a Day of Garden(後編)


 さて、午前中の授業が終わり、ここでお昼休み。大急ぎで食堂に向かう少年。しかし、そこではすでにパンは売り切れ。
 「やっぱり無理か〜……」
あきらめて他の物を注文しようとしたとき、不意に誰かに後ろから方をポンとたたかれた。振り向くとそこにはゼル。
 「おう、探したぞ。ほら、約束のパン」
 「えっ、でも俺…」
 「いやいや、俺を壁際まで追いつめただけでも上等だぜ。それに、ディファレントビートをくらって気絶したとはいえ、ちゃんと 着地しただけでも、お前すごいよ。じゃ、また今度の授業でな」
そういうと少年にパンを渡してゼルは去っていった。
 「ラッキー、食堂のパンゲットだぜ〜!」
棚からぼた餅でお昼ご飯を手に入れた少年。どこで食べようかと食堂をうろうろしていると、例の学級委員の少女に呼び止められた。
 「なんだ、お前か」
 「なんだとはなによ。せっかく一緒にお昼食べてあげるんだから、ありがたく思いなさいよ」
 「へいへい、それはどーも」
 「それにしても今日はいろいろある日ね」
 「そうだな、アーヴァイン先生は的を燃やして訓練施設を火事にするわ、スコール先生はサイファーと喧嘩するわ」
ジュースを飲みながら答える少年。
 「それに、あなたはゼル先生の授業で気絶するしね」
 「うっ、うるせいやい。あの時は寝起きでちょっとばっかし調子が悪かったんでい」
 「ふふっ、負け惜しみなんか言っちゃって」
 「そんなんじゃねえよ。本当に調子が悪かったんだ」
 「そうね、そうしておいてあげるわ。じゃ、お先にね」
少女はさっさと席を立って食器を返しに行く。
 「あれ?もう行くのか?」
 「だってあと5分でお昼の授業始まるわよ」
 「えっ、マジ?!」
食堂の時計を見る…本当だ。あわててパンを口にほおばり、ジュースで流し込んで少女の後を追いかける。
 4時間目、魔法とGF。教官は担任のキスティスとTAにリノアとセルフィ。学習パネルを使って、GFと魔法の性能や そのシステムを学んでいく。少年は最初のうちこそ真面目に聞いていたもののだんだん眠たくなってきて、ついうとうと。そこへ、
 「えー、では次の問題を君、やってみて」
キスティス先生に見事にご氏名をくらった。いきなりの質問で答えの解らない少年。その様子を見かねて少女がフォローする。
 「答えはブリザド系やシヴァで攻撃でしょ」
 「あっ、ああっ、えー、ブリザド系やシヴァで攻撃だと思います」
 「そうですね。こういう場合は……」
なんとかピンチを脱出できたようだ。少女にお礼を言う少年。
 「サンキュー、助かったぜ」
 「もう、今度寝たら知らないよ」
 「わーってるって」
その後は少年も眠ることなく授業は何事もなく終了。ところが、いつもなら前の入り口から帰るキスティスが、今日はめずらしく 授業の後に後ろの入り口に向かう。少年の席の横に来た。寝てたのがばれたのか?焦る少年。
 「学級委員、これ。学級日誌。朝渡すの忘れてたから。授業が終わったらいつもどうり職員室に持ってきてね」
 「はい」
なんだ、一安心して胸をなで下ろす。が、
 「それと、君。いくらご飯食べておなかがいっぱいでも寝ちゃだめでしょ」
それは少年と少女にのみ聞こえるくらい小さな声でのやさしい注意。
 「ばれて…ました?」
 「あたりまえでしょ。それも隣の子に答えまで教えてもらって。今回は見逃してあげたけど、今度見つけたらバケツ持たせて 廊下に立たせちゃうわよ」
 「へーい、すんませーん」
 「よろしい」
そこで言うとキスティスはまたいつもの笑顔で教室を出ていった。
 5時間目は情報処理。教官はセルフィ。授業はプログラミングやコンピューターの仕組みのような専門的なことから、 ホームページの製作法や報告書やレポートを作るときに使うワープロや表計算ソフトの使用法などの基本的な物まで幅が広い。 今日の授業はCGの制作。
