、当該地域住民の一般的な入院医療の利用圏域は上下病院に大きく依存しており、特に高齢者の需要が大きい診療科、すなわち内科、一般外科、整形外科においては従来通りの一般外科、整形外科手術対応を含めた急性期医療、一般病床および救急入院の提供が必要である。

・高齢者は多くの診療化にわたる疾患を抱え、介護の需要も大きい。中山間地域では介護サービス資源も都市部と比較して少ない傾向がある。安心の在宅医療を提供するためには、身近なところで内科、外科、整形外科の一般病床を確保することが必要で、日常生活動作が回復してくるまで、リハビリテーションも含めた一般的な入院医療の提供があれば患者・住民は安心できる。

・医療圏が広域なので集約すると遠い周辺地域住民は利用できないので、上下病院は現状維持して連携と補完が大切

・中山間地域出身者を「地域枠」の特別枠で入学を許すと地元に定着する

・地域医療(総合医、家庭医)の資格を取得できるような明確なキャリアデザインを地域医療を志す若手医師に提供することが重要

・市町村合併後の公的病院の再編整備や救急医療体制の見直しなど医療提供体制の仕組みを再編しようとする際には病院、医師会、行政・議会は住民・患者とよく話し合い、十分な理解と合意形成のもとに進めるべきである。

・医療機関は患者・住民に啓発活動や情報発信を行い、一方で住民は地域医療の提供体制(仕組み)について理解し、医療機関とも話し合いをする機会をもつことで、意見を述べ、協力することが大切である。

・患者・住民と医療機関、市町村行政・議会との間で今後の医療提供体制を協議する場合、中立的立場にある県行政が話し合いの場を用意すると円満に進む。

・県は「県内どこに住んでいても安心して暮らせる」広島県にしなければならない。

・中山間地域医療を確保するためには、医師・看護師など医療従事者が働きやすい環境作りが必須である。そのためには高齢者人口割合が高い中山間地域特有の実情に見合った医療費確保による病院の経営安定化が必要である。

・健康・福祉と医療の視点を取り入れた町づくりが必要である

・医師確保対策としては地元出身医師、引退医師の勧誘が効果的である。

・看護学生に奨学金を出し、卒業後地元で勤務してもらう。

・地域医療は地域住民、医療者、行政が同じ方向でスクラムを組んで頑張らないとよい結果は得られない。

・中山間医療過疎地域は高齢化率が40%を超えており、人的過疎、交通過疎が基盤にあるため高齢者の通院が困難なため重症化しやすい。

・鈴木クリニックは10年間に835件の患者を旧上下病院に紹介している。紹介率は43.8%

・紹介先の病院には一般外科が必須である。

・中山間医療過疎地域診療所の医療圏域は10キロで都市部の500メートルと全く異なる。縮小されると当該地域のセーフティネティーットが崩壊する。

・旧上下病院が縮小されると、クリニック存続が不安である。在宅医療も病院のバックアップがなければあまりにも診療所が少ないので不可能である。

・職員のやる気をそぐような計画ではだめである。

・行政が当計画の対応を誤ると、舞鶴市民病院のように旧甲奴郡、神石郡の地域医療は一気に崩壊する危険性が高い

・数年間は現状維持のままで、お互いの病院を競わせる形で状況をみるのがよい。そうしないと一気に崩壊する危険性のほうがが高い

・当計画は行政と住民がかけ離れすぎているので良くなるとは思えない

・旧上下病院は医療圏が広域で他の自治体からの患者の受診が多いので、府中市だけの病院ではないということを、府中市はしっかり認識する必要がある。

・医療圏が複数の自治体にまたがっているので県が中心となって広域で地域住民、医療関係者、行政の協議の場を設けるべきである。

・広島県は旧上下病院医療圏域に関して二次医療圏の見直しが必要である。

・他の自治体も旧上下病院が現状維持できるよう積極的な支援を考える必要がある

・中山間医療過疎地域唯一の中核病院には内科、外科、整形外科だけでなく高齢者の需要が多い泌尿器科、耳鼻科、皮膚科が現状通り必要である

・都市部には選べる他の病院があること、そしてこの計画には医師増員の確保がないことから、府中北市民病院を基幹病院とする府中市地域医療再生計画にすべきである。

・全国的な問題であるので府中市だけの問題とせず、全国の中山間医療過疎地域を崩壊から守るために全国に発信すべきである

・医師の過重労働を防止するため医療秘書の導入なども必要である

・旧上下病院でいままで地域医療を研修した学生と研修医に就職を依頼するとよい

・住民運動はさらに輪を広げ拡大継続する。全国的な運動に発展させる。

・県と広島県地域医療保険推進機構、広島大学などに実情を報告し医師の派遣を依頼する

・府中北市民病院の救急機能が縮小され、救急患者が世羅中央病院に流れると世羅も医師不足のため大変困る状況となる

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