 「どうや〜、みんな。ソフトの使い方はだいたいわかったやろ。そしたら、自分でいろんなCG作ってみてやー」
思い思いのCGを描く生徒達。それを見て回るセルフィ。
 「どれどれきみは…・あっ、お花畑のCGやな、上手上手」
 「きみは……星空に流れ星、きれいにできとるな〜」
 「きみはぁ…あっ、これは、……」
それは、昔流行ったなんとかという豪華客船の沈むお話の映画の一場面。主人公とヒロインが船の舳先で抱き合っている感動的なシーン。 それをみて何かを閃いたセルフィ。
 「ぷぷぷっ、みんなちょっとええかぁ?今からおもしろいもん見せたるさかいに」
そう言って、その生徒の学習パネルからCGを教師用のパネルに転送する。同時にポケットから手帳を取り出して、 その中の写真の一枚をスキャナに読み込ませる。
 「ここをこうして…こっちをこれに張り付けて……ここを修正。最後に微妙な色合いを調整して……できた!!みんな自分の学習 パネルの画面に注目っ!!」
生徒全員の目がパネルに集中する。そこに出てきたのは顔のところがスコールとリノアに置き換えられたさっきのCG。
 「どうや、おもろいやろぉ?な、な?」 教室中大騒ぎ。はやし立てる男子達、うらやましそうに見つめる女子達。そのとき、あまりの騒ぎにスコールが乱入してきた。
 「おい、セルフィ。うるさくて授業が……」
その瞬間CGを見て固まるスコール。おどろくセルフィと生徒達。
 「こ、これは…いったい…」
 「あ、あのなこれはな。そのまあ、このソフトではこんなんもできるでー。っていうデモンストレーションや。な、みんな」
 「だからといって…なぜ俺とリノアなんだ?」
 「いや、別に深いわけは…・」
そのとき運悪くセルフィがCGと一緒に仕掛けたプログラムが起動。「Eyes on me」が流れ始める。スコールの 手がわなわなと震える。そして、
 「魔女でもいいの…」
 「魔女でもいいさ…」
決定的だった。本人達の声による台詞が静かな教室に響き渡る。その直後、
 「に、逃げるんやみんなぁ〜」
 「…エンドオブ…ハートぉ!!」
教室は半壊。スコールは騒ぎで駆けつけたリノアのスリプルで無事に取り押さえることに成功。セルフィはとっさにウォールを使い直撃 は防いで命に別状はないものの相当なダメージを受けて保健室に直行となってしまった。もちろん授業は続行不能。残りの時間は 自習となった。
 6時間目。本日ラストの授業。教官はリノア。教室はさっきの騒ぎで使えないので今日は外で野外授業。
 「さてと、今日はみんなごめんね〜、スコールが教室壊しちゃって。スコールったら私と一緒にいる時はちゃかされても 怒らないんだけど、一人の時はセーブきかないのよ。でも、それがいいとこでもあるんだけどね〜。それだけ私のことを思って くれてるってことだし」
いきなりスコール暴走のお詫びとおのろけで始まった最後の授業。しかし、さすがガーデン生(?)その程度のおのろけでは引かない。 当初の魔女と歴史学は何処へやら。すっかり、リノアとスコールの出会いやアルティミシアとの戦いに話題がそれている。
 「でね〜、初めてあったのは4年前にスコールがシードになったばっかりのころでね〜……」
いろいろな話を聞かせるリノア。特にスコールとの関係のところは女子には興味津々。さっきの『魔女でもいいの…』、 『魔女でもいいさ…』のお話や、宇宙での出来事、アルティミシアを倒した直後の事を話すと女子からは「キャー」とか 「すてき〜」「私もそんな映画みたいな恋愛がした〜い」などの声があがる。男子も参考にする部分があるのか時々うなずく 連中もちらほら。ところで、例の少年はというと、そよそよと吹いてくる風とぽかぽかと暖かい日差しで再びうとうと。 ふと、誰かの気配を感じて目を開けるとそこにはリノアの顔。
 「おハロー。こらっ、人の話はちゃんとききなさい」
 「す、すんません」
 「さて、どこまで話したっけ?」
 「アルティミシアを倒してからです」
 「そうそう、その後が大変だったの。急にガーデン、特にスコール達への仕事の依頼は増えるし、私も魔女っていうんで みんなからいろいろ言われるし。でも、スコール達は文句言わずに任務をこなしていたし、私も私のお父さんやスコールの お父さんのおかげで少しずつみんなにわかってもらえるようになってきたの。そして、去年20になってスコール達はSeeDの 資格がなくなっちゃったんだけど、最初はみんなバラバラ。アーヴァインとセルフィは元々自分のいたガーデンに帰るって 言ってたし、ゼルもバラムの軍隊に就職するって言ってたんだ。スコールもお父さんにエスタにこないかって誘われてたらしいし…。 でもね、そのときスコールが珍しくみんなを集めてこういったの。”俺達はガーデンに残って二度とあんな事が起きないように 次の世代を育てる必要があるんじゃないか”って。いつも無口なスコールが必死に説得するの。それでみんなガーデンに 残ることを決めたんだ」
と、一人の生徒がちょっとした質問をした。
 「でも、リノア先生達ってすごいですよね。ガーデン卒業する頃には自分の将来のビジョンをはっきり持ってたんですね」
 「そんなことないよ、私だって将来見えてた訳じゃないし…」
 「えっ?!」
その言葉に生徒達は全員驚いた。
 「そんなに驚くことかなぁ…いいわ、この際だからみんなに言っておくね。誰にも未来の保証なんてできないんだよ、 だから誰だって将来のことは不安に思ってるの。でも、どんなに考えたって答えはそのときにならなきゃわからない。それより、今 あなた達ができることは何だろう?ガーデンに居る時間なんて、あなた達の人生のうちの一瞬だよ。だけど、きっと今の君たちに しか出来ないことや感じれないことがいっぱいあるんだよ。それを全部捨てて、将来のためにガマンして、あきらめるなんて つまらないよ。例えば、『明日から立派なSeeDになるためだ、毎日授業と訓練以外禁止』っていわれたらどうする?」
 「えー、そんなのいやだよー」
 「そうだぜー、俺こんどの学園祭でバンドやるから必死に練習してんだぜ〜」
 「私だって部活の練習きついけど楽しいし、試合に勝ったらすっごくうれしいの…やめるなんて絶対嫌っ!!もしやめたら、ぜっ〜たい、 大人になって後悔するよ」
口々に自分の今夢中になってることを話す生徒達、
 「…それがあなた達の答えだよ。遠回りになったっていいじゃない。一日一日充実した日々を送っていれば、どんな未来でも あなたたちの納得のいく未来になってるんじゃない?」
 「……そうだよね。今悩んだってしょうがないよね」
 「そーだそーだ、思いっきりやりたいことやろうぜ」
その様子をほほえましく見守るリノア。と、授業終了のチャイムが鳴った。
 「じゃあ、今日はこれでおしまい。ここで解散ね。キスティス先生には私が言っておくから」
そういうとリノアはガーデンの方に駆けていった。これにて今日の授業は終了である。世界のほぼ中央にある島、バラムにある SeeD養成学校バラムガーデン。ここは今日も平和です。


END


 どうも、Kallです。お蔵入り作品UP第一弾、ほのぼの学園もの。どうでしたか?ノーマルカップリング推奨サイトと宣言していただけに、 書いてる途中でどうしようかな?と思っているうちにオチで煮詰まってそのまま最近まで放置されておりました。しかし、このたび リクエストもありましてUPすることにしました。あと3本程煮詰まったりしてお蔵入りにしてますが完成すればUPするつもりです。 では〜。


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